なんとなく、世界一周

hitty

文字の大きさ
11 / 23

月への階段

しおりを挟む
次の目的地は「ブルーム」。
大海原の水平線に浮かぶ月まで。つながっていく階段のような輝き。
 
そんな「月への階段」と呼ばれる神秘的な自然現象がみられることで有名な街だ。
 
もっとも、この現象は乾季の満月の日前後に限られ、残念ながら今はその季節ではない。1年を通して20日前後しか見られない貴重な時期には世界中から観光客が訪れるそうな。
 
そんなブルームに着いたのは夕方18時ごろ。
コーラルベイから実に18時間ほどの長旅になった。
バスの車内は快適で、音楽を聴いたり、車窓をながめてのんびりしたり、時折とまる小さな町でリフレッシュしたりと、そこまで苦には感じない。
 
バスを降り、目指したのは今日の宿、「YHA」と呼ばれるホテル。
俗にいう、ユースホステルと呼ばれる安宿だ。オーストラリアだけではなく、世界共通の旅人のための安宿である。
 
ユースと呼ばれるこのホテルは、その場所によって全く経営方針が異なる。
すごく質素な設備で必要最低限の物だけ揃え、ただ寝る事だけに特化した宿。
はたまた、エンターテインメント性が高く、バーなども併設し、夜中までにぎわうようなユースも中にはある。
このブルームのユースはどうやら後者のようだった。
 
かなり大きい広大な宿のスペースにはレストランなども併設されており、ステージまでがある。ちょうど今からそのステージでは、ここに泊まってる旅人の弾き語りが始まるところだった。
心地いい生音にリラックスしながら、夜の時間を過ごす。
 
置物だと思っていた、軒下のフクロウが野生の本物だったことにオーストラリアの自然を感じながらその日は眠りについた。
 
翌朝、昨晩の賑わいは嘘のような静けさのYHA内で朝食のリンゴをかじる。

インドネシアのジャワ辺りの人だろうかと思っていた女性から流ちょうな日本語で、「おはようございます」と挨拶がでてきた。

どうやら日本人だったようだ。

思わずこちらも挨拶を返したが、意外とこういうことはよくある。
この人、日本人かな?と悩む日本人。

その後は特に交流もなかった。

またもや今晩発つ予定の私は、昼間は近くのケーブルビーチへ。
月への階段がみられるビーチで、ゆっくりとした時間を過ごす。
読書などをしながら、のんびりした雰囲気はあっという間に過ぎていった。
 
夕方になり、昨晩の賑わいがもどりつつあるYHAをチェックアウト。
ふと、テレビで映っているニュースに目をやると…
ここブルーム近辺で、アボリジニに襲われ3人の女性が被害にあったという。
顔写真が移されている犯人はまだ捕まってはおらず、現在も逃走中とのこと。
 
こわ。
 
このアボリジニという、オーストラリアの原住民の話になると、とても私の浅はかな知識で無責任なことはいえない。

しかし、パース時代からそうだが、荒れたアボリジニがいるのも事実。
街を歩いていると、たばこや金をせびられ、断るとものすごい勢いで怒鳴ったり、殴られそうな危機感を感じたこと一度や二度ではない。

昼間から泥酔し、ドラッグで暴れまわる姿を見てる以上、いくら原住民とはいえ関わりたくないイメージはぬぐえない。

もちろん彼らからすれば、自分たちの街を占領され、近代化された世界では従来の生活を送ることもできず、仕方なく街に出てきても職はなく…そのような状況の悲惨さも理解できる。

しかし、人を傷つけるのはまた別の次元の話だ。

とにかく私のような旅人には、その国の負の歴史を語るにはおこがましすぎる。
ただただ、何事もなく無事で旅を続けたいその一心である。
 
バス停へ向かうというと、宿のスタッフが、「ニュースでもやってたけど、夜は危ないから送っていくよ」
なんて、ナイスガイ。
 
宿の広告を施したピックアップトラックで送ってもらい、グレイハウンドの到着を待つ。
次に目指すは、いよいよダーウィン。ここからはなんと28時間の長旅。
 
予定通り来たバスに乗り込み席を確保。乗客は私と白人の若い女性、老紳士の3人。人の少なさに安堵する。

シートの座り心地は最高で、ふかふかの座席はよく眠れそうだ。
しかも車内はガラッガラで、この上ない快適さ。

しばらくしてバスはストップした。
「ミールストップ(食事休憩)かな?」と思い外に目をやる。
 
すると、運転手がバスから降り、荷物を積むスペースをあける。
どうやら停車したのは休憩ではなく、新たな乗客を乗せるためらしい。
 
「ここから乗ってくる人もいるんだな」と、夜も更けようとしている窓の外にふと目をやる。

すると、漆黒の闇のなか白い眼だけが何十個もうごめいている。
「なんや、これ?!」

暗い中メガネをかけて注意深くみてみると、そとには大人数のアボリジニがバスに乗り込もうとしているところだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝初めて🐶保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。 過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。 初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃんがもたらす至福の日々。 ◇ 🔶保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾 🔶日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾 🔶🐶挿絵画像入りです。 🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇‍♀️

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

処理中です...