【完結】誰が王を殺したの?【R18】

仲 奈華 (nakanaka)

文字の大きさ
13 / 32

13.誰が王を殺したの①

しおりを挟む

エーリヒの魔術は、全てを凍らせた。

ハイエルフの死体を飲み込み、湖を全て凍らせ、草原の草や地面を含め、魔獣が凍りついた。上空の飛竜にも冷気が届き、宙に浮いたまま氷像となり落下する。


ドガシャーン

ガシャーン

ドーンバラバラバラバラ


落ちた飛竜の氷像は、魔獣を巻き込みながら粉々に砕け散った。


メイナが草原を見ると、幻想的な光景が広がっていた。

キラキラ輝く凍りついた草。所々宝石が散らばるように粉々になった輝く氷冷物が散らばり、虹のように煌めいている。

中心の湖も凍りつき、湧き出る水も時を止めたように美しく静止していた。

「本当に、いつ見ても綺麗な魔術ね。」

ライザーの討伐の度に、ライザーの氷冷魔術に感動していたメイナはうっとりと、幻想的な光景をみる。


そのメイナの手をエーリヒが掴み握りしめた。

「やっぱり、メイナは平気なんだね?」

「エーリヒ?」

「なんでメイナは凍らないんだろう?俺が魔術を使う時に側にいて無事でいれる者はメイナだけだよ。」

エーリヒはメイナを抱きしめ、その感触を確かめるように頭を撫でる。

「髪も凍えない。嬉しいよ。メイナ。」

そういうエーリヒからは寂しさが伝わってきた。

残虐王と呼ばれ、大陸最強のエーリヒだが、実際は孤独なのかもしれない。

メイナはエーリヒを温めるように、抱きしめ返した。

暫くそうしていると、エーリヒがメイナに尋ねてきた。

「メイナ?どうして俺を殺しにきたの?」


少し迷うが、どうせエーリヒの暗殺は失敗している。キーベルデルク神国とランドルフ帝国の戦争を回避しただけでも、兄の生存率は高まるだろう。メイナは答えた。

「依頼されたの。キーベルデルクの元国王を殺した者を暗殺しろと。」

「マライ・キーベルデルク王か?」

「そうよ。17年前に死んだ。」

「彼は殺されたのか?最後にあった時は、死期を悟ったような事を言っていた。仮王が立ったから自殺でもしたかと思っていたよ。」

「えっ?そうなの?」

「ああ、印象に残る人だった。キーベルデルク神国は神の加護の原点だと言われている。キーベルデルク神国から加護が生まれたらしい。
あの時は父に連れられて、各国を回ったからね。他国の加護を奪いたいと考える国も多かったはずだ。

全ての国の神の加護持ちはキーベルデルク王を狙っていただろうな。加護を奪うなら水神の加護が最も魅力的だ。」



「貴方は殺していないの?」



「ああ、殺す理由がない。今ある加護も望んで得た訳じゃない。

なるほどね。俺がキーベルデルク王を殺したと疑われている訳か?複数の加護を持っているのは俺だけだしね。」


エーリヒが嘘を言っているようには見えなかった。


(じゃあ、誰なの?分からないわ。会ったことの無い王殺しを探すなんて。)


「ランドルフ帝国の帝都には、各国から後継者が集まってきている。彼らに話を聞けば何か分かるかもね?手伝おうか?」

驚いて、エーリヒを見る。

「いつも魔術討伐の時は、助けて貰っているからね。」


「ううん。いいの。時間は稼げているかはずだから、気長に調べるわ。」


「そう。でも、俺に黙っていなくなったらダメだよ。これがある限り出来ないと思うけど、メイナにはずっと側にいて欲しいんだ。」


そういうと、エーリヒはメイナの隷属の指輪に口づけをする。そのまま、メイナの指を咥え、舐め回した。

「うっ、エーリヒ。」

(そうだわ。隷属指輪もある。なんとかしないと。)

「可愛い。メイナ。」

エーリヒはメイナの指から口を離し、メイナの唇に深く口づけをした。



レイナは凍りついた世界で、エーリヒとの熱い口づけに酔いしれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...