35 / 105
第三章 古代遺跡に潜む影
第35話 黒い霧が立ちこめる
しおりを挟む
振り向いた先では、リリアが禿頭の男と対峙していた。
配下の黒フードたちは、すでに三人とも武器をい、一人は地面にうずくまっていた。全員生きてはいるようだが、いまだ戦闘能力を残しているのは、リーダーの禿頭だけだろう。
「おとなしく投降しなさい!」
リリアの凜とした声が夜の闇に響き渡った。
状況を見れば、ルアーユ教徒は追い詰められていると言えるだろう。
だが、禿頭の男は頬を歪め、凶暴な笑みを浮かべてみせた。
「おお! おお! 我が神よ! 御身は愛し子に、かような試練を与えたまうか!」
その叫びは、緊張でも畏怖でもなく、恍惚と歓喜に彩られていた。
男は武器を持っていない左手を持ち上げ、リリアを指さす。
「汝のその剣、その顔は! 見まごうはずもない。呪われし〈竜の娘〉よ。汝こそ我が乗り越えるべき試練か! ク、クカカ、カカカ!」
突如として奇っ怪な笑い声を上げはじめた禿頭の男。周囲を異様な空気が包み、その場にいた全員が動きを止めた。
「な、なにを!」
リリアも動揺した様子を見せる。
男の放った「呪われし竜の娘」という言葉。それが何を意味するのかは分からない。しかし、ヤツがリリアの姿を見て何かに気付き、「呪い」という言葉を放ったのは、ただの狂人の戯言だとは思えなかった。
「ク、ククク……! なにを驚いておる、竜の娘よ。もしや、己が宿業を忘れたか。ならば……」
「お、おとなしくしなさい!」
「こうすれば思い出すか? ■■■、■■■■!」
禿頭の男が、何か呪文のような言葉を口ずさんだ。
それと同時に、戦意を失っていた六人の黒フードが一斉に身を起こした。
立ち上がったのではない。
まるで天から伸びた操り糸で引っ張られるような不自然な動作で、その場に跳ね起きたのだ! その動きはまるでキョンシー映画に出てくる怪物のようだった。
立ち上がったルアーユ教徒たちの頭から、フードが剥がれ落ちる。
「ひええええ! な、なんだよこれ……!」
露わになった彼らの顔を見て、ジールが悲鳴をあげた。
そにあったのは、吐き気を催す異形の姿であった。
人間の頭に、巨大な瘡蓋のような肉塊がいくつも貼り付いている。その表面から、獣や鳥、虫や魚——さまざまな生き物の顔が突き出ていた。
「オ、オオオ……!」
「ぐるるる……!」
「オオオ、オオオオオオオオオ!」
「グワガア、ギギギイ……!」
「ギヂギヂギヂィッ!」
肉塊たちが耳障りな鳴き声を発した。さながら地獄の合唱会だ。
「クハッ! キヒ、ヒヒヒヒ!」
声を失う俺たちを見て、禿頭の男が興奮したように笑った。
「さあ踊れ、竜の娘よ! 我が輩たちと。汝が業を示せ」
禿頭の男はそう言うと、俺たちに背中を向けた。
「我も汝らと踊ってやりたいところだが、あいにく時間がない。我が神への祈りを捧げねばならんからな」
「待て、どこに行く!」
禿頭は俺の声を無視して歩き出す。
「フン、生け贄には遺跡に紛れ込んだネズミどもを使うことにしよう。では、のちほどお会いしよう! ■■■」
禿頭の男はそう言うと、指をパチンと鳴らした。
するとルアーユ教徒たちの頭に生えた顔から、黒い霧のようなものが吹き出した。
立ち上る霧は宿主の身体を包み込み、膜のように表面を覆っていく——
配下の黒フードたちは、すでに三人とも武器をい、一人は地面にうずくまっていた。全員生きてはいるようだが、いまだ戦闘能力を残しているのは、リーダーの禿頭だけだろう。
「おとなしく投降しなさい!」
リリアの凜とした声が夜の闇に響き渡った。
状況を見れば、ルアーユ教徒は追い詰められていると言えるだろう。
だが、禿頭の男は頬を歪め、凶暴な笑みを浮かべてみせた。
「おお! おお! 我が神よ! 御身は愛し子に、かような試練を与えたまうか!」
その叫びは、緊張でも畏怖でもなく、恍惚と歓喜に彩られていた。
男は武器を持っていない左手を持ち上げ、リリアを指さす。
「汝のその剣、その顔は! 見まごうはずもない。呪われし〈竜の娘〉よ。汝こそ我が乗り越えるべき試練か! ク、クカカ、カカカ!」
突如として奇っ怪な笑い声を上げはじめた禿頭の男。周囲を異様な空気が包み、その場にいた全員が動きを止めた。
「な、なにを!」
リリアも動揺した様子を見せる。
男の放った「呪われし竜の娘」という言葉。それが何を意味するのかは分からない。しかし、ヤツがリリアの姿を見て何かに気付き、「呪い」という言葉を放ったのは、ただの狂人の戯言だとは思えなかった。
「ク、ククク……! なにを驚いておる、竜の娘よ。もしや、己が宿業を忘れたか。ならば……」
「お、おとなしくしなさい!」
「こうすれば思い出すか? ■■■、■■■■!」
禿頭の男が、何か呪文のような言葉を口ずさんだ。
それと同時に、戦意を失っていた六人の黒フードが一斉に身を起こした。
立ち上がったのではない。
まるで天から伸びた操り糸で引っ張られるような不自然な動作で、その場に跳ね起きたのだ! その動きはまるでキョンシー映画に出てくる怪物のようだった。
立ち上がったルアーユ教徒たちの頭から、フードが剥がれ落ちる。
「ひええええ! な、なんだよこれ……!」
露わになった彼らの顔を見て、ジールが悲鳴をあげた。
そにあったのは、吐き気を催す異形の姿であった。
人間の頭に、巨大な瘡蓋のような肉塊がいくつも貼り付いている。その表面から、獣や鳥、虫や魚——さまざまな生き物の顔が突き出ていた。
「オ、オオオ……!」
「ぐるるる……!」
「オオオ、オオオオオオオオオ!」
「グワガア、ギギギイ……!」
「ギヂギヂギヂィッ!」
肉塊たちが耳障りな鳴き声を発した。さながら地獄の合唱会だ。
「クハッ! キヒ、ヒヒヒヒ!」
声を失う俺たちを見て、禿頭の男が興奮したように笑った。
「さあ踊れ、竜の娘よ! 我が輩たちと。汝が業を示せ」
禿頭の男はそう言うと、俺たちに背中を向けた。
「我も汝らと踊ってやりたいところだが、あいにく時間がない。我が神への祈りを捧げねばならんからな」
「待て、どこに行く!」
禿頭は俺の声を無視して歩き出す。
「フン、生け贄には遺跡に紛れ込んだネズミどもを使うことにしよう。では、のちほどお会いしよう! ■■■」
禿頭の男はそう言うと、指をパチンと鳴らした。
するとルアーユ教徒たちの頭に生えた顔から、黒い霧のようなものが吹き出した。
立ち上る霧は宿主の身体を包み込み、膜のように表面を覆っていく——
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる