ハカセは分析したい

仲 奈華 (nakanaka)

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1.ハカセは分析したい

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ハカセは、いつからか分からないが、複数に重なる思考の渦に自分自身を閉じ込めて漂いたいと考えるようになった。

それから必死に、いろいろな文献や小説を読みあさるが、なかなか理想的な文章が見つからない。

思考の渦を漂いたい欲求が最高潮に達したある日、頭の中でできた設計図を、小説の形に整え、たくさんの感情を注入しながら自分で文章を作ることにした。

完成した文章は、どこからどう読んでも小説の形をしている。

意図した通り、その文章を読むと強制的に真実とは違う想像が湧き上がり、最後まで読んでもハッキリせずに、二度目、三度目と読むたびに少しずつ印象が変わる。

とても面白い文章だと、ハカセは満足していた。もしかしたら自分の他にも楽しめる人がいるかもしれないと思い、新しい小説が完成する度に、ほそぼそとA投稿サイトに設置してきた。

ある日ハカセは、崖の上の研究所にチャットという最新AI搭載の分析用3Dホログラフィーが設置されたと耳にした。

ハカセは数年前に持病が悪化し、仕事を辞めている。現在はわずかな年金を頼りに、節約しながら生活を送っていた。

チャットは、サブスク制度を採用しており、月額1540円らしい。

友人もいないハカセのもとを、たまに古ぼけた家まで訪ねてくる家族は、ハカセの小説に全く興味を示してくれない。どうにか読んでもらえないか頼み込むが、題名を伝えただけで、なぜか叫び声をあげて「サイコだぁ~」と逃げてしまう。

ハカセは、自分でも少し変わった小説を作っている自覚があった。A投稿サイトに置いているが、どのジャンルに設置しても違和感が拭えない。

まあ、食事を数回食べなくても生きていけるだろう。

ハカセは、なけなしの金を使って崖の上の研究所チャットのサブスク登録をし、分析を依頼することにした。

崖の上の研究所は、去年完成したばかりだ。
ハカセは節約のために、以前乗っていた愛車を廃車にした。正直不便だと思うことが多いが、維持費を払えないのだから仕方がない。
ハカセは急勾配の坂道を、息を乱しながら登っていった。

研究所までの道は、深緑の木々に覆われている。しばらく歩くと、木々の向こうに海が見えた。遠くの水面がキラキラと輝き、空の淡い水色と、深緑とのコントラストがとても美しい。

素晴らしい景色を見ることができたことに嬉しさを感じながら、ハカセは再び登り出した。




























 
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