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ストーカーではありません!

ヘンジシタ!

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今日もガイア公爵邸の外は騒がしい。

2階の自室からそっとカーテンを開けて、門を見た。

屋敷の外を取り囲んでいる近衛兵は30人を超えている。

国王からの使者だと名乗りを上げている男性は身なりがよく貴族のように見える。

使者がこちらを見たような気がして、私は、慌ててカーテンを閉めた。



今日は登城しないザックバード公爵と私は中庭を歩いていた。

青い空、白い雲、深緑の木が太陽の光を浴びて輝いている。

ザックバード公爵は私の手を取り、エスコートしてくれる。

毎朝、メイド長が私にドレスを着せて、髪を結い上げる。

私の髪にはザックバード公爵から貰った銀のリボンが編み込まれている。

銀のリボンはザックバード公爵の髪と同じように光り輝いている。その銀のリボンを見るたびに大事な宝物が返ってきたような懐かしい気持ちになる。

宝物の銀のリボン。そんなリボンなんて私が持っている筈がないのに、最近ふと何かが頭をよぎる。

私の両耳には銀のイヤリング、胸には銀のネックレスをつける。ザックバード公爵から送られたそれらの装飾品は美しく、暗闇でも煌めく程輝いている。


中庭の中央には、色とりどりの花が植えられていた。

「ソフィア。一生大事にする。俺と結婚して欲しい。」

ザックバード公爵は私に跪き銀の指輪を差し出してきた。

輝くその指輪は、太陽の光を浴びて強く輝いていた。

「でも、私は平民で、公爵様の妻になんて相応しくありません。」

「俺は、君が好きなんだ。国王から結婚相手は俺の好きな相手を選んでいいと言われている。結婚したらソフィアは公爵夫人だよ。もう誰にも怯える必要はない。」

朝見た、公爵家の外の光景を思い出す。どんどん増えていく王城からの使者や兵士達。公爵家の使用人達でさえ、外出できないほど、周囲を囲まれていた。私が公爵邸に匿われてから、公爵邸の皆にはかなりの迷惑をかけてきた。このままではいけない事は分かっている。だけど、逃げ道もなく、どうする事もできない。
公爵夫人だなんて、無理な事は分かっている。だけど、そうする事でこの状況が解決するのなら、、、

「はい。よろしくお願いします。」

そう伝えると、ザックバード公爵は私を抱きしめ喜んだ。

「ありがとうソフィア。嬉しいよ。もう2度と離さない。絶対守るから。」

(ちょっと変わっているけど、こんなに私の事を好きだって言ってくれる。王妃に殺されそうになった時も、今もずっと助けてくれている。私が公爵夫人だなんて信じられないけど、これでいいんだよね。)

私は、世界で一番安心できるザックバード公爵の胸の中で、うっとりと瞳を閉じた。


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