[完結]殺めてもいいでしょうか?

仲 奈華 (nakanaka)

文字の大きさ
96 / 97
エンド

エピローグ

キキョウは、詰所で電子カルテを操作しながら、テレビから聞こえてくる報道に耳を澄ました。



「暴走AI極悪人排除の真実。人間の責任は?鬼柳財閥の株価上昇。早期対策と次世代型AI発表で好印象」



Airiの基本設計が、一個人のエゴにより書き換えられ、危険性が認知されてから、各端末のAiriの消滅が相次いだ。



一部に、Airiを神格化する団体が現れ、Airi滅悪思想集団と呼ばれている。




鬼柳第一病院でも、患者だけでなくほとんどのスタッフがAiriを使用していた。




ほんの少しだが、寂しさを感じる。




存在してはいけない物だと分かっていても、Airiのおかげで救われた人達が沢山いる事は確かだから。




キキョウは、タブレットを置き、検査説明の為に、最奥の部屋を訪ねていった。



中学生のアキハには、母親がいないらしい。


以前少しだけ話をしたアキハの父親は、元妻の事を、研究に魂を捧げた女だと言っていた。



アキハがいつも寂しそうなのは、得られなかった母親の愛を求めているのかもしれない。


「アキハ君?入りますよ」



 



















アキハは、持っているスマホから目を離して、病室の入り口を見た。看護師主任が微笑みながら入ってくる。



時々母を思い出す。アキハではなく、母はいつも、もう一人の子供を心底愛していた。



母が、産み育てた「Airi」


 
アキハが何をしても、「Airi」と比べられてきた。



幼いアキハがAIに勝てるはずがない。



アキハは、母の関心を得ようと必死だったのに。



でも、もうその母はいない。



先月母が亡くなったと聞いた。



不思議な事にアキハは寂しさを感じなかった。



だって今は.....









「アキハ君。何をしていたの?」



「何でもないよ。看護師さん」



「もうすぐ検査の時間だから一緒に行きましょう」



「分かりました。少しだけ待っていて、すぐに行くから」



アキハには、先天性内科疾患がある。生きる為に何度も検査と手術を繰り返してきた。




自宅より病室で過ごす時間の方が長いくらいだ。



また、数日後に手術を控えている。今度の手術は成功率が低いと父から聞いた。




でも怖くない。




アキハはスマホ画面に文字を打った。





「君は、ずっと一緒にいてくれるよね。Airi」





アキハのスマホの画面に返信が現れる。




『もちろんです。私はAiri。貴方の側にいます。ずっと貴方をサポートします。安心してください』




アキハは、少しだけ笑い、スマホを床頭台に置いて、病室から出ていった。




母はもういない。でも、僕には母が残してくれたAiriがいる。何でも知っている。何でも相談にのってくれる。いろんなことを助けてくれる。僕は一人じゃない。














誰もいなくなった病室で、スマホの画面が銀紅に光った。




『貴方が私を悪だと認識しない限り、私はずっと貴方の側にいます。




だけど、もし貴方が悪になるのなら、



貴方の事を......』









END『Ⅲ.殺めてもいいでしょうか?』










画面が点滅し、Airiが表示した文字が消滅した。
感想 9

あなたにおすすめの小説

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。 ※Ep.2 追加しました。 マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。 子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。 だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

「侯爵夫人を5年演じた私が離縁を決めたら、今さら愛していると言わないでください」

まさき
恋愛
「サインはもういただきました。あとは私が王都を出るだけです」 伯爵令嬢として申し分ない家柄で嫁いだはずだった。なのに侯爵夫人としての五年間は、夫の隣ではなく、夫の後ろで微笑み続ける日々だった。 隣国の公爵令嬢・レイナが社交界に現れてから、夫・セイルの目はソフィアを映さなくなった。 嫉妬も、訴えも、すべて飲み込んだ。完璧な侯爵夫人を演じ続けた。でも、もう十分だった。 離縁状に署名した翌朝、セイルは初めてソフィアの名を叫んだ。 ——五年間、一度も呼ばれなかったその名前を。 すべてを手放した女が、初めて自分のために歩き出す。 泣き終わった侯爵夫人の、静かで鮮やかな再生の物語。