46 / 74
36.ゼインとの繋がり。
~ゼインSide~
あの子の苦痛に歪んだ顔が脳裏から離れない。
腕を縛られて、服を脱がされて、同意のない行為を行おうとした。
これではいくら婚約者だと言っても、運命であっても、ただの暴力以外の何物でもなかった。
わかってたんだ、ルカがイードル殿に気がないということは。ただ、私の嫉妬心が肥大化しただけ。
父上に婚約破棄の件を伝えたら、了解したとの返事だけ貰った。それをフースカ国王夫妻にも先日伝えたが…。
どれだけあの子を傷つけたら気が済むのか、あの子にかかる負担を考えなさいとか。
そんなの、私といるよりはマシだろう?
私があの子といれば、きっとまた体を壊すほどの負担をかける。
まさか、突発性難聴と魔力妨害症を併発するとは思っていなかったけど。
でも、私と離れていればきっと。きっと回復して、新しいルカを大切にしてくれる人と出会えば、またあの子は笑えるようになるはずだ。
と、たくさんの思考に耽っていると、ノックがされた。
扉を開けたのは、ジークフリード。
「アントス王国に着いたそうです、ルカ。………すみません、あのときは、やりすぎました。王族である貴方を殴るなど。処分は如何様にも。ただ、家族にはご容赦ください。」
そんなこと、するわけがないのに。
「いや、私が悪かった。此度は不問とする。………ルカは、どんな様子だった。」
ギリッと歯軋りをして、苦しそうにこちらを見る彼。
「都合のいい事を今から言います。
あのときは、ルカの前から消えてしまえと言いましたが…。どうか、あの子の側にいてあげてくださいませんか。
あのままでは、あの子はきっと………この世から消えてしまう。お願いします。どうか、あの子の側に…」
「もう、無理だよ。聞いただろう?婚約破棄の件を。父上からは既に了承の旨が伝えられた。
それに、きっとルカが辛いのは、今だけだよ。時間が経てばきっと…私といるより幸せになれるはずだ。」
「っ……!申し訳…ありませんでした…。」
なんの謝罪なのだろう。わからない。
ジークフリードは謝罪だけすると辞していった。
私は…この年にもなって一体何をしているんだろうね。
思えばよくあの子を怖がらせていた気がする。いつも醜い嫉妬ばかりして。
きっとあの子は我慢していたのだろう。
クリス殿とアレク殿に、合わせる顔がないな…。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから2週間ほど経って、お兄様も帰ってきた。
僕はまだ何も聞こえなくて、魔法も使えない。
火魔法を使おうとすると、手のひらからボフッていう感じの衝撃があって煙が出るだけだし、水魔法を使おうとすると、手のひらが湿るだけ。
それから…僕は、先週家に帰ってから微熱と怠さ、悪寒がずっと纏わりついていて、ベッドから出られていない。
只管、ゼインから貰った全てのものをかき集めて、ベッドの上に置いて。
ゼインから貰った服、ネックレス、腕輪、指輪、宝石、ペン、ぬいぐるみ。細かいものは箱に入れているけれど。
ゼインとの繋がりを感じられるものがないと、気が狂ってしまいそうだった。
なのに。
(無い……無い……!どこっ…!!やだっ!!ゼイン!ゼインのが…!!どこにあるの!!!)
彼から貰ったブローチが、どこにも無くなっていた。箱の中を見て心を落ち着けようと開けると、どこにも無くて。
悲鳴を上げる体を無視して、ベッドの下やシーツに絡まってないか入念に探した。けれど、いくら探せども無くて。
終いには、服に飾られていた宝石もいくつかなくなっていることに気づいて。
疑いたくはなかったけれど、この部屋に掃除しに来ていた使用人が…?あまり、見ない顔だった…。
ぺたりと絨毯の上に座り込んで服を抱きしめ、止まらない涙を流した。
すると、肩をぐいっと引っ張られる。そちらを向くと、父様がいて。
聞こえないからちゃんと話せているか不安だったが、ブローチと服の装飾が無くなったことを伝えると、今まで見たことのない怒りの形相で頷いて、僕の頭を撫でた。
そのままベッドまで運んでくれて、待ってなさい、というふうにもう一つ頭を撫でて部屋を出ていく。
彼から貰った服がぐしゃぐしゃになっても、抱き締めるのを辞められそうにはなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
~クリスSide~
ネロー殿下の魔法を解く仕事が終わった…と思えば、ゼイン殿が私の可愛い息子を泣かせたというではないか。
そして責任を感じたゼイン殿が婚約破棄を申し出て、それを聞いてしまったあの子が再び泣いて。
それが原因で耳も聞こえなくなるわ魔法も使えなくなるわ。
しかも運命不足で体調を崩している。
運命が離れるとどうなるのかあいつはわからんのか?!
最悪気が狂って死ぬんだぞ!!
ルカは死なないと思っているようだが……。
そして今日はあのクズから貰った贈り物がいくつか無くなっていたらしいし!
誰だこの屋敷にいる盗人は!
先程ルカの部屋を掃除したあの使用人。最近入った人間だ。まさかあいつか?
調べてみるとすぐに話し始めた。
「は、はい…私です!!弟の病の治療代がっ足りなくて…!!」
嘘だ。こちとら使用人を雇うときはすべて調べているんだよ。お前に弟がいないことも、お前が休みのたびに豪遊していることも、すべて知っているんだぞ。
自分の財布の範囲内で遊ぶのならと目を瞑っていたが…。
しかし服の装飾の方はまだ手を付けていなかったみたいだが、ブローチは既に売られてしまったのか…。
もう看過はできない。
「アレク、行くぞ。」
「わかったよ、クリス。」
「あ、あのっ…?!ちょ、やめてくださいっ!嫌だっ!!」
バタバタ暴れるのを拘束して、我が家の地下牢へと連れて行く。
最新の魔道具があるんだ。使えるような人間がいなかったから、こいつを実験台にしよう。
「ああ、リアス。ブローチの行方を追え。買い戻せるなら我が家の財産すべて使ってもいい。」
「御意」
影に潜んでいた腹心にそう命じると、アレクと共に魔道具を使用し始めた。
……ああ、いけないな。こんなに身体が飛び散るだなんて。改良の余地あり、か。
ああ、臭い。
あの子の苦痛に歪んだ顔が脳裏から離れない。
腕を縛られて、服を脱がされて、同意のない行為を行おうとした。
これではいくら婚約者だと言っても、運命であっても、ただの暴力以外の何物でもなかった。
わかってたんだ、ルカがイードル殿に気がないということは。ただ、私の嫉妬心が肥大化しただけ。
父上に婚約破棄の件を伝えたら、了解したとの返事だけ貰った。それをフースカ国王夫妻にも先日伝えたが…。
どれだけあの子を傷つけたら気が済むのか、あの子にかかる負担を考えなさいとか。
そんなの、私といるよりはマシだろう?
私があの子といれば、きっとまた体を壊すほどの負担をかける。
まさか、突発性難聴と魔力妨害症を併発するとは思っていなかったけど。
でも、私と離れていればきっと。きっと回復して、新しいルカを大切にしてくれる人と出会えば、またあの子は笑えるようになるはずだ。
と、たくさんの思考に耽っていると、ノックがされた。
扉を開けたのは、ジークフリード。
「アントス王国に着いたそうです、ルカ。………すみません、あのときは、やりすぎました。王族である貴方を殴るなど。処分は如何様にも。ただ、家族にはご容赦ください。」
そんなこと、するわけがないのに。
「いや、私が悪かった。此度は不問とする。………ルカは、どんな様子だった。」
ギリッと歯軋りをして、苦しそうにこちらを見る彼。
「都合のいい事を今から言います。
あのときは、ルカの前から消えてしまえと言いましたが…。どうか、あの子の側にいてあげてくださいませんか。
あのままでは、あの子はきっと………この世から消えてしまう。お願いします。どうか、あの子の側に…」
「もう、無理だよ。聞いただろう?婚約破棄の件を。父上からは既に了承の旨が伝えられた。
それに、きっとルカが辛いのは、今だけだよ。時間が経てばきっと…私といるより幸せになれるはずだ。」
「っ……!申し訳…ありませんでした…。」
なんの謝罪なのだろう。わからない。
ジークフリードは謝罪だけすると辞していった。
私は…この年にもなって一体何をしているんだろうね。
思えばよくあの子を怖がらせていた気がする。いつも醜い嫉妬ばかりして。
きっとあの子は我慢していたのだろう。
クリス殿とアレク殿に、合わせる顔がないな…。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから2週間ほど経って、お兄様も帰ってきた。
僕はまだ何も聞こえなくて、魔法も使えない。
火魔法を使おうとすると、手のひらからボフッていう感じの衝撃があって煙が出るだけだし、水魔法を使おうとすると、手のひらが湿るだけ。
それから…僕は、先週家に帰ってから微熱と怠さ、悪寒がずっと纏わりついていて、ベッドから出られていない。
只管、ゼインから貰った全てのものをかき集めて、ベッドの上に置いて。
ゼインから貰った服、ネックレス、腕輪、指輪、宝石、ペン、ぬいぐるみ。細かいものは箱に入れているけれど。
ゼインとの繋がりを感じられるものがないと、気が狂ってしまいそうだった。
なのに。
(無い……無い……!どこっ…!!やだっ!!ゼイン!ゼインのが…!!どこにあるの!!!)
彼から貰ったブローチが、どこにも無くなっていた。箱の中を見て心を落ち着けようと開けると、どこにも無くて。
悲鳴を上げる体を無視して、ベッドの下やシーツに絡まってないか入念に探した。けれど、いくら探せども無くて。
終いには、服に飾られていた宝石もいくつかなくなっていることに気づいて。
疑いたくはなかったけれど、この部屋に掃除しに来ていた使用人が…?あまり、見ない顔だった…。
ぺたりと絨毯の上に座り込んで服を抱きしめ、止まらない涙を流した。
すると、肩をぐいっと引っ張られる。そちらを向くと、父様がいて。
聞こえないからちゃんと話せているか不安だったが、ブローチと服の装飾が無くなったことを伝えると、今まで見たことのない怒りの形相で頷いて、僕の頭を撫でた。
そのままベッドまで運んでくれて、待ってなさい、というふうにもう一つ頭を撫でて部屋を出ていく。
彼から貰った服がぐしゃぐしゃになっても、抱き締めるのを辞められそうにはなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
~クリスSide~
ネロー殿下の魔法を解く仕事が終わった…と思えば、ゼイン殿が私の可愛い息子を泣かせたというではないか。
そして責任を感じたゼイン殿が婚約破棄を申し出て、それを聞いてしまったあの子が再び泣いて。
それが原因で耳も聞こえなくなるわ魔法も使えなくなるわ。
しかも運命不足で体調を崩している。
運命が離れるとどうなるのかあいつはわからんのか?!
最悪気が狂って死ぬんだぞ!!
ルカは死なないと思っているようだが……。
そして今日はあのクズから貰った贈り物がいくつか無くなっていたらしいし!
誰だこの屋敷にいる盗人は!
先程ルカの部屋を掃除したあの使用人。最近入った人間だ。まさかあいつか?
調べてみるとすぐに話し始めた。
「は、はい…私です!!弟の病の治療代がっ足りなくて…!!」
嘘だ。こちとら使用人を雇うときはすべて調べているんだよ。お前に弟がいないことも、お前が休みのたびに豪遊していることも、すべて知っているんだぞ。
自分の財布の範囲内で遊ぶのならと目を瞑っていたが…。
しかし服の装飾の方はまだ手を付けていなかったみたいだが、ブローチは既に売られてしまったのか…。
もう看過はできない。
「アレク、行くぞ。」
「わかったよ、クリス。」
「あ、あのっ…?!ちょ、やめてくださいっ!嫌だっ!!」
バタバタ暴れるのを拘束して、我が家の地下牢へと連れて行く。
最新の魔道具があるんだ。使えるような人間がいなかったから、こいつを実験台にしよう。
「ああ、リアス。ブローチの行方を追え。買い戻せるなら我が家の財産すべて使ってもいい。」
「御意」
影に潜んでいた腹心にそう命じると、アレクと共に魔道具を使用し始めた。
……ああ、いけないな。こんなに身体が飛び散るだなんて。改良の余地あり、か。
ああ、臭い。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
事なかれ主義の回廊
由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。