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38.ずっと一緒。
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とても幸せな夢を見た。
以前より痩せてしまったゼインが、僕を抱き締める夢。
ちょっと苦しい気がしたけれど、苦しいくらいに抱きしめてくれるのがうれしかった。
それに、夢の中だから声も聞こえるんだよ。
「ごめんね、ごめんね…ルカ、愛してるから…消えないで…。」
すごく具体的だし、何もゼインが謝ることなんてないのに…。でも、声が聞けるだけで幸せ。
夢の中くらい、良いよね?
そう思ってゼインにキスをした。
目が覚めると、頭が痛くて、目が霞んで、息がしにくい。
どうして…ここにいるんだろう。僕、湖にいたはずなのに。もしかして、それも夢だったのかな。
すると、視界に待ちわびていた人の顔が見えて。
パクパクと何か言っているみたいだったけど、ようやく会えたんだって実感して…。
ぽろぽろ、ぽろぽろと涙が止まらなかった。
手を握ってほしくって手を伸ばすと、直ぐにしっかりと握ってくれる。ゼインの冷えた大きな手が、とても気持ちよかった。
見ると、ゼインも涙を流してこちらを見ている。スリ…と顔を僕の手に寄って、大切だ、愛しいんだという声が聞こえてるように口づけをしている。
僕も彼に口づけをしたくて、握った手を引き寄せて彼の手の甲にキスをした。
ゼインはとても驚いたような顔をして、苦しそうに微笑む。そして手のひらを僕の瞼の上に置くと、急な眠気が襲ってきた。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
僕はやっぱり、湖にいたらしい。
それでそこに落ちちゃって、ゼインが助けてくれて。
高熱で、2日間目を覚まさなかったんだって。
あのとき目が覚めたのは、3日目の朝。
ゼインはずっと側にいて看病してくれたみたい。
でもまた僕は眠ってしまって、次に起きたのが次の日の朝。
ゼインに会えたから、難聴は治ったんじゃないかなって思ったんだけど、まだ治ってなかった。
でも、お医者さんが伝えてくれたのは、このままゼインと一緒にいれば徐々に治るだろうって。
それから…君達は話し合いが必要!って赤いペンで丸をつけられてた…。
ゼインは皆にコテンパンに怒られたらしい。ルイスにも怒られたし、お兄様は怒らなかったみたいだけど、父様と母様、それからこの騒動はお祖母様達にも伝わっていたみたいで…。
公爵家に、両祖父母が乗り込んできた。
「「この馬鹿孫がああああ」」
前王妃と前王がまずゼインを正座させて怒鳴り…、
「「可愛い孫を泣かすやつに孫を任せられるかアアア」」
目を三角にした母方のお祖母様達がお説教したそう。
隣で前王のお祖父様にムギュムギュ抱っこされている僕は、久しぶりにお祖父様達に会えて嬉しくて、そんな惨状は知らなかったよ…。
ちなみに、父様そっくりな前王は、ジョン様。ムキムキマッチョの王妃様はライオネル様。
母方の銀髪お祖父様は、チャールズ様。ピンクゴールドの髪のお祖母様は、パーシー様。
叱られ終わった時のゼイン…屍みたいだった…。
それから、ゼインは今まで離れていた分を取り戻すように、ずっと僕と一緒にいる。
学園は体調不良ということで、暫く休めるらしい。
だからずっと一緒。
お手洗い以外は全部一緒に過ごしてるんだ。もちろん、湯浴みも、寝るときもね。
何も聞こえないけれど、ずっと一緒にいられるのは…本当に、幸せ。
ある日、ふと真夜中に尿意で目が覚めた。今日もいつも通りゼインにがっしりと抱き締められながら寝ていた僕は、彼の腕を剥がそうと藻掻いていた。
どうしよう…力が強すぎて、外れない……!
「うう……ぜ、いん…はじゅし…て…」
あ、そうか…暫く声聞こえてなかったし、出してもなかったから、言葉がちょっと変になってるんだな……
えっ?
声が、聞こえる…?
「ぜっぜいん…!!おきぃてぇ!」
声が!!
ゆさゆさと揺らしていると、パチリと目を覚ましたゼイン。僕の剣幕に、
「どうしたのっ!何かあった?!」
久しぶりに聞こえるゼインの声。ずっと、聞きたかった…。
「きっ……きこえ、るぅ、の…!!ぜ、いんの!こえっ…!きこえぅ…!!」
ぼろぼろ涙を零してばかりいる僕。最近は泣いてばかりだ。
「ほんとに…?」
「ん…」
彼は、僕を壊れ物のように優しく抱いて、声を出しながら泣いていた。
「よかった……っ…!よかっ……た……!」
それから2人で抱き合って号泣して。
少し落ち着いてから、収まっていた尿意が再びぶり返してきた。
「あっ…あの、おたらい…いきたい…」
「うん、わかった。じゃあ暗いから途中までついていくね。」
「ん……」
尿意から解放されてベッドまで戻ると、再び抱き締められながら頬にキスを受けて眠る。
今までで、一番幸せな夜だった。
以前より痩せてしまったゼインが、僕を抱き締める夢。
ちょっと苦しい気がしたけれど、苦しいくらいに抱きしめてくれるのがうれしかった。
それに、夢の中だから声も聞こえるんだよ。
「ごめんね、ごめんね…ルカ、愛してるから…消えないで…。」
すごく具体的だし、何もゼインが謝ることなんてないのに…。でも、声が聞けるだけで幸せ。
夢の中くらい、良いよね?
そう思ってゼインにキスをした。
目が覚めると、頭が痛くて、目が霞んで、息がしにくい。
どうして…ここにいるんだろう。僕、湖にいたはずなのに。もしかして、それも夢だったのかな。
すると、視界に待ちわびていた人の顔が見えて。
パクパクと何か言っているみたいだったけど、ようやく会えたんだって実感して…。
ぽろぽろ、ぽろぽろと涙が止まらなかった。
手を握ってほしくって手を伸ばすと、直ぐにしっかりと握ってくれる。ゼインの冷えた大きな手が、とても気持ちよかった。
見ると、ゼインも涙を流してこちらを見ている。スリ…と顔を僕の手に寄って、大切だ、愛しいんだという声が聞こえてるように口づけをしている。
僕も彼に口づけをしたくて、握った手を引き寄せて彼の手の甲にキスをした。
ゼインはとても驚いたような顔をして、苦しそうに微笑む。そして手のひらを僕の瞼の上に置くと、急な眠気が襲ってきた。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
僕はやっぱり、湖にいたらしい。
それでそこに落ちちゃって、ゼインが助けてくれて。
高熱で、2日間目を覚まさなかったんだって。
あのとき目が覚めたのは、3日目の朝。
ゼインはずっと側にいて看病してくれたみたい。
でもまた僕は眠ってしまって、次に起きたのが次の日の朝。
ゼインに会えたから、難聴は治ったんじゃないかなって思ったんだけど、まだ治ってなかった。
でも、お医者さんが伝えてくれたのは、このままゼインと一緒にいれば徐々に治るだろうって。
それから…君達は話し合いが必要!って赤いペンで丸をつけられてた…。
ゼインは皆にコテンパンに怒られたらしい。ルイスにも怒られたし、お兄様は怒らなかったみたいだけど、父様と母様、それからこの騒動はお祖母様達にも伝わっていたみたいで…。
公爵家に、両祖父母が乗り込んできた。
「「この馬鹿孫がああああ」」
前王妃と前王がまずゼインを正座させて怒鳴り…、
「「可愛い孫を泣かすやつに孫を任せられるかアアア」」
目を三角にした母方のお祖母様達がお説教したそう。
隣で前王のお祖父様にムギュムギュ抱っこされている僕は、久しぶりにお祖父様達に会えて嬉しくて、そんな惨状は知らなかったよ…。
ちなみに、父様そっくりな前王は、ジョン様。ムキムキマッチョの王妃様はライオネル様。
母方の銀髪お祖父様は、チャールズ様。ピンクゴールドの髪のお祖母様は、パーシー様。
叱られ終わった時のゼイン…屍みたいだった…。
それから、ゼインは今まで離れていた分を取り戻すように、ずっと僕と一緒にいる。
学園は体調不良ということで、暫く休めるらしい。
だからずっと一緒。
お手洗い以外は全部一緒に過ごしてるんだ。もちろん、湯浴みも、寝るときもね。
何も聞こえないけれど、ずっと一緒にいられるのは…本当に、幸せ。
ある日、ふと真夜中に尿意で目が覚めた。今日もいつも通りゼインにがっしりと抱き締められながら寝ていた僕は、彼の腕を剥がそうと藻掻いていた。
どうしよう…力が強すぎて、外れない……!
「うう……ぜ、いん…はじゅし…て…」
あ、そうか…暫く声聞こえてなかったし、出してもなかったから、言葉がちょっと変になってるんだな……
えっ?
声が、聞こえる…?
「ぜっぜいん…!!おきぃてぇ!」
声が!!
ゆさゆさと揺らしていると、パチリと目を覚ましたゼイン。僕の剣幕に、
「どうしたのっ!何かあった?!」
久しぶりに聞こえるゼインの声。ずっと、聞きたかった…。
「きっ……きこえ、るぅ、の…!!ぜ、いんの!こえっ…!きこえぅ…!!」
ぼろぼろ涙を零してばかりいる僕。最近は泣いてばかりだ。
「ほんとに…?」
「ん…」
彼は、僕を壊れ物のように優しく抱いて、声を出しながら泣いていた。
「よかった……っ…!よかっ……た……!」
それから2人で抱き合って号泣して。
少し落ち着いてから、収まっていた尿意が再びぶり返してきた。
「あっ…あの、おたらい…いきたい…」
「うん、わかった。じゃあ暗いから途中までついていくね。」
「ん……」
尿意から解放されてベッドまで戻ると、再び抱き締められながら頬にキスを受けて眠る。
今までで、一番幸せな夜だった。
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