あの子の花に祝福を。

ぽんた

文字の大きさ
5 / 73

5.たんじょうび。

しおりを挟む
 僕が生まれてから3年が経った。その間に僕のお喋りは家族からも、乳母にも、使用人たちからも褒められるほど上手くなった。

「「「ルカリオン、誕生日おめでとう!」」」

 父に抱きかかえられながら広間に向かい、部屋に入ると家族からお祝いをされた。使用人たちも、顔には出さないようにしているが、どことなく嬉しそうだ。

「かあたま、とうたま、おにいたま、ありやとございましゅ!」

「はぁぁ~3年が経つのは早いねぇ!つい昨日のように思い出せるよ…あんなに小さかったのがもうこんなにおっきくなってしまった!」

 父はすりすりと僕に頬ずりしながらそんなことを言うが…顎にちょっとだけ生えてるヒゲが痛いです父様。

「クリス、ヒゲが痛そうだよ?…ふふっ…ふふふ…」

 かあさま、ありがとうございます、たすかりました…

「な、なんてことだ…!明日からはヒゲは全て剃るよ…」

「ルカ~、お兄様のところにおいで~お兄様はおヒゲなんて生えてないから!」

 おにいさまははえてない!いく!

「ああっ、ジークにルカが取られてしまったよぅ…、アレク慰めて…」

 シクシクと泣き真似をしながら母に近づく父。そんな父に苦笑しながらも母は父にぎゅっと抱きついた

「仕方ないなぁ、もう…やっぱりクリスは可愛いね」

「アレク…私には君のほうが可愛く思えて仕方ないよ…」

「父上、母上、イチャイチャするならルカのいないところでしてください!ルカの教育に悪いです!」

 そんな言葉に二人はばっ、と離れてほんのり赤くなった顔を手で仰いで冷ましていた。兄は胡乱な目で両親を見つめる。

「そんな目で見ないでくれ、ジーク。ルカの前でいがみ合う両親よりかはいいだろう?」

「母上…たしかにそうですがね、まだルカは赤子なのですよ!」

 ぷんぷんといった表現が正しそうな怒り方で兄は母を窘めた。

「最近ジークが強い…クリスににちゃったのかなぁ…」

「えぇっ、私はあんなに強くないよ…」

「強いよ?部下を鍛えている時なんかは特にね?部下が弱音を吐こうものなら理詰めで追い詰めていくじゃないか」

 とうさま、おこるとこわいんだぁ…おこらせないようにしよ…

「ああっ、ルカが遠い目をしてるよっ!もうこの話は終わりだ!さあパーティーの続きをするよ!ルカ、父様からのプレゼントは…これだ!これはルカの身を守ってくれる魔道具だよ、肌身はなさずつけておきなさい」

 そう言って渡してくれたのは、僕と同じ瞳の色のエメラルドがあしらわれたネックレスだった。

「わぁ~、とうたま、きれい~!ありやとございましゅ、とうたま!!」

 お礼にハグをすると、父の顔が一瞬で溶けてしまった。

「ふふ、喜んでもらえてよかったね、クリス?さぁ、母様からはこれだよ、これはルカの居場所を知らせてくれる魔道具。ルカは可愛いからね。万が一のことがあったらみんな悲しんじゃうから。それも肌身離さずつけておきなさい?」

 母がくれたのはイヤーカフだった。これもエメラルドが付いていて、静かな輝きを放ち、豪華さはないながらも、落ち着いたデザインだった。

「かあたまのもきれ~!!かあたまもありやとございましゅ!うふふふ!」

 母にもお礼にとぎゅっと抱きつく。母は抱きとめると頭を優しく撫でてくれた。

「ルカ~、お兄様はこれだよ!!まだ母上や父上みたいに魔法付与はあまりできないから1つだけしかつけられなかったけど…眠れない夜とかに気分を落ち着ける魔法を付与したんだ!」

 兄がくれたのは僕の身長の半分ほどの大きさのくまのぬいぐるみ。もふもふの毛が柔らかくて触り心地が良い。

「はわっ、はわわっ…おにいたま~!!!くまたん!くまたん~!!!おにいたまありやと~!!だいしゅき!!!」

「「「はぅあっ!!」」」

 なぜか家族も使用人たちも皆が胸を抑えて蹲るのだが。

「えっ、え…!み、みんな、どちたの…!!お、おいしゃたま!!」

 大慌てで医者を呼びに行こうとする僕を母が呼び止める。

「ま、まって、ルカ…違うの、これはみんなルカが可愛すぎるから悶えてるだけなの!だから大丈夫…!」

 もだえるがなにかわからないけど…かあさまが大丈夫っていうなら大丈夫だよね!

「ふぅ…ごめんね、ルカ…あまりにもルカが可愛すぎて…でも気に入ってもらえてよかった!あ、そうだ、ルイス、おいで。」

 母が使用人の中から一人の青年を呼び出す。

「ルカ、3歳になったらね、侍従を決めなきゃいけないの。だからね、母様たちが勝手に決めちゃったけど、ルカと一番相性が良さそうな人を侍従に決めたの。それがルイス。勝手に決めてごめんね」

 ルイス…?このひとがぼくのじじゅう…?になるひと…?すごくつめたそうだけど、瞳がとてもやさしい色をしてる…。このひとがいいな、このひとがじじゅう?がいい!

「るいしゅ、よろちくおねがいしましゅ?」

 紺色の長い髪を後ろで一つにくくった美しい青年は、こてっ、と首を傾けた可愛らしい幼子に胸をドキドキさせながらも表情を崩さず腰を折った。

「こちらこそよろしくお願いいたします、ルカリオン様。」

「るかでいいよ?るいしゅ!ね?」

「っ…はい、ルカ様。」

「えへへ、やったあ、るいしゅ、あちたからいっしょだね!」

「ふふ、ルカ、今日から、だよ?」

「そうなんでちたか!るいしゅ、きょうからよろちくね!へへへ!!」

「ぐっ、かわ…はい、よろしくお願いします、ルカ様。」

 こうして僕の誕生日パーティーは過ぎていった。ルイスはそれから毎日お世話をしてくれて、僕がやりたいと思ったことはすぐに用意してくれるし、何も言わなくても先回りして行動してくれていた。



 るいすはすごいなぁ、なんでもわかっちゃう!














 おそらくルカの顔に出やすいだけ。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...