【完結】リアナの婚約条件

第12話 一筋の光

いつの間にか雨の音が聞こえなくなっていた。

窓の外は明るくなり、雲の隙間から差し込む一筋の太陽の光が、窓に反射してキラキラと輝いている。

リアナはジョージから、そっと離れた。

ジョージは、リアナを心配そうに見つめてくる。

(また、同情された。こんなに頼るつもりは無かったのに。姉さんごめんなさい)

姉の元婚約者にキスをしてしまった。もう何年も姉には会っていない。姉はとても美しく賢い女性だった。だけど、姉はリアナに決して優しく無かった。

幼ながら、リアナは気がついていた。姉自身がリアナより優秀である事をアピールするために行動している事を。リアナには、顔色が悪く見えるような暗紺色の洋服を勧め、姉は清楚な服や、輝く品のあるアクセサリーを身につける。母や、姉の友人、親戚達は、美しく賢い姉と暗く陰気な妹と、揶揄うように口にしていた。姉はリアナが貶される度に、満足そうに笑っていた。

リアナだって、本当は可愛い小物や綺麗な服が好きだ。姉に何度もお願いしたが、リアナには似合わないからと許してくれない。ある日リアナは、こっそり姉が着なくなった花柄のワンピースを身につけた事がある。嬉しくなり、鏡の前で笑っていたら、姉に見つかった。姉は、リアナを睨みつけながら、掴みかかり無理矢理ワンピースを脱がしてきた。止めるリアナの目の前で花柄のワンピースは、鋏でバラバラに切り裂かれた。「泥棒みたいな真似をするなんて信じられない」姉は両親にも告げ口をして、リアナは母から強く怒られた。美しい姉だが、自分の思い通りにならない時、急に激昂する事があった。

もしリアナが、ジョージに手を出したと姉に知られたら？想像もしたくない。

「ジョージ。ごめんなさい。私、どうかしていたわ。」

「リアナ。謝らないで。僕は嬉しいよ。リアナが僕を頼ってくれて。」

ジョージは、リアナを抱きしめながら、頭を撫でてきた。

さっきまでの大雨が嘘のように、外は明るくなっている。

「お義父さんと会う日が決まったよ。今日はそれを伝えに来た。今週の土曜日、雨鳥家に一緒に行こう」

リアナは、ジョージの肩に頭をつけながら頷いた。

「ええ。ありがとう。ジョージ」


(きっと、大丈夫。もう怖くない。)