あの子の花に祝福を。

34.怖いよゼイン。※

　ぬるりと口内に入る彼の舌。
　まるで別の生き物かのように動き回り、どんどん呼吸が出来なくなっていく。

　怖い。目の前のゼインが、ゼインじゃないみたい。
　恐ろしい。今までこんな風になることは無かったから、どう対応すれば良いのかわからない。

「んっ、はふ……んぅ……」

「ふっ……可愛い、早くこうしてれば良かった…。」

　腕は片手で拘束され、もう片方の手で寝間着のワンピースをたくし上げられ。
　胸の飾りをくにくにと揉まれる。

　嫌だ、こんなのゼインじゃない。
　心が苦しくて、辛くて、彼に触れられてるはずなのに、そこはどんどん冷えていった。

　胸を触り飽きたのか、今度は下着を下ろし始めるゼイン。

　口づけは既に終わっていて、胸を舐め始める。

　下着を下ろし終わると、何故か僕のおちんちんを触り始めて。

「ふふ、可愛い、ルカの可愛い分身だね。まだ精通はしてないんでしょう？今日はできるかな。やってみようか。」

　再び胸を舐めるぴちゃぴちゃという音が耳を犯し、おちんちんをくちくちといじめられ、悲しさと恥ずかしさでとうとう僕は泣き出してしまった。

「いや…怖い…あうっ…やめて…！嫌だぁっ！」

「泣く顔も可愛いなんて…。でもごめんね、やめてあげられない。ほら、ルカの可愛いおちんちん、少しずつ硬くなってきたよ。」

　僕の僕を触る手を止めないゼインは、拘束を手ではなく、どこから持ってきたのか柔らかな布に変えた。

　そして空いた手で足を大きく広げ、お尻の穴に何か冷たいものを塗り込むと、骨張った指を入れ始める。

　僕は得体のしれない行為で酷く怯え、只管涙を流し声にならない声を上げた。

「ひっく……いあ……や……あぁっ………んぅっ…」

「ここに…私のモノが入るんだよ。ふふ、まだ小さいね。私の指が3本入れば、一つになれるからね。」

　僕を見つめているはずの瞳は、どこか遠くを見ていて。
　そして何故だろう、目の前のゼインを、少しずつ兄さんだと認識し始めてしまった。
　おそらく、今日のイードル様の顔を見て思い出してしまったことと、過去あった誘拐事件の記憶が混ざってしまったのだと思う。

「やだ……ごめんなさ……あっ……いや……ゆるして…はっ……は……」

　頭の中が徐々に恐怖で埋め尽くされた僕は、過呼吸になってしまった。

「はっ、はっ、はっ、はっ」

　その間もゼインは僕を見ない。お尻の穴とおちんちんをずっと弄って、僕の変化には気が付かなかった。

「ひゅー、ひゅー、はっ、はっ、はっ」

　口の端からぶくぶくと泡を吹き始め、視界がどんどん暗くなる。

　辛い、怖い、苦しい、悲しい、嫌だ、助けて。

　ごめんなさい、ゼイン。

「っ……！ルカッ！！ルカッ！！！息を！！息をして！！」

　やっと、気づいてくれた…。

　ゼインの瞳に光が戻った時、僕は深い眠りへと堕ちていった。
























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　～ゼインSide～





　2週間も。
　今まで会えなくても1週間だったのに。
　政務に続き、城下町で起きた重大事件の魔道具鑑定。それにプラス、フースカ王国のゴタゴタを終わらせる手伝い。

　圧倒的にルカが足りなかった。

　日に日に己でも分かるほど機嫌が悪くなり、長年の付き合いであるロバートや兄上でさえ顔を青くするほど。

　王城では、『鬼神が再び降臨した』と言われているのも知っている。

　そしてやっと全てを終わらせて、護衛の代わりにジークフリードを連れてフースカへ転移したんだ。ちなみに馬車で行ってもよかったが、景色より何よりルカに会いたかった。

　やっとルカを補給できる…！

　そう、思っていたのに。

　現実では、ルカは私を避けてばかりだった。
　ジークフリードが何か泣いていたが、それは私には関係のない話だ。兄だろうとなんだろうと、弟と婚約者がいちゃつくくらい良いだろう。寛容になれ。

　なのに…ルカは私を突き放した。
　兄の心配をしたからかと思ったが、この国の第一王子を救ったという話を聞いて、

　(ああ、惚れたのか。だから私を避けるのか。)

　そう早合点してしまった。
　夕食時、イードル殿を見てみると、穏やかな優男という雰囲気。ルカはイードル殿と仲良く話している。隣に私がいるというのに。

　なぜ、なぜだ。私達は痣持ちの運命なのだろう？どうしてルカは私を見てくれないんだ。

　どうして。

　そうか、ルカを私のものにすればいいんだ。

　成人するまでと思って待っていたが、もう待つ必要はないな。

　そう思って、ルカの部屋を訪ねた。無防備に足が見えるワンピースを着て、小さな柔らかい手で私を掴む。

　もう、我慢ならなくて。この小さな体に、どれだけの罪を犯したのか、教えてやらねば気がすまない。

　なんて思ったのが間違いだった。

　ぷるぷると子鹿のように震えて謝り涙を零すルカ。
　謝るということは、やっぱりあの優男に惚れたんだね。
　盛大な勘違いをして、下半身を、私を受け入れられるようにと触っていたのが悪かった。

　我に返ったのは、ルカの呼吸がおかしいと気づいたから。
　まるで6年前の悪夢の時のように、諦めたような瞳をして、口から泡を吹くほど重症の過呼吸を起こしていたのだ。

　私は一体どれだけの恐怖をこの子に与えてしまったのか。

　慌ててこの子に服を着せて、医師を呼ぶ。いつの間にか冷え切った体を、私の体温を分けられるようにと抱き締めていた。

　そして医師の処置も、全て終わった時。騒ぎを聞きつけたジークフリードが私を目一杯殴った。もう一発殴ろうとする彼を、ルイスが全力で止めている。

「お前は何をしている！！ルカを傷つけないのならとお前に預けていたが…！！このっ……！クソ野郎！！ルカの前から消えろ！！お前なんか消えてしまえ！！」

　普段、礼儀正しく丁寧な言葉遣いの彼が荒ぶるほど、私は大きな罪を犯してしまった。

　感情に身を任せ、ルカの心を大いに傷つけた。
　私の半身を傷つけてしまった。

　眠るルカを彼らに任せて、私は部屋へと戻る。

　そして。

「ナナ、父上に伝えろ。ルカとの婚約を私の有責で破棄してくれと。」

「はっ……は？え、よろしいのですか？」

「黙れ。お前は何も言わずに命令だけ遂行していろ。」

「か、畏まりました。」

　私の影にそう伝えると、眠くもない体をベッドに入れて、無理矢理目を閉じた。