殺めてもいいでしょうか?

仲 奈華 (nakanaka)

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キキョウ

3.急明

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10階特別室へ向けてキキョウは歩いて行った。

深夜を回り、廊下の照明は落とされ薄暗い。

特別室は最奥に位置している。

特別な顧客だけが使用できる特別室。一日5万円の部屋代を請求されるその部屋は、広く設備も整っている。

キキョウは、少しだけ違和感を覚えた。

何かが可笑しい。

そう静かすぎるのだ。

ふと立ち止まり、後ろのエレベーターを見る。

エレベーターは動いていない。

特別室の隣には、非常階段の入り口がある。

本来ならば閉められているはずのドアが開いている。

ふと、非常階段の奥に黒く長い髪が見えた気がして、キキョウは非常階段へ向かった。


ドアの奥を見る。

薄暗い階段には誰もいない。

疲れすぎているのかもしれない。最近は人手不足から連勤が続いている。お腹の子の事で頭がいっぱいで、見えない物も見える気がする。

きっと気のせいだろう。

キキョウは、非常階段のドアをそっと閉めて、鬼柳ウメが入院している特別室へ向かった。

確かに看護部長は、ナースコールが鳴りやまないと言っていたのに、

やっぱり静かだ。

特別室のドアの前に立つが、ドアが反応しない。

監視カメラ付き自動ドアが開かない。

やっぱりおかしい。

キキョウは、開かないドアを手動で押し開いた。

部屋の中は、暗闇に包まれていた。

心電図のモニターが暗くなっている。

アラームも切られている。

自動シリンダーの電源も抜かれている。

中央のベッドに寝ている彼女の顔は青白く、動いていないようだ。

キキョウは、すぐに彼女に駆け寄り脈を確認した。

脈はある。

呼吸は浅いが続いている。

「鬼柳さん。鬼柳ウメさん」

呼びかけていると、急に部屋の電気がついた。

明るくなり、目の前を確認すると彼女の胸に果物ナイフが刺さり、血がにじんでいた。

キキョウは、驚愕し大きく息を吸い込んだ。












そして、ゆっくりと息を深く吐いた。


そうだ。彼女は殺されそうになって搬送された。疎遠な息子の妻が容疑者だと聞いた。

キキョウは、部屋の電源が復旧している事を確かめて、PHSを出し、救急へ電話をかけた。

「1001特別室の患者が刺されています。すぐに来てください。近くに容疑者がいる可能性があります。」

幸い果物ナイフは小さく深く刺さっていないようだ。
キキョウはナイフを固定し、止血措置を開始した。


バタバタバタバタ。

数人が駆け込んでくる足音が聞こえてくる。

「どういうことだ。どうして特別室で」

かなりの人数に連絡がいったのか救急医師、看護部長、管理部課長までいる。

「わかりません。私がここに来た時は、自動ドアを含め電源が落ちていました。血圧84/45、脈56」

「直ぐに手術室へ移動しよう。看護部長は警察へ通報を」

管理部課長佐伯が言う。
「待ってください。通報は鬼柳ウメ様が助かってからでも」

「不審者がいるかもしれない。早急に対応しなければ」

「わかりました。私が通報します。佐伯課長は監視カメラの映像を確認してください。誰か映っているかもしれません」

「それは、、、はい。わかりました」

顔色の悪い佐伯課長は何かに怯えるようにゆっくりと頷いた。














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