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新しい世界の始まり
ゲーム世界と混合した異世界での目覚め
しおりを挟む「う・・・ッ」
十夜は次第に意識が戻り、瞼を開けた。
「目が覚めたか?」
瞼を開け最初に飛び込んできたのは心配そうに覗き込むジンの姿。横たわっていたところを上半身だけ支えられて起こされたらしい。
「・・・・・此処は・・・?」
聞いてから違和感に気付いた。
発せられたのは僕の声ではない・・・ゲームをしていて聞き覚えはあるけれど・・・。
自分で創ったキャラの声・・・。
「此処はさっきの古城跡だ。」
静かなジンの声に、十夜は再び思い出した。
さっきまでのあの恐怖を。
「ぁ・・・ッあああ・・・ッ・・闇が、虚無が・・・ッ僕の、左手、・・・・」
完全にパニックになった十夜は支えてくれていたジンの腕にしがみついた。
ジンは静かに頷き、十夜を落ち着かせる。
「大丈夫だ、腕は何もなっていない」
「え・・・?」
言われて恐る恐る視線を向けると、逞しい左腕があった。
「・・・・?」
(誰の手・・・?僕の手はすぐ折れてしまいそうなほど細いはず・・・。)
再びジンに視線を戻した。
答えを求めるように。
「・・・・・空の器に君の魂を移し定着させた」
凜とした聞き惚れてしまいそうな美しい声だが、この時十夜はそれどころではなかった。
(何を言っているのだろう?空の器?どういう事だろう?)
「新しい生活に、世界の終焉崩壊の様や元の人格が支障をきたすなら記憶を消す事も出来るが?」
「・・・・・」
(混乱していて頭が追いつかない・・・・そもそも器・・・って)
自分の体に視線を向けると、逞しい両腕や良く鍛えられた腹筋がわれた細身の体。先程から視界に入る長めの銀色の前髪。
恐る恐る手を伸ばしリアルでは絶対にないはずの物を触れてみる。
「!!」
手は硬いそれにしっかり触れた。
(うぁああ・・・角がある・・・・やっぱりこれ・・・僕が創ったさっきまで遊んでいたキャラだ・・・)
いつまでも固まっている十夜にジンは心配そうに再び声をかけた。
「記憶が邪魔なら消してやれるが、どうする?」
「えっと・・・・」
「闇に呑まれたのは・・・・消して欲しい・・・あれは・・・怖かった」
「分かった、元の人格はどうする?」
(・・・僕は白神十夜ですってこの姿でいうのもなぁ・・・けどなあ・・・)
「えっと・・・消すんじゃなくて、認識を変えたりとかは?」
「どういうことだ?」
困惑したように首をコテンと傾げるジン。
(うまく溶け込めるように・・・なるべくトラブルは避けたい)
「此処はあのゲームの世界・・・ですよね?」
「正確には、ゲームと呼ばれていた世界と別の異世界が混合した異世界」
「・・・・混沌としてますね、混ざり合った異世界ですか」
「そうだな、手を尽くしたが・・・器を持つ者達の魂を引き込み、現存する世界を維持する事しか出来なかった」
「?」
(言ってることの半分も分からないけれど、器を持つ者って、僕の他にもゲームプレイヤーが?・・・まぁ、この広いだろう混沌異世界で僕を知ってる人に出会うことは、そうそうないだろうし・・・)
「えっとジンさん、僕を、初めからこの姿のこの世界の“ゼノン”だったという認識に記憶を書き換える事って」
十夜が言い終える前にジンは静かに頷いた。
「・・・可能だ、それを望むなら」
ジンの手が十夜の額に触れた、仄かに熱を帯びて温かい。
十夜は静かに瞼を閉じた。
暗い水底に沈んでいくように十夜の意識はそこで途切れた。
***
**
*
*
「ん?」
「・・・気分はどうだ?」
「えっと、大丈夫です」
「そうか、後で持ち物を確認すると良い」
「・・・持ち物・・・」
そういえば自分が手ぶらなのに気付いてゼノンは一瞬焦って辺りを見回した。
「どこに・・・」
ゲーム世界の作り物だった記憶は今のゼノンからは失われている。
ゲーム内で取得した品等は自動で所持品扱いになっていた。何もないアイテムボックスという空間に入っている。
ならそのアイテムボックスの空間を自由に取り出し可能にしてやれば良いだけ。
「ゼノン、魔術書を出せ」
「魔術書ですか?」
ゼノンは何事もなかったように空間から出現した魔術書をジンに手渡した。
「・・・・空間魔法“アイテムボックス”だったか」
空白の書のページに手をかざして光で記していく。本を出してボックス内の物を取り出すのも、何もない空間からいきなり人前で取り出すのもまずいだろう。
適当なバックを購入したらそのバックとアイテムボックスとの空間を繋げたら良い。
“ゼノンが所持するバック“をアイテムボックスに繋ぐ。
「これでいい・・・」
本を閉じゼノンに返した。
「ジンさん?僕の持ち物は何処にあるのでしょう?」
「“アイテムボックス”と意識してみろ、人前では使うなよ」
言われたとおりにゼノンは素直に従う。
(アイテムボックス)
「!」
可視化のウインドウが目の前に現れてリスト一覧がズラリと並んでいる。
肉などのドロップ品から宝石類やら高級そうなボスドロップやら生活道具とか色々。
「これは?」
リストの中の1つを指でさすとその品がゼノンの前に出現した。
「ああ、先ほど倒した黒騎士が落とした物だろう」
「聖星のコート」
深い紺色の全体色に腰から下の方は星を鏤めたような光を纏って仄かに色鮮やかな水色がかっていた。
「これ、着てもいいの?」
「お前が倒したのだから良いに決まっている」
ゼノンは嬉しそうに聖星のコートに袖を通した。サイズは測ったようにぴったし。
腕は武器を振ったときに邪魔にならないように半袖タイプのようで、戦闘向きだ。
「体が軽くなったみたいだ・・・」
その場で嬉しそうにクルクル回るゼノンにジンは優しく微笑んだ。
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更新亀並で・・・すいませんorz
取り敢えず異世界での冒険がやっと開始です・・・。
応援ありがとうございます!
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