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ほんぺん
さん
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魔王が目を覚ました時、そこは別世界の様だった。
部屋全体に、さんさんとした白い光が射しこんでいたのだ。
「…はて…?」
自分は何時、ベッドへと入ったのだろうと首を傾げてから魔王は身体を起こした。
そして、視界に入って来た、真っ白な布団を持ち上げて鼻を寄せて、その匂いを嗅いだ。
…おひさまの匂いがした。
こんな真っ白な布団等、どれぐらいぶりだろうか。真っ黒で、カビ臭い匂いしかしない布団しか無かった筈なのに。
「…もしや…っ…!」
誰かが。
かつての仲間が戻って来たのかも知れない。
魔王はベッドから飛び降りて、そして、固まった。
だって、全裸だったから。
何時も、黒いローブに身を包んでいたが、それが無い。
陽に焼けた事の無い白い肌が見えるし、意識して下を見れば、黒い毛が見えた。
すっぽんぽんで寝ていたのかと、魔王はベッドへと飛び付き、真っ白な布団を捲った。
魔王が知る寝床は、真っ黒で寝汗が染み込み、カビやきのこが生えたりしている物なのだ。そこに全裸で寝ていたなんて有り得ない。
「上掛けはともかく、シーツは…ッ…!!」
が、そこにあったのは、布団と同じく真っ白なシーツだった。
「いやいや、シーツが白くても…っ…!」
と、シーツを捲った。
しかし、そこにあったのは、バネとか綿とかのはみ出しが見えない、どう見ても新品のマットレスだった。
「…どう云う事だ…?」
よくよくベッドを見れば、ベッドその物も傷一つ無い様に見える。
そして魔王は陽の光を取り込む窓辺へと寄り、その桟をつうっと人差し指で撫でた。そして、目を凝らしてその指を見る。積もりに積もった埃など塵と見られず、逆に魔王の指が綺麗になった気がした。
「…一体誰が…。…いや、何があったのだ…?」
寄せられていたカーテンを開けば、ひだになっていた部分にも埃などは無かった。
「ああ、おはようございます。そうして起きていられると云う事は後遺症等は無いみたいですね。食事にしましょう」
ひたすらに首を捻る魔王の耳に、ガチャリとドアを開ける音が響き、ついでにやたらと朗らかな声が聞こえて来た。そしてガラガラとワゴンを引く音も。
「…は?」
自分の置かれた状況が解らずに困惑していた魔王は、更に困惑した。
これ、誰だったっけ? と、魔王の目が語っている。
「あれ。傷付いてしまいますね。この三日、ずっと傍に居たのに。スンフォエですよ。言い難ければ、スンと呼んで下さい。ほら、ソファーに座って下さい。食べながら話しましょう」
「…みっか…? スン…?」
魔王は口の中で呟く。
そして、徐にスンフォエを指差して、大きく目と口を開いた。
「貴様は不法侵入者!! 何だ!? 私に何をした!? この塵一つ無い部屋はどう云う事だ!? 何故、私は裸なのだ!? 愛用のローブはどうした!?」
目を覚ます前の事を思い出した魔王は、力の限りに思い付いた事を矢継ぎ早に口にした。
「あのままの部屋では、落ち着いて話が出来そうに無かったので、ちょっと魂を抜いて、魔王様には休んで貰って、その間に館の掃除をしていました。ローブって、雑巾の間違いでは? あんな饐えた匂いのする物は燃やしました。あと、どれぐらいお風呂に入っていなかったんですか? 物凄い垢が出ましたよ? 髪だって、あちこち凝っていたし、あ、少し毛先を揃えましたからね。魔王様の洋服は今、縫っている途中ですので、暫くはそのままで居て下さいね。俺のローブじゃあつんつるてんになりそうだし、そのままの方が目の保養になるし俺にも都合が良いので」
カチャカチャと音を立てながら、スンフォエがワゴンに乗せていた皿をローテーブルの上へと移動させて行く。
(白い湯気を立てているそれは、ロールキャベツだろうか? そのふっくらとした黄金色の玉子焼きは何だ? その白い丸いパンは? その青々とした野菜は?)
「さあ、食べましょう?」
だらだらと涎を垂らし、テーブルに置かれた料理を眺める魔王に、スンフォエはにっこりと笑った。
部屋全体に、さんさんとした白い光が射しこんでいたのだ。
「…はて…?」
自分は何時、ベッドへと入ったのだろうと首を傾げてから魔王は身体を起こした。
そして、視界に入って来た、真っ白な布団を持ち上げて鼻を寄せて、その匂いを嗅いだ。
…おひさまの匂いがした。
こんな真っ白な布団等、どれぐらいぶりだろうか。真っ黒で、カビ臭い匂いしかしない布団しか無かった筈なのに。
「…もしや…っ…!」
誰かが。
かつての仲間が戻って来たのかも知れない。
魔王はベッドから飛び降りて、そして、固まった。
だって、全裸だったから。
何時も、黒いローブに身を包んでいたが、それが無い。
陽に焼けた事の無い白い肌が見えるし、意識して下を見れば、黒い毛が見えた。
すっぽんぽんで寝ていたのかと、魔王はベッドへと飛び付き、真っ白な布団を捲った。
魔王が知る寝床は、真っ黒で寝汗が染み込み、カビやきのこが生えたりしている物なのだ。そこに全裸で寝ていたなんて有り得ない。
「上掛けはともかく、シーツは…ッ…!!」
が、そこにあったのは、布団と同じく真っ白なシーツだった。
「いやいや、シーツが白くても…っ…!」
と、シーツを捲った。
しかし、そこにあったのは、バネとか綿とかのはみ出しが見えない、どう見ても新品のマットレスだった。
「…どう云う事だ…?」
よくよくベッドを見れば、ベッドその物も傷一つ無い様に見える。
そして魔王は陽の光を取り込む窓辺へと寄り、その桟をつうっと人差し指で撫でた。そして、目を凝らしてその指を見る。積もりに積もった埃など塵と見られず、逆に魔王の指が綺麗になった気がした。
「…一体誰が…。…いや、何があったのだ…?」
寄せられていたカーテンを開けば、ひだになっていた部分にも埃などは無かった。
「ああ、おはようございます。そうして起きていられると云う事は後遺症等は無いみたいですね。食事にしましょう」
ひたすらに首を捻る魔王の耳に、ガチャリとドアを開ける音が響き、ついでにやたらと朗らかな声が聞こえて来た。そしてガラガラとワゴンを引く音も。
「…は?」
自分の置かれた状況が解らずに困惑していた魔王は、更に困惑した。
これ、誰だったっけ? と、魔王の目が語っている。
「あれ。傷付いてしまいますね。この三日、ずっと傍に居たのに。スンフォエですよ。言い難ければ、スンと呼んで下さい。ほら、ソファーに座って下さい。食べながら話しましょう」
「…みっか…? スン…?」
魔王は口の中で呟く。
そして、徐にスンフォエを指差して、大きく目と口を開いた。
「貴様は不法侵入者!! 何だ!? 私に何をした!? この塵一つ無い部屋はどう云う事だ!? 何故、私は裸なのだ!? 愛用のローブはどうした!?」
目を覚ます前の事を思い出した魔王は、力の限りに思い付いた事を矢継ぎ早に口にした。
「あのままの部屋では、落ち着いて話が出来そうに無かったので、ちょっと魂を抜いて、魔王様には休んで貰って、その間に館の掃除をしていました。ローブって、雑巾の間違いでは? あんな饐えた匂いのする物は燃やしました。あと、どれぐらいお風呂に入っていなかったんですか? 物凄い垢が出ましたよ? 髪だって、あちこち凝っていたし、あ、少し毛先を揃えましたからね。魔王様の洋服は今、縫っている途中ですので、暫くはそのままで居て下さいね。俺のローブじゃあつんつるてんになりそうだし、そのままの方が目の保養になるし俺にも都合が良いので」
カチャカチャと音を立てながら、スンフォエがワゴンに乗せていた皿をローテーブルの上へと移動させて行く。
(白い湯気を立てているそれは、ロールキャベツだろうか? そのふっくらとした黄金色の玉子焼きは何だ? その白い丸いパンは? その青々とした野菜は?)
「さあ、食べましょう?」
だらだらと涎を垂らし、テーブルに置かれた料理を眺める魔王に、スンフォエはにっこりと笑った。
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