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新しい世界の始まり

最初の依頼は

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民家と言うより少し高級感溢れる家々が立ち並ぶ通りに来ていた。
ペット探しの依頼とか、犬猫とかだろうからすぐ終わると思いながら依頼主の家の前まで来ていた。

一言で言うなら豪邸。
大きすぎる門、広すぎる庭はちゃんと手入れが行き届いている植物が誇らしげに咲き誇っている。


「・・・すいません、冒険者ギルドから依頼を受けてきたものですが・・・」


門の前で言うと自動で大きな門が開いた、勝手に中へ入れって事なのだろう。
中へと足を踏み入れる。

(何、此処・・・屋敷に着くまでの道長い!疲れた!!)

ペットを探す前に体力がなくなりそうだった。
やっと屋敷の玄関に到着、執事の方が待っていてくれた。


「お待ちしておりました、旦那様がお待ちですので案内いたします」

「・・・お願いします」


肩で呼吸をしながら、息を整える。

屋敷の中も豪華ではいってすぐにシャンデリアや、螺旋階段をみて正直内心ぐったりしていた。
こう、お金持ちの人っていい印象があまりない。そしてペットがタダの犬や猫ではないのでないかと思い直していた。何せ此処は魔物が存在する混沌異世界なのだから・・・。


「どうぞこちらです」


長くて広い廊下を案内され、一つの大きな扉の前に着いた。


「旦那様、冒険者の方をお連れしました」

「はいってくれ」

「失礼いたします」


扉を開けられ、中に入る。


「・・・・・・」


(広・・・・ッ・・本棚とか凄いな・・・)

思わず周りを見渡して言葉を失った。

高価な品らしき物や、宝石やら絵画が沢山飾られていた。


「すまないね、そこのソファーに腰掛けていてくれるか?」

「・・・はい」


旦那様と呼ばれた男の人はまだ若い見た目で、机の上には積まれた書類の山。

必死に目を通してサインを書いていた。

待つこと5分。

メイドの方が部屋に入ってきてゼノンの前にお茶とお菓子を置いていった。


「・・・・・」

(食べていいのかな?・・・・気まずい空気嫌だなあ・・・)


取り敢えず喉も渇いていたことだし、ティーカップをとり一口。

(あ、美味しい・・・)

ほっこり癒やされる。フルーティーな香りと甘みが飲んだ後鼻から抜けていった。


「よし、待たせてしまってすまなかったね」

「いえ、大丈夫です」

「依頼だったね、ペットは娘が大切にしていたんだが、私がうっかり鍵をかけ忘れて逃げてしまったんだ」

「・・・・」

「これが、写真だ」


ゼノンは写真を受け取り、写真を凝視した。


(え?・・・えええええぇぇぇ・・・?)


小さな女の子と一緒に写っているのは少女の身の丈より3倍は巨大な獣。

(これ、大丈夫なのかな?襲われているように見えなくもないけど・・・)


「可愛いだろう?」


(・・・どっちが?!)


「その子の名前は、ルーシャだ。賢い子だよ、人の言葉を理解している」


(あ、ペットの方か・・・)


「分かりました、この依頼引き受けます」

「助かるよ!ギルドから紹介されてきた皆は写真を見るなり断ってしまって・・・」


(こんな巨大な獣、普通なら断るかも・・・・)


「大切な家族なんだ、宜しく頼むよ・・・えっと・・・」

「あ、僕はゼノンです」

「宜しく頼む、ゼノン君。私はシルバ・ディオ・ブリッツだ。」


シルバと握手を交わし、ゼノンは屋敷を後にした。


(あんな巨大な獣、街に居たら騒ぎだろうし・・・森の方かなぁ?)


ゼノンは再びディアリスの通りを横切って街の外の東側の草原に向かった。

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