旦那様と僕・番外編

三冬月マヨ

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それは嫉妬

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「…おい、それは何だ?」

 縁側で胡座を掻いて座っていた俺は、風を送っていた団扇でそれを指した。

「ああ、一昨日、せい様からお借りしたぶりいふです。身に着けました物をそのままお返しするのは失礼ですよね。ですから、こうして洗いましてからお返ししようと思いました次第です」

 俺の問い掛けに、庭先で洗濯物を干していた雪緒ゆきおは手を止めて俺を振り返り、朗らかに笑って見せた。

 …星から借りた?
 …星の下着?

「…気に入らん…」

「はい?」

 ぼそっとした俺の低い呟きは、雪緒の耳には届かなかったらしい。

「洗った処で、一度は身に着けた物だろう。そんな物を返されても困るだけだ。来い。新しい物を買いに行くぞ」

 俺がそう言って立ち上がれば『確かに…。洗いましたとは云え、一度は身に着けました物ですものね…失礼ですよね』と、納得していたが。違う、そうでは無い。
 お前が身に着けた物を、他の男に渡したく無いだけだ。
 しかし、俺の気なぞ知らずに雪緒は『流石は旦那様です』と笑う。
 くそ、この天然がっ!
 お前も想像してみろ。
 俺が他の男の下着を身に着けていたらどう思う?
 嫌だろう?
 嫌だよな?
 頼むから嫌だと言え。

 ◇

「…何だ、今のは…」

「ああ、先日ぶりいふを求めて来ました時に、あちらの方が御丁寧に売り場まで案内して下さったのです。ですから、そのお礼をしたまでです」

 百貨店へ着くなり雪緒は『旦那様、暫しお時間を下さい』と『案内所』と書かれているカウンターへと歩いて行った。俺を残して。
 その理由を問えば、返って来た答えがそれだ。
 ちらりと横目でそちらを見れば、案内嬢とやらは、それはにこやかな笑顔を浮かべて、こちらへと手を振っていた。

「…気に入らん…」

「…はい?」

「…いいから、売り場へ案内しろ」

「はい。こちらです。逸れないで下さいね」

 おい、俺を幾つだと思っているんだ。

 そうして下着売り場へ来れば、店員はおかしな動きをしているし、雪緒は雪緒で腰を痛めたとか抜かすし、余計な事まで口にしやしないかと冷や冷やした。

 更に。

「先日ご馳走になりましたので、今日はしっかりとお客としての努めを果たしませんと」

 と、地階にあるクレープ屋に連れて行かれた。
 俺達が帰る頃には、長蛇の列が出来て居た。

 …あれだ…。
 次からは、この百貨店に用がある時は、間違っても雪緒を一人で越させてはいけないし、雪緒を一人にしてもいけない。

 こいつは、何人誑かせば気が済むんだ! なあ!?
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