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第20話 兄弟
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ミライザは、グランに抱きしめられながら、唇を合わせ続けた。
(暖かくて気持ちいい。おかしくなりそう。)
ドキドキと胸が高鳴り、もっと近づきたくて仕方がない。何かが足りない。とてももどかしいのに、よく分からない。
グランが、少しだけミライザから顔を離し、甘く見つめてきた。
「可愛い。ミライザ」
ミライザは、強請るように言った。
「ねえ、もう少し」
ミライザが、足りない何かを確かめたいと願っていると、ドアの向こうが急に騒がしくなった事に気がついた。
「・・・かえっ・・・・たの・・」
「まあ・・ほんとう・・・」
「・・・よろこ・・・」
控室の入り口ドアの向こうから、数人の声が聞こえてきた。
その声に気がついたグランは、ドアの方を見て起き上がった。
グランは、ミライザを抱き起こし、恭しくブルーシルバーのドレスを整える。
「名残惜しいけど、時間切れだね。まだ後で楽しもうよ」
「あっ私、そんなつもりじゃ」
ミライザは急に恥ずかしくなった。自分から強請るような事を伝えてしまった気がする。
グランは、ミライザの頬に軽くキスをして、隣に座った。
その直後、ドアから数人の男女が入ってきた。
明らかにグランの兄弟だと分かる金髪の壮年男性は、金の刺繍が施されたタキシードを着て、白銀の美しいドレスを着た赤髪の美女をエスコートしている。
その二人の後ろから入ってきたのは、茶髪の体格がいい男性だった。一緒に入ってきたピンクブロンドの小柄な可愛い女性は、興味深そうにミライザ達を覗き込んでいる。
茶髪の逞しい男性が、グランへ話しがけながら、ソファに座った。
「やあ、グラン。やっと例のドレスを着せる相手が見つかったらしいな。てっきり、アイリーンの熱烈な求婚に負けて結婚までするかと思っていたよ。」
「勘弁してくれよ。ザイク兄さん。そもそもアイリーンは元々兄さんの相手だろう。全然俺のタイプじゃ無い」
「俺だってタイプじゃ無い。アイリーンは俺が茶髪である事が気に入らなかった。初めから金髪の兄貴か、グランを狙っていたのさ」
金髪の壮年男性が言う。
「私は無いだろう。年が離れすぎているし、彼女が幼い時、既にラニアと婚約していたはずた。」
ラニアと呼ばれた赤髪の美女も頷きながら言う。
「アイリーン公爵令嬢は、自分の金髪をかなり自慢していますからね。まるで、自分を皇族だと勘違いしているようですわ。あの、ねっとりと絡みつく視線は好きになれません。それにしても義弟が選んだ女性がこんなに美しい女とは思いませんでした。グランはかなりの面食いだったのですね。初めまして、えっと?」
話しかけられたミライザは、慌てて挨拶を返す。グランの生家が裕福だと言うのは本当らしい。目の前の人達は、皆、洗礼された装いをしている。
「はじめまして、ミライザと申します。」
ピンクブランドの髪の女性も、ミライザへ話しかけてきた。
「初めまして、ミライザさん。私はエリンと言います。ふふふ。会場入口でのアイリーンとのやり取りは私も見ていましたの。あの後、アイリーンったら、グランにハッキリと振られて泣いてたわ。アイリーンは、ザイクとの婚約が決まった私に何度も嫌がらせをしてきたのよ。これから大変だと思うけど、一緒に頑張りましょうね」
「えっ。ええ?」
(大変って?なんのことだろう?)
彼らと一緒に入ってきた高級使用人が入れた紅茶を、上品に飲みながら、この場で一番年配の金髪男性が言った。
「それにしても驚いたな。放浪癖があるグランが、婚約者を見つけてくるなんて。結婚もせずに、帝国皇族の地位を捨てると思っていたのだが」
「・・・・・・婚約?私とグランが?」
ミライザは、呆然としながら首を大きく横に振った。
(婚約なんてしていない。それに帝国皇族って?もしかしてグランは・・・・・・)
(暖かくて気持ちいい。おかしくなりそう。)
ドキドキと胸が高鳴り、もっと近づきたくて仕方がない。何かが足りない。とてももどかしいのに、よく分からない。
グランが、少しだけミライザから顔を離し、甘く見つめてきた。
「可愛い。ミライザ」
ミライザは、強請るように言った。
「ねえ、もう少し」
ミライザが、足りない何かを確かめたいと願っていると、ドアの向こうが急に騒がしくなった事に気がついた。
「・・・かえっ・・・・たの・・」
「まあ・・ほんとう・・・」
「・・・よろこ・・・」
控室の入り口ドアの向こうから、数人の声が聞こえてきた。
その声に気がついたグランは、ドアの方を見て起き上がった。
グランは、ミライザを抱き起こし、恭しくブルーシルバーのドレスを整える。
「名残惜しいけど、時間切れだね。まだ後で楽しもうよ」
「あっ私、そんなつもりじゃ」
ミライザは急に恥ずかしくなった。自分から強請るような事を伝えてしまった気がする。
グランは、ミライザの頬に軽くキスをして、隣に座った。
その直後、ドアから数人の男女が入ってきた。
明らかにグランの兄弟だと分かる金髪の壮年男性は、金の刺繍が施されたタキシードを着て、白銀の美しいドレスを着た赤髪の美女をエスコートしている。
その二人の後ろから入ってきたのは、茶髪の体格がいい男性だった。一緒に入ってきたピンクブロンドの小柄な可愛い女性は、興味深そうにミライザ達を覗き込んでいる。
茶髪の逞しい男性が、グランへ話しがけながら、ソファに座った。
「やあ、グラン。やっと例のドレスを着せる相手が見つかったらしいな。てっきり、アイリーンの熱烈な求婚に負けて結婚までするかと思っていたよ。」
「勘弁してくれよ。ザイク兄さん。そもそもアイリーンは元々兄さんの相手だろう。全然俺のタイプじゃ無い」
「俺だってタイプじゃ無い。アイリーンは俺が茶髪である事が気に入らなかった。初めから金髪の兄貴か、グランを狙っていたのさ」
金髪の壮年男性が言う。
「私は無いだろう。年が離れすぎているし、彼女が幼い時、既にラニアと婚約していたはずた。」
ラニアと呼ばれた赤髪の美女も頷きながら言う。
「アイリーン公爵令嬢は、自分の金髪をかなり自慢していますからね。まるで、自分を皇族だと勘違いしているようですわ。あの、ねっとりと絡みつく視線は好きになれません。それにしても義弟が選んだ女性がこんなに美しい女とは思いませんでした。グランはかなりの面食いだったのですね。初めまして、えっと?」
話しかけられたミライザは、慌てて挨拶を返す。グランの生家が裕福だと言うのは本当らしい。目の前の人達は、皆、洗礼された装いをしている。
「はじめまして、ミライザと申します。」
ピンクブランドの髪の女性も、ミライザへ話しかけてきた。
「初めまして、ミライザさん。私はエリンと言います。ふふふ。会場入口でのアイリーンとのやり取りは私も見ていましたの。あの後、アイリーンったら、グランにハッキリと振られて泣いてたわ。アイリーンは、ザイクとの婚約が決まった私に何度も嫌がらせをしてきたのよ。これから大変だと思うけど、一緒に頑張りましょうね」
「えっ。ええ?」
(大変って?なんのことだろう?)
彼らと一緒に入ってきた高級使用人が入れた紅茶を、上品に飲みながら、この場で一番年配の金髪男性が言った。
「それにしても驚いたな。放浪癖があるグランが、婚約者を見つけてくるなんて。結婚もせずに、帝国皇族の地位を捨てると思っていたのだが」
「・・・・・・婚約?私とグランが?」
ミライザは、呆然としながら首を大きく横に振った。
(婚約なんてしていない。それに帝国皇族って?もしかしてグランは・・・・・・)
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