とある少女の日常 ー朝議薫子の場合ー

如月圭

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 翌日の土曜日、九時半から発表会の準備をしていた、私達は、開放された、サロンの舞台袖から、チラッと客席を見渡すと、近所の人々が楽しそうに、抹茶と茶菓子を食べながら、マッタリとした空気をまとい、楽しそうにしているのを見て、気合を入れた。

 その頃、修一君達は、部活でストレッチをしていて、外周を走り、体を温めていた。サービスの練習をして、ゲーム形式の練習を始めた。修一君は、チラリと時計を見て、もうすぐ十時二十分になるのを確認すると、ソワソワとした空気を感じた。十時二十五分、一端、休憩を入れて、タオルで汗を拭き、水分を取って、修一君は、サロンへと、急いで向かったようだった。


 十時半になり、私達、日舞同好会の発表会は始まった。一曲目に姉と夕子さんの踊りを披露すると、お客さんはパチパチと拍手を送る。次に、私と吉長さんの“夢芝居”を披露した。踊っている時、後ろの方に修一君を見つけて、嬉しくなり、丁寧に踊った。踊りが終わると、舞台の袖から、修一君達テニス部員達が練習に戻って行くのが見えて、私は、満足したので笑う。それを見ていた姉と夕子さんは、

 「薫子、なんだか嬉しそうね」

 「そうね、何か良いことでもあったの?」

 と聞いてきたので、私は、

 「うん、まぁね」

 と言いつつ、次の出番の子達の邪魔をしないようにして、全部で五曲の舞を終えて、カーテンコールをし、その日の発表会は終わった。着物を片付けに東棟ヘ行っていると、姉が、

 「今日は抹茶と茶菓子の売上げが全部で壱万二千円ね、まぁまぁ、集まったかな」

 すると、夕子さんが、

 「そうね、それにしても、テニス部員の中に会長が居たけど、蝶子、どこまで仲良くなったのよ?」

 と詰め寄る。姉は、

 「単なる、お茶飲み友達よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 正直に答えた。夕子さんは、

 「そっか」

 着物を桐ダンスの中にしまった。私が、

 「お姉ちゃん、夕子さん、テニス部見に行く?」

 「そうね、二三斗も今日は、午前中に練習終わるって言ってたから、私は行くけど、蝶子は?」

 と夕子さんが姉に問う。

 「私?うん、私も行こうかな?」

 姉が答える。私は、
 
 「じゃあ、一緒に行こうよ!」

 と姉に言い、夕子さんも、

 「そうね」

 同意した。姉が、

 「じゃあ、もう少し待ってて、職員室に茶室の鍵を返してくるわ」

 そう言い、姉は、走って東棟から出て行った。姉が行くと夕子さんが私に、

 「ねぇ、薫子、花岡君と今どうなってるのよ?」

 と聞く。私は、

 「ん?あぁ、読書仲間かな、夕子さんは?松原君と、どうなの?」

 「うん、まぁ、まだまだね、やっぱり、私は、まだ考えられない」

 と真剣な目をして言った。

 「そっか」

 「二三斗には、悪い事をしてると思ってる。けど、こればっかりは、仕方ないのよ」

 沈んだ声で言う夕子さんは、どこか悲しげだった。

 「夕子さん」

 私は、何も言えなくなる。すると、急に明るくなった夕子さんに、私は驚く。

 「まぁ、私に事は良いのよ、薫子は、花岡君のこと、どう思ってるのよ?」

 「えっ?……好きだけど、……平凡な私が、告白して付き合おうって、なるとは思えなくて……」

 不安を口にする。夕子さんが、

 「良いじゃない、薫子、あったて砕ければ」

 ニヤッと 笑いながら言う。私は、

 「砕けたら駄目でしょ!」

 「まぁ、そうね」

 と話してると、姉が戻って来て、

 「薫子、夕子待たせてごめんね。行こうか?」

 と言った。夕子さんは、それに賛同するように、

 「そうね、行きましょ!」

 と言い、私は、

 「うん」

 賛成した。テニスコートに来ると、周囲の女の子達は、暑い中、キャーキャーと、テニス部の練習を見ていた。私は、目で修一君の姿を探しながら、コート近くまで来ると、修一君は、居なかった。修一君が居ないので、

 (どうしたんだろう?)

 と思っていると、体育館の方から、一人の女の子と一緒に、出て来て、顔色が悪かった。修一君が私を見つけて、一瞬、嬉しそうな顔をするが、私と目が合うと、フッと視線を外した。私は、それが、気になった。




 日曜日、私が一人で修一君の応援に行くと、修一君は、黙々とストレッチをしていた。私は、女の子の波にのまれながら、修一君にと松原君のダブルス一の試合になった。私は、修一君に聞こえるように、大声で、

 「修一君、頑張って!」

 と叫んだ。それが聞こえたのか、修一君がチラッとこちらを見て、松原君と一言交わして、試合に臨んだ。修一君と松原君は、コイントスで裏を選択する。しかし、出たのは、相手の選んだ表で、相手は、サーブ権を取った。修一君達は、右側のコートを選び、試合は始まる。



 六対三で勝ったのは、修一君と、松原君だった。相手と握手を交わして、疲れた様子も見せずに、水分補給をして、修一君は目で、私の姿を探していた様だ。けれど、私の姿はどこにも無い。私はというと、修一君達の試合が勝ったのを見届けて、旧図書館に居た。昼も近いので、チョビ達にエサと水を与えていたのだ。猫たちは、エサをガツガツと食べていた。それを見ると、私は、旧図書館内に来た。本を見ていると、携帯が鳴る。出ると相手は修一君で、

 『もしもし、薫子さん、今、どこですか?』

 と聞かれて、

 「うん、今、例の所だけど、どうかしたの?」

 聞き返した。

 『いえ、薫子さんの姿が、見えなかったので』

 と答えた修一君に

 「そっか、今、チョビ達にあエサと水を上げててさ、それと、試合勝てて良かったね」

 と祝福した。

 『はい、見てて下さったんですね』

 嬉しそうにしていた修一君に、私は、

 「見に来てって言ったの、修一くんでしょ?」

 可笑しそうに笑う。

 『そうですが、すみません、薫子さん、今日は、一緒に帰れなくなってしまって』

 と謝る修一君に、私は、

 「そっか、わかった。一人で帰るから大丈夫」

 少し寂しそうに言った。修一君は、申し訳なさそうに、

 『気を付けて帰ってくださいね』

 と言い、私は、

 「大丈夫だよ、お姉ちゃんじゃないし、ナンパなんてされないよ!」

 と冗談めかして言った。すると、怒ったように、

 『そんな事はありません!薫子さんは、素敵ですよ!』

 大声で言われて、私は、苦笑気味に

 「うん、わかったから、少し落ち着こうか!」

 と言い、修一君は、

 『すみません、つい、薫子さん、では、また明日』

 「うん、また明日」

 そう言って、電話を切った私は、旧図書館から本を借りて、学校から出て行った。
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