3 / 32
3.野営地潜入
しおりを挟む
野営地でメイナは、端に設置されているテントへ潜り込んだ。
中心部には行く必要がない。今日は偵察だけが目的だった。
テントの中には数人が寝ていた。
茶色のズボンに、襟がついた制服が干してある。10人程が寝るテントは従者のテントらしかった。
(当たりね。)
一番端で寝ている男に近づき、顔を見る。小柄で茶髪の若い男が寝ていた。
強い睡眠薬で湿らした布を男の口に当てる。ピクリとも動かず、男は深い眠りについた。
メイナは持っていた透明の魔石を男に近づける。
すぐに魔石は男と同じ茶色に染まった。
メイナはその魔石を自分の腕輪の魔石と入れ替える。
メイナの眼と髪は黒から茶へ変化した。
(これでいい。)
テントからぐっすり寝ている男を外に出す。
シーツと枯葉で覆い隠し、メイナは男の布団へ1人潜り込んだ。
(明日までここにいるなら、元に戻してあげるわ。たまには枯葉のベットもいいんじゃない?)
朝になり周囲が動き出す音がする。
メイナも起き、周囲の従者と同じように服を着て身だしなみを整える。
テントから出て、野営地を探ろうとしていた時に声をかけられた。
「貴方。手を貸して。これを皇帝様の寝所まで運んでほしいの。昨日の者は使い物にならなくなったわ。貴方も行ける所まででいいから。」
(食事を運ぶだけなのにやけに大袈裟だな。でも私にとっては都合がいい。)
声をかけてきた女が渡してきたのは、お盆にのった数種類のパンと飲み物、スープだった。
「分かりました。皇帝様の寝所は、、」
「ああ、向こうよ。この道を真っ直ぐ行って一番大きいテントになるわ。気分が悪ければ、側近の方に渡して。」
メイナは頷き、野営地の中央の道をお盆を持って歩き出した。
進めば進むほどテントの数が少なくなる。
(普通は、皇帝の周りを厳重にするのでは?まるで皇帝を避けているみたいな配置ね。)
中央の大きなテントにメイナはたどり着いた。
野営地の東は明るくなり、空の雲が紅いグラデーションに染まっている。
テントをくぐり抜け、中に入る。
(本当。拍子抜けね。こんなにすぐに接近できるなんて。寝所は、この奥かしら?)
広大なテントは、いくつかの部屋に分かれていた。
入ってすぐテーブルが置いてある。そこに食事が乗っているお盆を置いた。
確認したばかりの暗器も持っている。テントの中に人がいる気配が無い。
(好機だわ。あの布の向こうに。)
気配を立てないように、メイナは、寝所に入って行った。
寝所の入口の布を捲り中に入ると、そこには豪華な寝台があった。床は複雑な模様が描かれた絨毯が敷かれている。
寝台には、白銀の短い髪の体格がいい男が寝ている。目を閉じた状態でも、相手の顔が整っている事が分かる。
(まさか、本当に。残虐王エーリヒ。地神の加護があるはずなのに、髪の色が銀だわ。だけど、本物でも偽物でも殺す価値はある。)
滴る血を想像して、メイナは興奮した。
加護持ちを確実に殺すには心臓に刃を突き立てる事が一番だ。
寝ている男の髪の色が一瞬黄金に輝いたように見えた。
(何?いいえ、今がチャンスよ。)
音を立てないように近づき、メイナは思いっきり相手の心臓に暗器を振り下ろした。
刃が心臓に届いた時思った瞬間、刃先が止まる。
(何!!!)
ピキピキピキピキ
刃先から刃が凍りつき、すぐに粉々に砕け散る。
驚いたメイナが、暗器を離し逃げようとするが、その手は既に岩のような塊に拘束されていた。
目の前の男は両目を開き、メイナを見ていた。その茶色の目は真っ黒な深淵に縁取られていた。
「ああ、いつもの夢かと思ったよ。まさかメイナから来てくれるとは。」
メイナは、その声に聞き覚えがあった。一緒に食事をしてからまだ1日も経っていない。
驚いて声をあげようとするが、いつのまにかメイナの口は石の拘束魔術で固定されている。
「ンーンウウン。」
「今の俺は皇帝をしているんだ。一応暗殺者は調べる規定だからね。身体中を確かめてあげるよ。こんなに嬉しい暗殺者は初めてだよ。メイナ。」
そういうと、魔術師ライザーの声で話す残虐王は、怪しく微笑んだ。
中心部には行く必要がない。今日は偵察だけが目的だった。
テントの中には数人が寝ていた。
茶色のズボンに、襟がついた制服が干してある。10人程が寝るテントは従者のテントらしかった。
(当たりね。)
一番端で寝ている男に近づき、顔を見る。小柄で茶髪の若い男が寝ていた。
強い睡眠薬で湿らした布を男の口に当てる。ピクリとも動かず、男は深い眠りについた。
メイナは持っていた透明の魔石を男に近づける。
すぐに魔石は男と同じ茶色に染まった。
メイナはその魔石を自分の腕輪の魔石と入れ替える。
メイナの眼と髪は黒から茶へ変化した。
(これでいい。)
テントからぐっすり寝ている男を外に出す。
シーツと枯葉で覆い隠し、メイナは男の布団へ1人潜り込んだ。
(明日までここにいるなら、元に戻してあげるわ。たまには枯葉のベットもいいんじゃない?)
朝になり周囲が動き出す音がする。
メイナも起き、周囲の従者と同じように服を着て身だしなみを整える。
テントから出て、野営地を探ろうとしていた時に声をかけられた。
「貴方。手を貸して。これを皇帝様の寝所まで運んでほしいの。昨日の者は使い物にならなくなったわ。貴方も行ける所まででいいから。」
(食事を運ぶだけなのにやけに大袈裟だな。でも私にとっては都合がいい。)
声をかけてきた女が渡してきたのは、お盆にのった数種類のパンと飲み物、スープだった。
「分かりました。皇帝様の寝所は、、」
「ああ、向こうよ。この道を真っ直ぐ行って一番大きいテントになるわ。気分が悪ければ、側近の方に渡して。」
メイナは頷き、野営地の中央の道をお盆を持って歩き出した。
進めば進むほどテントの数が少なくなる。
(普通は、皇帝の周りを厳重にするのでは?まるで皇帝を避けているみたいな配置ね。)
中央の大きなテントにメイナはたどり着いた。
野営地の東は明るくなり、空の雲が紅いグラデーションに染まっている。
テントをくぐり抜け、中に入る。
(本当。拍子抜けね。こんなにすぐに接近できるなんて。寝所は、この奥かしら?)
広大なテントは、いくつかの部屋に分かれていた。
入ってすぐテーブルが置いてある。そこに食事が乗っているお盆を置いた。
確認したばかりの暗器も持っている。テントの中に人がいる気配が無い。
(好機だわ。あの布の向こうに。)
気配を立てないように、メイナは、寝所に入って行った。
寝所の入口の布を捲り中に入ると、そこには豪華な寝台があった。床は複雑な模様が描かれた絨毯が敷かれている。
寝台には、白銀の短い髪の体格がいい男が寝ている。目を閉じた状態でも、相手の顔が整っている事が分かる。
(まさか、本当に。残虐王エーリヒ。地神の加護があるはずなのに、髪の色が銀だわ。だけど、本物でも偽物でも殺す価値はある。)
滴る血を想像して、メイナは興奮した。
加護持ちを確実に殺すには心臓に刃を突き立てる事が一番だ。
寝ている男の髪の色が一瞬黄金に輝いたように見えた。
(何?いいえ、今がチャンスよ。)
音を立てないように近づき、メイナは思いっきり相手の心臓に暗器を振り下ろした。
刃が心臓に届いた時思った瞬間、刃先が止まる。
(何!!!)
ピキピキピキピキ
刃先から刃が凍りつき、すぐに粉々に砕け散る。
驚いたメイナが、暗器を離し逃げようとするが、その手は既に岩のような塊に拘束されていた。
目の前の男は両目を開き、メイナを見ていた。その茶色の目は真っ黒な深淵に縁取られていた。
「ああ、いつもの夢かと思ったよ。まさかメイナから来てくれるとは。」
メイナは、その声に聞き覚えがあった。一緒に食事をしてからまだ1日も経っていない。
驚いて声をあげようとするが、いつのまにかメイナの口は石の拘束魔術で固定されている。
「ンーンウウン。」
「今の俺は皇帝をしているんだ。一応暗殺者は調べる規定だからね。身体中を確かめてあげるよ。こんなに嬉しい暗殺者は初めてだよ。メイナ。」
そういうと、魔術師ライザーの声で話す残虐王は、怪しく微笑んだ。
6
あなたにおすすめの小説
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる