もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

文字の大きさ
444 / 538
五年後

閑話休題 ゲイルと公爵10

幸せそうに、泣きそうな表情で笑ったフィオに、俺も泣きそうになっちまった。

「……ゲイル、ありがとう。愛している。
あなたに会った日から私の心に光が射した。
灰色だった毎日に、初めて彩を感じた。
生まれて初めて、生きていることに感謝した。
ゲイルは私の光だ。希望だ。
あなたに愛する人ができた時、自分がどうなるのか怖かった。あなたの幸せのためには、私は友であるべきなのだと想いながら……あなたが欲しくてたまらなかった」

ぎゅ、と両手を握られる。
フィオの瞳が切なげに細められた。

「エリアナが私の手を取り共に歩むと言ってくれたとき……それならばずっとあなたと繋がっていられると思ってしまった。
求めるものとは違う形ではあるが、それでもあなたと生涯共に居る約束が手に入るのだと。
エリアナは私があなたを愛していることを知っていた。
それでもなお『お互い同じ人を愛するもの同士、あなたは最高の友であり一番の理解者。だから共にあるべき』だと言ってくれたんだ。
………私はそれにすがった」

お互いに愛し合って結婚したのだと。
俺は選ばれなかったのだと、そう思っていたのに。
二人は……二人とも俺を……愛してくれていた。
先ほどまでの言葉から「もしかして」とは思ったが、こうしてはっきりと語られて感じたのは……喜びだ。

どうしよう。
本当ならば「なんてことしたんだ」と言うべきなんだろう。
なのに、俺は……嬉しい。
俺の愛する二人が、俺をそこまで愛してくれていたことが。
選ばれなかったのではなく、二人とも俺を選んだ結果だったことが。
喜んじまったらダメなことなんだろうに、嬉しいんだ。

本当はあのままずっと三人で居たかった。
幸せな楽園のような関係で居たかった。
でもエリアナも適齢期。とっくに結婚してもおかしくない年齢だった。
フィオだってそうだ。婚約者がいないのがおかしいくらいで。
楽園の終わりは迫っていた。

だからお前たちは決断したのか。
俺たちの楽園を護るために……。

だから俺は祝福した。
俺の大切な二人が結婚するならば、それを側で支えていこうと。

「あなたはエリアナを選べない。そして、だからこそ私も選べなかった。だろう?
私たちにはそれが分かっていた。
だから、あなたと共に居られる唯一の道を選んだ」


「彼女は私に私の知らないゲイルの話をしてくれた。私たち夫婦を繋いでいたのはゲイルだ。
お互いに同じ人を特別に想っていたからこそ、エリアナは一番の理解者であり、親友であり、私を受け入れ育ててくれる母のような存在だった。
私は、当たり前のようにゲイルの傍に居る権利を得て、自分には手に入らぬものだと思っていた家族の愛を手に入れた。
そして……エリアナを失った。
私の幸せは全て掌から零れ落ちてゆくのだと思った。私は自分の幸せのために彼女を犠牲にしたのではないか、そう思ってしまった。
何もかも拒絶し、閉じこもった私を……
ゲイルが引っ張り出してくれた。
サフィラスが頬を叩き目を覚まさせてくれた。
動くのをやめた私の心を、もう一度動かしてくれたんだ。

ありがとう。ゲイル。
サフィラスを救ってくれて。私を救ってくれて。

愛している……愛しているんだ!
間違いばかりを犯してしまう。
私は……周りを不幸にする存在なのかもしれない。
それでも、もう手放したくない。私はあなたが欲しい。
もういいか?
この……罪を犯した手で………あなたに触れてもいいか?」

「もう触れてるくせに何言ってやがる。
愚問だ。
罪を犯さねえ人間なんていねえ。……いるかもしれねえが、稀だ。
俺だっていくつもの罪を犯した。
俺とお前、償いながら生きようぜ?」

ギュッとフィオの手を握りかえした。
冷たい手に俺の体温が移る。
そうだ、俺はずっとこうしてお前を温めてやりたかったんだ。

そっと手を離し……ああ、絶望的な顔すんな。そうじゃねえよ。
フィオの身体に手を回して引き寄せる。

「……俺はずっとお前をこうして温めてやりたいと思っていた。
……あったかいだろ?」





そこからはお互いタガが外れたように求めあった。
フィオの身体に熱が移り、その熱がさらに俺を煽る。
お前、こんな熱を隠してやがったのか。
そうだ。フィオ。もっと寄越せ。もっとだ。
俺から熱を奪え。俺に熱を寄越せ。


俺を求める相手に、慰めを与える。
それが俺のセックスだった。
それなりに気持ちはいいが、心はどこか冷めていた。
俺のセックスは、同じ愛を返してやれない後ろめたさとセットだった。

あたまが馬鹿になっちまう。
フィオの鼓動を身の内に感じる。
お前も俺を感じてんのか?感じてるんだよな?
だってそんなにも幸せそうなんだから。

愛し愛される相手とすると、こんなにいいものなんだな。
下だとか上だとか関係ねえ。
今俺はフィオに抱かれてるが、フィオを抱いている。

エリアナ、ごめんな。
俺の愛をフィオにやることを許してくれ。
俺とフィオでサフィに償い続けるから。愛し続けるから。
お前の息子たちを愛し守り続けるから。








ああ。なんだかとてもいい夢を見た気がする。


二人でドロドロに溶けあって、想いをぶつけ合い、気付けば……




ドガンという胸の衝撃で目が覚めた。

「わあああああっ!!な、なんだなんだ?!って、サフィイイイイイイ!!!」

とっさに愛しい息子を胸に抱き込む。

「ゲイル!こいつ確保しとけっ!俺が話をつけてきてやる!
てか、おい、宰相、ゲイル、服を着ろ!サフィの教育に悪いだろうが!!」


「……公爵、どうしてゲイルといるの?どうして二人ともはだかんぼ?」


いやいやいや!どうしてこうなった?!

感想 892

あなたにおすすめの小説

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。