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第29話 エピローグ

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そよそよと心地いい風が部屋に吹き込んでくる。

カーテンが揺れる音がする。

リアナは、瞼の向こうの光に誘われるように目を覚ました。


窓の外には、澄み渡る青空が広がっている。

白いレースのカーテンが風に吹かれ雲のように広がっていた。

リアナの左手は、しっかりと握りしめられていた。

温かさに惹かれるように左側を見ると、ジョージが祈る様にリアナの両手を握りしめながら、リアナを心配そうに見つめていた。

ジョージの黒髪が、窓から差し込む光を浴びて輝いている。

ずっと恐怖を感じていた。

殺されそうになり、疑いをかけられ、追い詰められる恐怖を。

暗闇の中、なんとか逃れようと足掻き続けてきたけれど、何度も何度も谷底に引きずり降ろされ、どうしても這い上がる事が出来なかった気がする。

でも、今は違う。

雨はもう降っていない。

私は一人じゃない。何度も何度も私を助けてくれたジョージが相変わらず目の前にいる。

ずっと一人で藻掻いていると思っていたけど、そうではなかった。

私は、ただ恐怖から逃れるために逃げ続けていただけど、信じて立ち向かえばもっと早く何もかも解決していたのかもしれない。

もう後悔はしたくない。

逃げる事も、伝えずに押し黙る事も止めよう。

今を生きる目の前の相手に伝え、向き合いたい。


「ジョージ?愛しているわ。ありがとう」


リアナの掠れた声を聞き、ジョージは泣きそうな表情で笑い言った。


「僕も愛している。ずっと。リアナだけを」





















リアナは、ソウマに襲われた所をジョージに救われた。ソウマはリアナの殺人未遂と父の殺害容疑で警察に逮捕された。姉の雨鳥エリナは、借金取りに連れて行かれてから行方不明になっている。リアナの証言をもとに、車が転落した場所を捜索した所、金髪の成人男性の遺体が発見された。身分証明書から姉が以前一緒に暮らしていた林山ガウンだと思われると警察から伝えられた。リアナは、ジョージと婚約する事になった。チョウ食品会社は、ジーウ製薬会社との業務提携を結び、健康関連商品の新商品がもうすぐ発売される。



ずっと逃げ続けてきた。怖くて怖くて仕方が無かった。

でも、もう大丈夫。

雨が降っても、一人孤独に震えても、待ってくれている人がいるから、もう逃げない。





END













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