コピー&ペーストで成り上がる! 底辺講師の異世界英雄譚

猫太郎

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終章 〈竜の娘〉と〈廃棄物〉

第70話 古代人が残した陰謀

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「はっはっは、さすがは音に聞こえし〈豪運のザック〉だな!」

 話を聞き終えたフェルナールが破顔大笑した。

「よし、これできみたちの活躍は一通り把握した。父には追って私のほうから報告し、しかるべき報酬を与えるように言い含めておく。言い忘れたが、怪僧バウバロスは三十年以上前からハリア全土で暗躍していた第一級の危険人物だ。なかなか尻尾を出さなかったが、やっと息の根を止めることが出来た。父ばかりではなく、国王陛下からも報償がもたらされるはずだ」

 ここでフェルナールは「さて」と前置きし、話を変えた。

「もう一つ分からないことがある。バウバロスはあの遺跡でなにをしようとしていたのか、だ。何か聞いていないか? ルアーユの力が強くなる満月の夜、やつは生け贄を使った儀式をしようとしていた。何か大がかりな計画なのは間違いないのだが」

 居合わせた全員が首を横に振った。

「わっかんねえなぁ。そういえば、あいつ、死ぬ前に何か言ってなかったか? たしかセンセが、ここで何やってんだって聞いたんだ。そしたら竜がどうのこうのって」

 ザックがそう言うと、フェルナールは「ほう」と興味深そうな声を出した。

「イリーナ、あいつなんつってたっけ?」

「よく覚えてないけど、『真なる竜はただ一つ』とか言ってたね。先生と姫サンは覚えてない?」

 話を振られ、俺はリリアに視線を走らせた。バウバロスが口にした最期の言葉。あれはおそらくリリアに関係することだ。俺が勝手に喋っていいとは思えなかった。
 俺の視線を受けてリリアは戸惑う様子を見せたが、意を決したように小さく、だがハッキリと頷いた。

「……『世に竜は数あれど、真なる竜はただ一つ。ほかは竜にありて、竜にあらず』。あいつはたぶん、そう言った」

「真なる竜、か……」

 フェルナールは顎に指を添え、考え込む様子を見せながら立ち上がった。
 俺が「どうしたんだ?」と聞くと、フェルナールは「いや」と小さく呟き、部屋の脇の本棚へと足を向けた。

「……諸君。ルアーユにまつわる伝承は、知っているな?」

「ディアソートに刃向かって、蛇に変えられて月に封じられたって話か?」

「その通りだ、エイジ」

 フェルナールは棚から一冊の本を抜き出すと、テーブルの上に広げて見せた。紙の上には古代語の文字が並んでいる。

「これは?」

「私がある任務で捕らえたルアーユ教徒が持っていたものだ。古代の魔術師が書き残した手記なのだが、その魔術師はルアーユの信徒だったらしい。手記の内容は荒唐無稽だが、いささか気になる言葉が出てくる」

 フェルナールは俺に「読んでみろ」と言うように、軽く顎をしゃくった。
 俺は促されるまま、本に書いてある文字を目で追った。

「ルアーユ再臨計画……真なる竜として……地上に永遠の自由と救済を……おい、これはなんだ!?」

 手記を読んで驚く俺に、フェルナールは困り顔で「私が聞きたいくらいだ」と応じた。

「先生、いったいなにが書いてあるんだい?」

「オレにも教えてくれよ」

 イリーナとザックが顔を近づけてきた。

「それは……」

「月に封じ込められたルアーユの魂を蛇の体から解放し、地上に降臨させる計画だ」

 言いよどんだ俺に代わって答えたのはフェルナールだった。

「ルアーユの肉体はディアソートによって月に縫い付けられ、動けなくなっている。だが、生け贄を用いた強力な儀式を使えば、魂だけ抜き出して地上に持ってくることが可能だ、と書かれている。ルアーユを地上に再臨させ、パルネリアの支配する、というのが、この魔術師の計画だ」

「神の魂を?」

 イリーナが気色ばんだ。

「たしかに、神の魂を地上に再臨させる奇跡は存在するよ。あたしもマルセリス神殿の記録で読んだことがある。自分の体に神の魂を宿し、大いなる権能をふるう究極の魔法。歴史上、世界を巻き込む災厄が訪れたとき、何人かの神官がこの奇跡を用いて災厄を退けてきたと言われている。だけど……」

 イリーナは眉根をよせ、フェルナールの顔を見た。

「だけど、その奇跡は一瞬しかもたないんだ。なぜなら神の魂は強大過ぎて、乗り移るべき依り代がすぐに崩壊してしまうから。再臨の奇跡を試みた神官の肉体は、みんな神の魂に耐えきれず、一日とたたず塵になったと言われてる。地上の支配なんて出来るわけがない」

「それを可能にするため、古代の魔術師はこう考えたらしい。『ならば、神の魂に耐えられる、強き肉体と魔力をもった器を作り出してしまえばよいのだ』と。さて諸君。このパルネリアにおいて、もっとも強大な生命体といえば、何かな?」

 フェルナールが一同の顔を見回した。

「竜……」

 そう呟いたのはリリアだった。フェルナールが神妙な顔で頷く。

「その通り。この魔術師が目指したもの、それは魔獣同士を合成する技術を用いて、上位の竜と別の生物を掛け合わせ、神の魂の器たるべき最強の生物——竜を超える竜を作り出すこと。そうだな、この魔術師の言葉を借りるなら、それは——」

 フェルナールは重々しく、言葉を句切った。

「真なる竜。あるいは終末の竜。そいつの肉体にルアーユを再臨させることこそ、この魔術師の目的だったのだ」
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