上 下
20 / 29

第20話 移動

しおりを挟む
カオリは、目を見開くリアナを見て満足そうに微笑み言った。

「まあ、本当に雨鳥リアナなのね。ふふふ。それにしても、エリナの話とは全然イメージが違うわね。」

「姉さん?」

「ええ、私はエリナの友人よ。エリナは必死よ。失踪した父親殺しの妹を見つけてってね。貴方の顔写真をSNSで友人へ送って探しているわ。さあ、一緒に行きましょう」

カオリは、リアナの手首を掴み無理やり椅子から立たせようとした。

「離して!なにをするの?」

「エリナが貴方に逢いたがっているの。大人しくついてきて!貴方だって今更父親殺しの犯人として捕まりたくないでしょ」

リアナは、腕の力を抜きしぶしぶ頷いた。

(姉さんが私に逢いたがっている。私だって家に帰りたい。逃げてしまったけど、いつまでもこのままでいいなんて思っていない。だから、姉さんに会いに行こう。)







カオリに手首を握られたまま、リアナはレストランを後にした。

カオリの長いマニュキュアが塗られた爪が、リアナの手首に食い込み痛みを感じる。

「ねえ、離して。逃げずに姉さんに会いに行くから」

カオリは、リアナの顔をチラリと見て、より強く手首を握りしめた。

「貴方の事は信用できないの。」

「せめて、ジョージに伝えさせて。彼になにも伝えていないわ」

「貴方にジョージの名前を呼ぶ資格なんてないでしょ。どうしてジョージと一緒にいたか知らないけど、不釣り合いだわ。ジョージの事は気にしなくていいわ。彼って素敵でしょ。貴方を送り届けたら私がお相手するから」

カオリとリアナは、ホテルの裏口にたどり着いた。

駐車場には黒塗りの乗用車が止まっている。


カオリは、乗用車へ近づき、車の後部座席にリアナを押し込んだ。

「キャ」

「この娘を雨鳥家へ連れて行って。雨鳥家には私から連絡をしておくわ。頼んだわよ」

カオリの言葉に、車の運転席に座っていた壮年の男が返事を返す。

「かしこまりました。カオリ様。カオリ様の送迎に別の者を手配しましょうか?」

「ふふふ。必要ないわ。私は暫く帰らない予定よ。今日は運がいいわ。ジョージに逢えるなんて。ねえ、リアナさん、エリナによろしく伝えてね。まあ、そんな余裕が貴方に残っていればでいいのだけど。」



しおりを挟む

処理中です...