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東の国
いってらっしゃい
翌朝。
遂にゲイル出発です。
「バースに寄るから、東国に付くまで3日から5日、そっから向こうで情報を集めて……そうだな、帰りは転移してくっから、多く見積もって10日ってとこか?まあ、2週間くらいだと思ってろ」
2週間!
ゲイルがギルトか邸に居るってわかってれば平気だけど、会えないって思うと……胸がぎゅうっとなる。
情けない。俺もう大人なのに。
でもゲイルを心配させぬよう、笑顔で!笑顔で送り出すのだ!
「ちゃんとお仕事するし、野菜だって食べるし、課題だってやるから!安心して行ってきて!」
決意を胸に堂々と宣言したというのに。
ゲイルは俺のほっぺを両手で挟んでぎゅむッ。
「いいか、サフィ。大人しく待ってるんだぞ?俺のいない間に余計なことをするなよ?
ミカエルとカミールのいうことをよく聞くんだぞ?
どこかに出かけるときは必ず誰か連れて行け。あと、行き先をきちんと伝えてから行くようにな?
お前の得意なホウ・レン・ソウだ」
「ほい(はい)」
「寝る前にはちゃんとクリーンしろよ?
レオンには、嫌なことは嫌だというように。いいか?」
「ふわい(はーい)」
延々と子供に留守番をさせるような注意を垂れ流すゲイル。
「あーー!心配だ。やっぱ紐付けてリオに持たせとくか……」
「や、やめてってば!!大丈夫だって!!俺もうおとな!
四方八方から「じとーー」という視線が……。
ち、ちゃんといい子にしてるし!俺、いい子ですし!!
「まあ、確かにいい子だ。それは間違いない」
ほっぺムギュから頭ワシワシッツに移行しました。
「マジで、大人しくしてろよ?
あと……あー、フィオを見ててやってくれ。アイツ目を放すとぶっ倒れるまで無理しやがるから」
ちょっと照れながらのゲイルに俺は「うん。任せて」と胸を叩いて見せる。
頼りにして貰えたのがちょっと嬉しい。最近公爵と仲良しだもんね。ゲイル。
大丈夫。ゲイルの代わりに俺がしっかりと見とくから。
俺をワシワシしながら、ゲイルは今度はみんなに向かって行ってきますの挨拶。
「レオン、キース、ミカ、サフィを頼む。目を離すなよ?
大人しくしているからと油断するな。一番ヤベエ」
……行ってきますの、挨拶……?
「そこに居ると思って一瞬でも目を放したら終わりだ。特に忙しいときほどやらかす。
誰か必ずひとりは目を放さないように分担しとけ。でないと後から大変なことになるからな?」
挨拶……じゃないじゃん!なにそれ!俺のこと危険物みたいにっ!!
ぶう、と頬を膨らませていると、ぎゅうっとその頬を胸に押し付けられた。
「おう!俺とミカでしっかり監視……ごほん、おもり……じゃねえ、ああー、見守っとくからまかせとけ!」
「野菜も食べさせるし、サボらせねえよ!ちゃんと躾けとくからさ!」
キース、俺「監視」だの「おもり」だのって言葉、しっかりと聞いたから!俺のことなんだと思ってるの!相棒のくせに!!
ふ、とゲイルが笑う気配がした。
「俺の宝を、お前らに預ける。頼んだぞ」
「無論。私の宝でもあるんだからね」
ダメ!それダメ!
耐えてた涙がジョバーっと溢れ出た。
次々と出てくる涙と鼻水を慌ててゲイルの上着に吸わせる。
次に顔を上げた時には笑顔でいなきゃだから!早く早く!
ぐりぐりぐりーっと顔を押し付けて。
小さな声で「クリーン」して。
俺は笑顔で顔を上げた。
「いってらっしゃい、ゲイル!」
みんなに見送られ、公爵に何やら水色の石のついたブローチを付けられ、パパからは大量の食料やら薬やらを持たされ、俺の涙と鼻水をしこたま上着につけたままゲイルは出発した。
その日はみんなが俺に優しかった。
クマさんはアップルパイを何種類も焼いてくれたし、ミカミカも「……あー、俺で良ければ抱っこしてやるぞ?ミカママのところにおいで。ほら!」って撫でてくれた。
レオンは黙って傍に居てくれた。
キースは、俺に「冒険者時代の面白い話」を沢山聞かせてくれた。
レオとミカミカは「考える時間が無い方がいいでしょ?」とたくさんの課題を並べ「どれにする?」と言った。鬼だ。
なんというか……俺はなんだかとても情けなかった。
ツエエとかいいながら、ゲイルが居ないというだけで俺はこんなにダメになる。
いっぱしの大人になったつもりでいても、思っていた以上に俺はゲイルに依存していた。
俺の生い立ちのせいなんだろうけど、そんなことを言っていたらいくつになってもこのまんまじゃん。
レオンと結婚しても、ゲイルに依存し続けるのか?
それってばなんか違う。
一人で立てるようにならないと。
甘えたっていい、でも、それは一人で立てるようになったうえでの話だ。
だって俺は、大切なみんなを護りたい。
レオンも、ゲイルも、キースもミカミカも、リオも公爵も、チームサフィのみんなも、生徒会のみんなも。
ティガマリや、エリアス、パパもお母様も、王城のみんなも。
王国のみんなだって、帝国も、リンロンだって。
俺の周りの全てを護りたいと思ってるんだから。
ゲイルに甘えて泣いてる俺じゃあ、役に立たない。
みんなに頼って貰えない。
俺は「サフィなら大丈夫」だって思ってもらえるようになりたい。
そこからの俺は、自分でいうのもあれだけれど、とってもとっても頑張った。
苦手な試着だって何度も何度も文句ひとつ言わずにやったし、この機会にとばかりにクマさんが野菜をもりもりで 出してくるのもぺろりと平らげた。
公爵にだって優しく「ごはんちゃんと食べて!それ以上細くなったらゲイルが心配するじゃん!」と声をかけたし、たまにヒールもかけてやっている。
俺にしたらものすごい譲歩。でしょ?
リオとミカミカが色々な書類を差し出して「ここにサインして」だの言うのにも速やかにサインしているし、同じような色の布を出されて「こっちとこっち、どっちがいい?」なんてクイズみたいなことを言われても「同じじゃん」などと言わず神妙な表情で適当な方を指さしている。
朝からレオンが「おはよう」って大人のチュウをぶちかましてきても、10秒はボカンとならずに耐えている。
セイツーだって大丈夫。俺のオレが元気な時にはちゃんとレオンにやってもらってる。
とてもとても、頑張っていると思うのだ。
なのに……
なのに……………!
10日過ぎても連絡ひとつこないって、どういうこと?!
向こうに付いてお宿をとったら、いつだってルーダとか呼んで伝言できるでしょ?!
試しにルーダを呼んで「ゲイルから連絡ない?」と聞いてみたのだけれども「まだ呼ばれておらぬのだ。呼ばれさえすればマークできるのだがなあ……」と言われてしもうた。
ルーダが勝手にいくこともできるんだけど、一応聖獣としての制約みたいなもので、東国はルーダの「範囲外」なのだそうな。だから聖女からの要請に応えて、じゃないとダメらしい。
げ、ゲイル、ゲイル!
どうなってるの?!
遂にゲイル出発です。
「バースに寄るから、東国に付くまで3日から5日、そっから向こうで情報を集めて……そうだな、帰りは転移してくっから、多く見積もって10日ってとこか?まあ、2週間くらいだと思ってろ」
2週間!
ゲイルがギルトか邸に居るってわかってれば平気だけど、会えないって思うと……胸がぎゅうっとなる。
情けない。俺もう大人なのに。
でもゲイルを心配させぬよう、笑顔で!笑顔で送り出すのだ!
「ちゃんとお仕事するし、野菜だって食べるし、課題だってやるから!安心して行ってきて!」
決意を胸に堂々と宣言したというのに。
ゲイルは俺のほっぺを両手で挟んでぎゅむッ。
「いいか、サフィ。大人しく待ってるんだぞ?俺のいない間に余計なことをするなよ?
ミカエルとカミールのいうことをよく聞くんだぞ?
どこかに出かけるときは必ず誰か連れて行け。あと、行き先をきちんと伝えてから行くようにな?
お前の得意なホウ・レン・ソウだ」
「ほい(はい)」
「寝る前にはちゃんとクリーンしろよ?
レオンには、嫌なことは嫌だというように。いいか?」
「ふわい(はーい)」
延々と子供に留守番をさせるような注意を垂れ流すゲイル。
「あーー!心配だ。やっぱ紐付けてリオに持たせとくか……」
「や、やめてってば!!大丈夫だって!!俺もうおとな!
四方八方から「じとーー」という視線が……。
ち、ちゃんといい子にしてるし!俺、いい子ですし!!
「まあ、確かにいい子だ。それは間違いない」
ほっぺムギュから頭ワシワシッツに移行しました。
「マジで、大人しくしてろよ?
あと……あー、フィオを見ててやってくれ。アイツ目を放すとぶっ倒れるまで無理しやがるから」
ちょっと照れながらのゲイルに俺は「うん。任せて」と胸を叩いて見せる。
頼りにして貰えたのがちょっと嬉しい。最近公爵と仲良しだもんね。ゲイル。
大丈夫。ゲイルの代わりに俺がしっかりと見とくから。
俺をワシワシしながら、ゲイルは今度はみんなに向かって行ってきますの挨拶。
「レオン、キース、ミカ、サフィを頼む。目を離すなよ?
大人しくしているからと油断するな。一番ヤベエ」
……行ってきますの、挨拶……?
「そこに居ると思って一瞬でも目を放したら終わりだ。特に忙しいときほどやらかす。
誰か必ずひとりは目を放さないように分担しとけ。でないと後から大変なことになるからな?」
挨拶……じゃないじゃん!なにそれ!俺のこと危険物みたいにっ!!
ぶう、と頬を膨らませていると、ぎゅうっとその頬を胸に押し付けられた。
「おう!俺とミカでしっかり監視……ごほん、おもり……じゃねえ、ああー、見守っとくからまかせとけ!」
「野菜も食べさせるし、サボらせねえよ!ちゃんと躾けとくからさ!」
キース、俺「監視」だの「おもり」だのって言葉、しっかりと聞いたから!俺のことなんだと思ってるの!相棒のくせに!!
ふ、とゲイルが笑う気配がした。
「俺の宝を、お前らに預ける。頼んだぞ」
「無論。私の宝でもあるんだからね」
ダメ!それダメ!
耐えてた涙がジョバーっと溢れ出た。
次々と出てくる涙と鼻水を慌ててゲイルの上着に吸わせる。
次に顔を上げた時には笑顔でいなきゃだから!早く早く!
ぐりぐりぐりーっと顔を押し付けて。
小さな声で「クリーン」して。
俺は笑顔で顔を上げた。
「いってらっしゃい、ゲイル!」
みんなに見送られ、公爵に何やら水色の石のついたブローチを付けられ、パパからは大量の食料やら薬やらを持たされ、俺の涙と鼻水をしこたま上着につけたままゲイルは出発した。
その日はみんなが俺に優しかった。
クマさんはアップルパイを何種類も焼いてくれたし、ミカミカも「……あー、俺で良ければ抱っこしてやるぞ?ミカママのところにおいで。ほら!」って撫でてくれた。
レオンは黙って傍に居てくれた。
キースは、俺に「冒険者時代の面白い話」を沢山聞かせてくれた。
レオとミカミカは「考える時間が無い方がいいでしょ?」とたくさんの課題を並べ「どれにする?」と言った。鬼だ。
なんというか……俺はなんだかとても情けなかった。
ツエエとかいいながら、ゲイルが居ないというだけで俺はこんなにダメになる。
いっぱしの大人になったつもりでいても、思っていた以上に俺はゲイルに依存していた。
俺の生い立ちのせいなんだろうけど、そんなことを言っていたらいくつになってもこのまんまじゃん。
レオンと結婚しても、ゲイルに依存し続けるのか?
それってばなんか違う。
一人で立てるようにならないと。
甘えたっていい、でも、それは一人で立てるようになったうえでの話だ。
だって俺は、大切なみんなを護りたい。
レオンも、ゲイルも、キースもミカミカも、リオも公爵も、チームサフィのみんなも、生徒会のみんなも。
ティガマリや、エリアス、パパもお母様も、王城のみんなも。
王国のみんなだって、帝国も、リンロンだって。
俺の周りの全てを護りたいと思ってるんだから。
ゲイルに甘えて泣いてる俺じゃあ、役に立たない。
みんなに頼って貰えない。
俺は「サフィなら大丈夫」だって思ってもらえるようになりたい。
そこからの俺は、自分でいうのもあれだけれど、とってもとっても頑張った。
苦手な試着だって何度も何度も文句ひとつ言わずにやったし、この機会にとばかりにクマさんが野菜をもりもりで 出してくるのもぺろりと平らげた。
公爵にだって優しく「ごはんちゃんと食べて!それ以上細くなったらゲイルが心配するじゃん!」と声をかけたし、たまにヒールもかけてやっている。
俺にしたらものすごい譲歩。でしょ?
リオとミカミカが色々な書類を差し出して「ここにサインして」だの言うのにも速やかにサインしているし、同じような色の布を出されて「こっちとこっち、どっちがいい?」なんてクイズみたいなことを言われても「同じじゃん」などと言わず神妙な表情で適当な方を指さしている。
朝からレオンが「おはよう」って大人のチュウをぶちかましてきても、10秒はボカンとならずに耐えている。
セイツーだって大丈夫。俺のオレが元気な時にはちゃんとレオンにやってもらってる。
とてもとても、頑張っていると思うのだ。
なのに……
なのに……………!
10日過ぎても連絡ひとつこないって、どういうこと?!
向こうに付いてお宿をとったら、いつだってルーダとか呼んで伝言できるでしょ?!
試しにルーダを呼んで「ゲイルから連絡ない?」と聞いてみたのだけれども「まだ呼ばれておらぬのだ。呼ばれさえすればマークできるのだがなあ……」と言われてしもうた。
ルーダが勝手にいくこともできるんだけど、一応聖獣としての制約みたいなもので、東国はルーダの「範囲外」なのだそうな。だから聖女からの要請に応えて、じゃないとダメらしい。
げ、ゲイル、ゲイル!
どうなってるの?!
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表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!