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31.第一王子の話。
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「……様、ルカ様!もうそろそろ休憩なさってくださいませ!」
ルイスの声に集中が途切れた僕は、日が高くなっていることにようやく気づいた。
ぐぐっ、と体を伸ばして、意外と体がガチガチになってたんだなと自覚する。
「ルイス、ありがとう。僕結構集中してたんだね。」
「ええそうですよ。さ、もうお昼です。本日からは国王夫妻と食事をとる約束だったでしょう?」
そうだった、色々落ち着いたから、と一緒に食事をとることになったのだった。
「ミラもヴレーヒ様と来るのかな?」
「ええおそらくは。」
「じゃあ行こう!」
「はい、行きましょう。」
「ああ、来てくれてありがとう、ルカリオンくん。ささ、席に座ってくれ。」
王様に勧められるまま席に座るが、僕と国王夫妻しかおらず。
「あの…ミラとヴレーヒ様、それに、第一王子のイードル様もいらっしゃらないのは、何故でしょうか…?」
恐る恐る聞くと、夫妻はおかしそうな表情で語りだした。
「ミラくんね、ヴレーヒの愛情が過多だったみたいで、気絶しちゃったの。ヴレーヒは側について看病してるから…今は来れないみたい。」
わぁ、本当に運命だったんだ!よかったあ~!!
ふふ、愛情過多で気絶って、どんな事されたんだろ…?首にキスとか?考えすぎか~!
「イードルはね…ずっと病気なんだ。治らないの。」
「え……」
ぽつり、ぽつりと話し始めるフレディ様。
苦悩に満ちた表情で、少しずつ語ってくださった。
「むかーしね、魔力暴走が起きたんだよ。
元々有り余るほど魔力を持っていて、定期的に魔力を使わないといけなかったんだけど…。間に合わなくて。
その時の後遺症で、魔力を解放する器官が壊れてしまって。体に魔力を蓄積し続けるしかなくなったの。
今は魔力を吸う魔道具を側に置いてるけど、それもその場しのぎでしかなくて…。」
そこでふと、僕は考えた。
その器官を直せば良いんだよね?と。
僕、本で見たことある。魔力解放管の形。
あれは確か…解剖図の本だったっけ。学園に入る前に読んで、グロテスクでちょっとびっくりしたんだよね。
それで印象に残ってる。
壊れてるなら直せばいいじゃない。魔法はそのためにあるんだから。
「あの、直しましょうか?」
「「へ?」」
「んと…やったことはないですけど、僕魔力解放管の形、隅から隅まで覚えてますし、壊れたものを直すって、魔法の真髄じゃないですか。」
「いや、でも…出来たらこんなに悩んでなくて…身体の中は切らない限り見えないでしょう?」
えぇ…?できるんじゃないの?身体の中に目を作って、見ながら直せばいいだけじゃない。
「少々発言をよろしいでしょうか。」
と、ルイスが手を挙げた。
「あ、ああ…なんだね。」
「我が主のルカ様は、ご存知の通りあの天才夫婦の息子です。
魔法を理論立てて発動するのではなく、イメージだけで完璧に発動させることが出来る天才なのです。
ルカ様が治った姿をイメージしただけで、治ります。
これは私の命に誓って真実です。
それから…この話は、どうかここだけで留めておいてください。もう、ルカ様が狙われるのはご勘弁願いたいのです。」
はえ…?僕が、天才…?何を言ってるんだ、ルイスは。僕は至って凡人で、お兄様にも手が届かないんだぞ?
「なるほど…わかった。私達も、ここだけの話しに留まらせることを誓おう。皆、今ここで箝口令を敷く。この件を口に出したものは即刻首をはねられると覚悟しろ。」
ええ…?!首はねられちゃうの…?!
「ではルカリオンくん。頼んでもいいだろうか、イードルのことを。」
「は…はい。お任せください。」
先ずは食事だと言われ、フレディ様やルーベン様が沢山の話題を振ってくれて、とても楽しい食事会になったと思う。
「ルイス…僕は、天才じゃないよ?
母様達のように、一つの物体に許容量を超えた魔法陣を組み込める訳では無いし、頭の回転が速いわけでもない。」
イードル様の部屋へ向かう途中、小声でルイスに抗議をした。だけどルイスは首を振って。
「いいえ、ルカ様は紛う事なき天才です。
貴方は誰もが想像した魔法を繰り出せると勘違いしていますが、それを出来るのは一握りの者のみ。
その他大勢は頭の中で構築してやっと魔法を使える。ルカ様のそれは他人から見ればとても有利なんですよ。」
とても真剣な眼差しで説明されてしまった。
でも多分、この世界の人も、やろうと思えば出来ることだと思う。
僕は、前世で魔法使いの絵本を読んだ時、呪文を唱えて発動するのがスタンダードだと思い込んでいたからこの世界に来た時理論なんてものをすっ飛ばしてでも使えた。
『水よ!』と唱えたら出てくるし、それが火だとしても同じ事。
おそらく、根底にある考えが重要なのだろう。
基礎から学ぼうとするから難しいんじゃないのかな。みんなの頭の中に、魔法は想像だけでできる!というのを刷り込むのだ。
「さぁ、ここがイードルの部屋です。イードル、開けますよ。」
着いたみたい。金の装飾がふんだんにあしらわれた豪華な扉が目の前にある。
ガチャリと開くと。
ベッドに座り、本を読む…………兄さんがいた。
ルイスの声に集中が途切れた僕は、日が高くなっていることにようやく気づいた。
ぐぐっ、と体を伸ばして、意外と体がガチガチになってたんだなと自覚する。
「ルイス、ありがとう。僕結構集中してたんだね。」
「ええそうですよ。さ、もうお昼です。本日からは国王夫妻と食事をとる約束だったでしょう?」
そうだった、色々落ち着いたから、と一緒に食事をとることになったのだった。
「ミラもヴレーヒ様と来るのかな?」
「ええおそらくは。」
「じゃあ行こう!」
「はい、行きましょう。」
「ああ、来てくれてありがとう、ルカリオンくん。ささ、席に座ってくれ。」
王様に勧められるまま席に座るが、僕と国王夫妻しかおらず。
「あの…ミラとヴレーヒ様、それに、第一王子のイードル様もいらっしゃらないのは、何故でしょうか…?」
恐る恐る聞くと、夫妻はおかしそうな表情で語りだした。
「ミラくんね、ヴレーヒの愛情が過多だったみたいで、気絶しちゃったの。ヴレーヒは側について看病してるから…今は来れないみたい。」
わぁ、本当に運命だったんだ!よかったあ~!!
ふふ、愛情過多で気絶って、どんな事されたんだろ…?首にキスとか?考えすぎか~!
「イードルはね…ずっと病気なんだ。治らないの。」
「え……」
ぽつり、ぽつりと話し始めるフレディ様。
苦悩に満ちた表情で、少しずつ語ってくださった。
「むかーしね、魔力暴走が起きたんだよ。
元々有り余るほど魔力を持っていて、定期的に魔力を使わないといけなかったんだけど…。間に合わなくて。
その時の後遺症で、魔力を解放する器官が壊れてしまって。体に魔力を蓄積し続けるしかなくなったの。
今は魔力を吸う魔道具を側に置いてるけど、それもその場しのぎでしかなくて…。」
そこでふと、僕は考えた。
その器官を直せば良いんだよね?と。
僕、本で見たことある。魔力解放管の形。
あれは確か…解剖図の本だったっけ。学園に入る前に読んで、グロテスクでちょっとびっくりしたんだよね。
それで印象に残ってる。
壊れてるなら直せばいいじゃない。魔法はそのためにあるんだから。
「あの、直しましょうか?」
「「へ?」」
「んと…やったことはないですけど、僕魔力解放管の形、隅から隅まで覚えてますし、壊れたものを直すって、魔法の真髄じゃないですか。」
「いや、でも…出来たらこんなに悩んでなくて…身体の中は切らない限り見えないでしょう?」
えぇ…?できるんじゃないの?身体の中に目を作って、見ながら直せばいいだけじゃない。
「少々発言をよろしいでしょうか。」
と、ルイスが手を挙げた。
「あ、ああ…なんだね。」
「我が主のルカ様は、ご存知の通りあの天才夫婦の息子です。
魔法を理論立てて発動するのではなく、イメージだけで完璧に発動させることが出来る天才なのです。
ルカ様が治った姿をイメージしただけで、治ります。
これは私の命に誓って真実です。
それから…この話は、どうかここだけで留めておいてください。もう、ルカ様が狙われるのはご勘弁願いたいのです。」
はえ…?僕が、天才…?何を言ってるんだ、ルイスは。僕は至って凡人で、お兄様にも手が届かないんだぞ?
「なるほど…わかった。私達も、ここだけの話しに留まらせることを誓おう。皆、今ここで箝口令を敷く。この件を口に出したものは即刻首をはねられると覚悟しろ。」
ええ…?!首はねられちゃうの…?!
「ではルカリオンくん。頼んでもいいだろうか、イードルのことを。」
「は…はい。お任せください。」
先ずは食事だと言われ、フレディ様やルーベン様が沢山の話題を振ってくれて、とても楽しい食事会になったと思う。
「ルイス…僕は、天才じゃないよ?
母様達のように、一つの物体に許容量を超えた魔法陣を組み込める訳では無いし、頭の回転が速いわけでもない。」
イードル様の部屋へ向かう途中、小声でルイスに抗議をした。だけどルイスは首を振って。
「いいえ、ルカ様は紛う事なき天才です。
貴方は誰もが想像した魔法を繰り出せると勘違いしていますが、それを出来るのは一握りの者のみ。
その他大勢は頭の中で構築してやっと魔法を使える。ルカ様のそれは他人から見ればとても有利なんですよ。」
とても真剣な眼差しで説明されてしまった。
でも多分、この世界の人も、やろうと思えば出来ることだと思う。
僕は、前世で魔法使いの絵本を読んだ時、呪文を唱えて発動するのがスタンダードだと思い込んでいたからこの世界に来た時理論なんてものをすっ飛ばしてでも使えた。
『水よ!』と唱えたら出てくるし、それが火だとしても同じ事。
おそらく、根底にある考えが重要なのだろう。
基礎から学ぼうとするから難しいんじゃないのかな。みんなの頭の中に、魔法は想像だけでできる!というのを刷り込むのだ。
「さぁ、ここがイードルの部屋です。イードル、開けますよ。」
着いたみたい。金の装飾がふんだんにあしらわれた豪華な扉が目の前にある。
ガチャリと開くと。
ベッドに座り、本を読む…………兄さんがいた。
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