ストーカーではありません!

仲 奈華 (nakanaka)

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ワタシではありません!

アキラメタ!

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ソフィアは、再びグレナ亭に来ていた。

先週グレナ亭に行った日はとても楽しかった。あの日は誰にも見つからずにガイア公爵邸に帰る事ができた。ザックバードは忙しかったらしくソフィアが寝静まった後、帰宅した様子だった。翌日のザックバードはとても機嫌が良かった。ソフィアに愛を囁き、抱きしめてから仕事へ行った。

(私も時々気分転換しないとね。ザックバードの相手ばかりだと余裕が無くなるわ。)

前回来た時は、沢山ご馳走になった。ソフィアは、手土産としてクッキーを焼いてきた。小麦粉とバター、卵と、砂糖、バニラエッセンスを丁寧に練りこみ、生地を作る。3等分した生地にそれぞれ、チョコチップ、キャラメルソース、ミックスベリーを混ぜ込み、5mm程の厚さに伸ばして型抜きをして焼き上げた。

自分でも上手く作れたと思う。

バスケットの中から美味しそうな香りが広がってくる。

ソフィアはグレナ亭のドアを開いた。

カランカラン。






グレナ亭のドアを開いたソフィアは驚く。

グレナ亭は、重厚感があるドアに、趣がある椅子や机、アンティークの調度品が揃う落ち着いた店内が特徴だったはずだ。なのに、1週間ぶりに訪れたグレナ亭はどこかが違う。

家具はオーク材で作られた物だが、傷一つない新しいものに全て変わり、テーブルも椅子も輝いている。アンティークのランプは全て無くなり、最新式のランプに付け替えられていた。

(どうしたのかしら?模様替えでもしたのかしら。)

ソフィアは店の中に足を踏み入れようとした。

「「待ってくれ!ソフィア」」

店の中にいた亭主のガイクと、その妻メアリーがソフィアに声をかける。

ソフィアは、店の中に入ろうとしていた左足をゆっくりと戻した。

「え?どうしたの?」

ガイクは、少し疲れているようだった。

ガイクは言った。
「そのまま、、、、ゆっくり、、、、店の外へ出てくれ。まだ、間に合う!」


ソフィアは困惑しながら言われた通りに後ずさる。


ガイクは言う。

「そう、ゆっくり下がってくれ。あと1m。」

ソフィアは困惑しながら後ろに下がる。

グレナ亭のドアから2m程離れた場所で立ち止まった。

その光景を見て、店の中から出てきたガイクとメアリーは大きく安堵の溜息をついた。

「はあーーー。よかった。もうあんな思いは2度としたくない!」

ソフィアは訳が分からなかった。

以前訪れた時は、快く迎えてくれたはずだ。

「あの?なにかあったの?」

メアリーは、ソフィアの後ろの方を見て急に叫び声を上げた。

「ヒイー。あんた!やっぱり憑いてきているわ!」

驚いたソフィアは後ろを振り向く。

そこには、開店前で人通りがほとんどない飲食店街が広がっていた。沢山の看板、電気がついていない街頭、趣がある街並み。いつもと変わらない。なにも憑いてなんていない。

なぜか悪寒を感じたソフィアはもう一度グレナ亭のガイクとメアリーを見る。

ガイクとメアリーは幽霊を見たかのように青ざめていた。

(なんだか、様子が可笑しいわ。今日は帰った方がいいかもしれないわね。)

ソフィアは寂しさを感じながら、二人へ言った。
「今日は、帰るわね。これだけ受けとって、前回のお返しでクッキーを焼いてきたの。美味しく出来たと思うわ。」

ソフィアは、はにかみながら二人へクッキーを差し出そうとした。

しかし、そのクッキーは渡す事ができなかった。

「「ヒイーー!」」

まるで、ソフィアの作ったクッキーを恐れているような反応に困惑する。

ガイクが言った。
「ソフィア!それは、誰にも渡したらダメだ。そうだ!結婚したと言っていただろう。お願いだから、夫に渡してくれ。いいか!夫以外には絶対に渡しては駄目だぞ!大変な事になる。」

メアリーも、ソフィアから2m離れたまま言った。
「ソフィア!まさか、あんたがこんな目に合っているなんて私は知らなかったよ。助けてあげたいけど、私達では無理だ。逃げるなら、、、、帝国とかどこか遠い所へ、、、、ヒイーー!」

メアリーは、またソフィアの後ろを見て叫び声を上げた。

ソフィアは思いっきり振り返る。

だけど、そこには誰もいない。静かな町が広がっているだけだ。

せっかく時間をかけて作って来たクッキーだ。どうしても食べて貰いたい。
「あの、店の外に置いておくから、後で取って貰えたら、、、」

だけど、二人は首を強く横に振り了承してくれなかった。

「わかったわ。今日は帰るから、また来てもいいでしょ?」

ソフィアは二人へ尋ねる。

ガイクは申し訳なさそうにソフィアに言った。
「もちろん来てもいい。だけど次は夫と一緒に来てくれ。きっと一緒なら大丈夫なはずだ。」

(大丈夫って何が?何の事?それにザックバードと一緒に来るなんて、もしグレゴール侯爵家の使用人だった事がバレたら、、、

ソフィアは言った。
「私、夫にグレゴール侯爵家の使用人だった事をまだ伝えていないの。あまり知られたくなくて、、、」

メアリーが言う。
「グレゴール侯爵家は、脱税と闇取引の容疑でマリアンヌ様が捕まったらしいよ。マーガレットお嬢様はドサクサに紛れて護衛と共に逃亡した。今、行方不明になっている。新しい当主には遠縁の親族が選ばれた。もう、ソフィアが心配する必要なんてないさ。今度は絶対夫婦で来て頂戴。歓迎するから。」

そう言うメアリーの笑顔は引き攣っていた。

ソフィアは、グレナ亭に入る事も手土産を渡す事も諦めて帰路についた。

ガイア公爵邸では、ザックバードが待っていた。

ソフィアを見て笑顔で近づいてくる。

「お帰り。ソフィア。」

こっそり抜けだしたはずなのに、ザックバードはソフィアの行動を把握していたみたいだ。ソフィアは、いろいろ察してザックバードへクッキーを手渡した。

「クッキーを焼いたの。よかったら食べて頂戴。それでね。今度、私がお世話になった人達に、ザックを紹介したいの。一緒に来てくれるかしら?」

ザックバードは嬉しそうに微笑み言った。
「もちろんいいよ。来週は帝国へ一緒に行く予定で忙しいから、来月で予定を立てよう。俺も楽しみだよ。ソフィアの知り合いに会えるなんて、いろいろ聞きたい事もあるしね。」

ソフィアはゾクゾクして両腕を擦った。時々ザックバードの事が苦手だと感じる事がある。とても愛されているし、幸せなはずなのに。

気のせいだと思い、ソフィアはザックバードへ微笑み返した。















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