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ワタシではありません!
キカナカッタ!
「お、おにいさま」
髪が燃えつきたアリア皇女は、白い地肌に大きく美しい紫瞳に涙を溜めて、よろよろと立ち上がった。
控えていた使用人が素早くアリア皇女へ近づき艶があるグリーンのストールをアリア皇女の頭部にかけて素早く結い上げた。結い上げられた緑のストールと紫瞳は煌めき、森の精霊のように美しい。
見た目だけは…
ソフィアを守るように抱きしめたままザックバードは言った。
「初めに手を出して来たのはそちらです。皇太子殿下」
アリア皇女の隣に立つ黒髪の男性が皇太子なのだろう。血筋だけで言うなら彼もソニア王女の従弟になるはずだ。ソフィアは、なんだか本当のソニア王女様が可哀そうに思えてきた。王国だけでなく帝国の親族までもが、こんなに癖強だなんて。きっとソニア王女が行方不明になったのには、残念すぎる親族関係が影響しているように思えてならない。
「妹アリアは、まだ幼い。多少わがままな所があるが、とても強い魔力を持ち、信じやすく一途な子だ。ザックバード公爵は、強力な守護魔法使いだと聞いている。私は、アリアの結婚相手として其方ほど相応しい相手はいないと思っている」
ザックバードとソフィアを睨みつけながら、皇太子は口元に笑みを浮べていた。
(え?幼なくて、わがままで、信じやすい…それって暗にバカな妹って事?バカな暴走王女をザックに押し付けようとしている?)
ソフィアは、王国に嫁いできたアリア王女が暴走し、王城を燃やし尽くす光景を思い浮かべてブルリと震えた。
ザックバードがソフィアの様子に気が付いたのか、腰に当てた手を強く引き寄せて言った。
「俺の結婚相手はソニアだけです。今回の和平協定にも皇室の血を引き継ぐソニア王女と俺との婚姻が明文化されています。皇帝も納得されているはずですが?」
「父は、かなり君に脅されたらしいね。戦場から帰ってきて父は変わってしまった。あの時、魔法が効かない私が父に付き添っていればと思う事がある。父は、君の事を恐れている。だけど、ザックバード公爵。貴方の魔法は私には意味がない。魔法さえなければ…君が私に勝てるとは思えない。」
筋肉質で大柄な長身の皇太子は、帯剣している柄に手を当てて軽く構えて威嚇してきた。
獰猛な黒豹を思わせる鋭い目つきには、今にも首元に飛び掛かってくるような殺気が感じられる。
ザックバードは、表情を変えずに手を軽く振った。
空気の層のようなものがソフィアの隣の彼から放たれた。
何層もの透明な壁のようなものが、ソフィアとザックバードを守るように立ち上がり地面が僅かに浮かび上がる。
ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、バリーン!
皇太子の目前で、透明な壁が割れるような音がした。
ザックバードがソフィアの隣で舌打ちした。
「チ、やはり効かないか」
(ザックの守護魔法が効かない!アリア皇女を押し潰していた魔法も皇太子が解除したのだわ)
不快に思ったのか、ザックが私を強く抱きしめてくる。
彼に愛されているのは知っている。でも時々分からなくなる。彼が愛しているのは本当にソフィアなのだろうか?行方不明のソニア王女の事をザックは今でも愛している。心の底から、執着していると言ってもいい。
ソフィアの事をソニア王女だと信じているザックの愛が、時々無性に息苦しく感じる事がある。
もしかしたら、皇太子の協力があれば、ザックから本当に逃れられるかも…
「ソニア。俺が絶対に守るから安心して」
声をかけられソフィアは、長身の彼を見上げた。
銀髪の整った顔立ちの彼は、熱の籠った茜色の瞳でソフィアを見つめていた。
なぜか背筋が凍るような寒気を感じる。
この恐怖が、皇族からか、目の前の彼からなのか分からないけれど。
「ええ、ありがとう。ザック」
ソフィアは、ザックバードに頷き返す事しかできなかった。
髪が燃えつきたアリア皇女は、白い地肌に大きく美しい紫瞳に涙を溜めて、よろよろと立ち上がった。
控えていた使用人が素早くアリア皇女へ近づき艶があるグリーンのストールをアリア皇女の頭部にかけて素早く結い上げた。結い上げられた緑のストールと紫瞳は煌めき、森の精霊のように美しい。
見た目だけは…
ソフィアを守るように抱きしめたままザックバードは言った。
「初めに手を出して来たのはそちらです。皇太子殿下」
アリア皇女の隣に立つ黒髪の男性が皇太子なのだろう。血筋だけで言うなら彼もソニア王女の従弟になるはずだ。ソフィアは、なんだか本当のソニア王女様が可哀そうに思えてきた。王国だけでなく帝国の親族までもが、こんなに癖強だなんて。きっとソニア王女が行方不明になったのには、残念すぎる親族関係が影響しているように思えてならない。
「妹アリアは、まだ幼い。多少わがままな所があるが、とても強い魔力を持ち、信じやすく一途な子だ。ザックバード公爵は、強力な守護魔法使いだと聞いている。私は、アリアの結婚相手として其方ほど相応しい相手はいないと思っている」
ザックバードとソフィアを睨みつけながら、皇太子は口元に笑みを浮べていた。
(え?幼なくて、わがままで、信じやすい…それって暗にバカな妹って事?バカな暴走王女をザックに押し付けようとしている?)
ソフィアは、王国に嫁いできたアリア王女が暴走し、王城を燃やし尽くす光景を思い浮かべてブルリと震えた。
ザックバードがソフィアの様子に気が付いたのか、腰に当てた手を強く引き寄せて言った。
「俺の結婚相手はソニアだけです。今回の和平協定にも皇室の血を引き継ぐソニア王女と俺との婚姻が明文化されています。皇帝も納得されているはずですが?」
「父は、かなり君に脅されたらしいね。戦場から帰ってきて父は変わってしまった。あの時、魔法が効かない私が父に付き添っていればと思う事がある。父は、君の事を恐れている。だけど、ザックバード公爵。貴方の魔法は私には意味がない。魔法さえなければ…君が私に勝てるとは思えない。」
筋肉質で大柄な長身の皇太子は、帯剣している柄に手を当てて軽く構えて威嚇してきた。
獰猛な黒豹を思わせる鋭い目つきには、今にも首元に飛び掛かってくるような殺気が感じられる。
ザックバードは、表情を変えずに手を軽く振った。
空気の層のようなものがソフィアの隣の彼から放たれた。
何層もの透明な壁のようなものが、ソフィアとザックバードを守るように立ち上がり地面が僅かに浮かび上がる。
ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、バリーン!
皇太子の目前で、透明な壁が割れるような音がした。
ザックバードがソフィアの隣で舌打ちした。
「チ、やはり効かないか」
(ザックの守護魔法が効かない!アリア皇女を押し潰していた魔法も皇太子が解除したのだわ)
不快に思ったのか、ザックが私を強く抱きしめてくる。
彼に愛されているのは知っている。でも時々分からなくなる。彼が愛しているのは本当にソフィアなのだろうか?行方不明のソニア王女の事をザックは今でも愛している。心の底から、執着していると言ってもいい。
ソフィアの事をソニア王女だと信じているザックの愛が、時々無性に息苦しく感じる事がある。
もしかしたら、皇太子の協力があれば、ザックから本当に逃れられるかも…
「ソニア。俺が絶対に守るから安心して」
声をかけられソフィアは、長身の彼を見上げた。
銀髪の整った顔立ちの彼は、熱の籠った茜色の瞳でソフィアを見つめていた。
なぜか背筋が凍るような寒気を感じる。
この恐怖が、皇族からか、目の前の彼からなのか分からないけれど。
「ええ、ありがとう。ザック」
ソフィアは、ザックバードに頷き返す事しかできなかった。
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