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東の国
ゲイルの行方
不安を抱えながらも、約束の日は二週間。
とにかくその日を待つことにした。
はあっ………。
ドムッとレオンのベッドにダイブ。
レオンはリオとミカミカに捕まってたから、戻るまでもうしばらくかかるはず。
フカフカの布団に埋もれながら、俺の口から出るのはため息である。
だってどうしたって不安だ。
10日たっても連絡がないなんて絶対におかしい。
だってゲイルだもん。
そりゃ冒険者とかならホウレンソウしなくたって「あーあ。忘れると思った!」って流せるよ?
でも、ゲイルだよ?大事だから繰り返しました。
そう。ゲイルはあれでいてとてもきちんとしている。
綺麗好きなのもだけれど、報告とか連絡とか相談とか、俺が心配しないようにきちんと入れてくれるのだ。
バースに行ってた時だって、ルーを通じて2日おきくらいでお菓子やらなんやらかんやら届いたし、レオンがいうには俺が寝てるときにわざわざ顔を見に帰ってきてたこともあったらしい。
ゲイルの性格からすると、まずは東国に到着し、ルーを呼び出せそうな場所の確保ができ次第、こっちに連絡をくれるはず。
なんならルー転移で一旦戻って出直してもおかしくはない。
とっくに到着、なんなら予定ではもう帰途についてもおかしくない時期になっても、何も連絡が無いなんてあり得ない。
「ゲイルう……」
日中は気を張っているから大丈夫なんだけど、気が緩むといてもたってもいられなくなる。
「ルー!ちょっといい?」
とりあえずルーを呼び出してみた。
もくもくっと濃い魔力の塊ができ、ボワンとルーが現れる。
「どうした?サフィ」
こっちこっち、と手招きし、近づいたルーの首にモフっと顔を埋める。
「……ねえ、ゲイルからまだ呼ばれない?何か感じない?」
呼ばれたらすぐに教えてくれるってわかってるけど、それでも万が一があるから聞いてみた。
だってさっき呼ばれたばっかりかもしれないし。
連絡あったかもしれないし。
ルーは「ふう」と息を吐き、スリッと俺の顔に額を擦り付けた。
「……サフィ。残念だが………。だが、あまり気にするものでもないぞ?聖女の危機なれば、我に知れぬはずはないのだから。我が何も感じぬということは、ゲイルが無事だということ。
それに、サフィと同じくゲイルも悪意を弾く。そうそう悪しきものを寄せはしまい」
「うん。分かってる。ゲイルってば強いし。人たらしだからどこでもすぐに味方を作っちゃうし。いざとなればブリードさんだってルーだって呼べるんだし。それないってことはダイジョブなんだろうって、分かってはいるんだけど……」
大丈夫な理由ならいくつでも並べられる。
大丈夫じゃない理由は「遠い」とか「知らない国だから」くらいしか見つからなくて、でもそれはルーやブリードさんが居たら解決するようなことでしかなく。
「……ゲイルのことだから、向こうの人と仲良くなって連絡とるタイミングが無いのかも。
お泊りしてるとこが狭くってルーを呼べないでいるのかも。
まだ2週間たってないもんね。もうすぐ連絡来るよね、きっと」
それなのに不安が消えないから、ぐりぐりぐりっとルーに額をこすりつけなんとか不安を飛ばそうと試みる。
「…………あのね、虫の予感とかって信じる?」
「虫の?それはわからぬが……サフィの勘ならば信じるぞ。お主は気づいていないようだが、サフィの勘は予知に近い。証拠に、サフィが『なんとかなる、大丈夫』だというものは必ずなんとかなっておるだろう?」
予知とまでは思ってなかったけど、なんとなあく俺が「いける」と判断したものは大丈夫。それは感じてた。
でも今はそのことが逆に不安を煽るばかりなのだ。
「俺が自分で行くって思ってたときは全然心配なんかなかったんだけど。
ゲイルが行くって言いだしてから、胸がソワソワするんだよね……。
ゲイルと離れるのが不安なのかなって思ってたんだけど………」
違うのかもしれない。
ゲイルが、困ってる。
確かにゲイルは聖女だしツエエだし、命の危険とかは無いと思う。それは本当にそう思ってる。
だけどそれ以外の不測の事態が起こっているのではないだろうか。
「………ねえ、ルー。あと三日待って連絡が無かったら、俺、行ってくる。
バースまで転移してくれる?
それで、バースからブリードさんに東国に送って貰って、向こうに付いたらすぐにルーを呼ぶから、そしたら東国にマークをお願い。ルーって省エネモードにもなれたでしょ。犬ですって顔してそのまま一緒にゲイル探すの手伝ってくれる?」
「…………確かに小さくはなれるが………我を犬だと思うのはお主くらいだぞ?」
ええー?
「じゃあ、オオカミと犬と猫のミックスってことにしよう!…お爺さんがネコ、おばあさんが狼のパパと犬のママとの間に生まれた子!」
それならいける!そういうこともあるはず!!
「……善処してみよう。サフィは必ず行くと言い出すだろうと思ってはおった。お主一人で行かせるのは我も不安故ゆえ。タガが外れたお主がなにをしでかすか分からぬからな」
呆れたような声で、それでもしぶしぶ頷いてくれた。
「だがな、サフィ。レオンには許可を取るのだぞ?何も言わず行こうなどとは思わぬようにな?
そのようなことをすれば……大惨事が起こる」
ブルリと身を震わせるルー。聖獣が怖がるような何がレオンにあるというのだろう。あんなに優しいのに。たまに魔王だけど。
ゲイル。ゲイルを信じてあと三日待つよ。約束の日までは俺は大人しくしてる。
ちゃんとお仕事だってお勉強だってする。
でも、その日が来たら、誰が何といっても俺は行く。
東国へ。
とにかくその日を待つことにした。
はあっ………。
ドムッとレオンのベッドにダイブ。
レオンはリオとミカミカに捕まってたから、戻るまでもうしばらくかかるはず。
フカフカの布団に埋もれながら、俺の口から出るのはため息である。
だってどうしたって不安だ。
10日たっても連絡がないなんて絶対におかしい。
だってゲイルだもん。
そりゃ冒険者とかならホウレンソウしなくたって「あーあ。忘れると思った!」って流せるよ?
でも、ゲイルだよ?大事だから繰り返しました。
そう。ゲイルはあれでいてとてもきちんとしている。
綺麗好きなのもだけれど、報告とか連絡とか相談とか、俺が心配しないようにきちんと入れてくれるのだ。
バースに行ってた時だって、ルーを通じて2日おきくらいでお菓子やらなんやらかんやら届いたし、レオンがいうには俺が寝てるときにわざわざ顔を見に帰ってきてたこともあったらしい。
ゲイルの性格からすると、まずは東国に到着し、ルーを呼び出せそうな場所の確保ができ次第、こっちに連絡をくれるはず。
なんならルー転移で一旦戻って出直してもおかしくはない。
とっくに到着、なんなら予定ではもう帰途についてもおかしくない時期になっても、何も連絡が無いなんてあり得ない。
「ゲイルう……」
日中は気を張っているから大丈夫なんだけど、気が緩むといてもたってもいられなくなる。
「ルー!ちょっといい?」
とりあえずルーを呼び出してみた。
もくもくっと濃い魔力の塊ができ、ボワンとルーが現れる。
「どうした?サフィ」
こっちこっち、と手招きし、近づいたルーの首にモフっと顔を埋める。
「……ねえ、ゲイルからまだ呼ばれない?何か感じない?」
呼ばれたらすぐに教えてくれるってわかってるけど、それでも万が一があるから聞いてみた。
だってさっき呼ばれたばっかりかもしれないし。
連絡あったかもしれないし。
ルーは「ふう」と息を吐き、スリッと俺の顔に額を擦り付けた。
「……サフィ。残念だが………。だが、あまり気にするものでもないぞ?聖女の危機なれば、我に知れぬはずはないのだから。我が何も感じぬということは、ゲイルが無事だということ。
それに、サフィと同じくゲイルも悪意を弾く。そうそう悪しきものを寄せはしまい」
「うん。分かってる。ゲイルってば強いし。人たらしだからどこでもすぐに味方を作っちゃうし。いざとなればブリードさんだってルーだって呼べるんだし。それないってことはダイジョブなんだろうって、分かってはいるんだけど……」
大丈夫な理由ならいくつでも並べられる。
大丈夫じゃない理由は「遠い」とか「知らない国だから」くらいしか見つからなくて、でもそれはルーやブリードさんが居たら解決するようなことでしかなく。
「……ゲイルのことだから、向こうの人と仲良くなって連絡とるタイミングが無いのかも。
お泊りしてるとこが狭くってルーを呼べないでいるのかも。
まだ2週間たってないもんね。もうすぐ連絡来るよね、きっと」
それなのに不安が消えないから、ぐりぐりぐりっとルーに額をこすりつけなんとか不安を飛ばそうと試みる。
「…………あのね、虫の予感とかって信じる?」
「虫の?それはわからぬが……サフィの勘ならば信じるぞ。お主は気づいていないようだが、サフィの勘は予知に近い。証拠に、サフィが『なんとかなる、大丈夫』だというものは必ずなんとかなっておるだろう?」
予知とまでは思ってなかったけど、なんとなあく俺が「いける」と判断したものは大丈夫。それは感じてた。
でも今はそのことが逆に不安を煽るばかりなのだ。
「俺が自分で行くって思ってたときは全然心配なんかなかったんだけど。
ゲイルが行くって言いだしてから、胸がソワソワするんだよね……。
ゲイルと離れるのが不安なのかなって思ってたんだけど………」
違うのかもしれない。
ゲイルが、困ってる。
確かにゲイルは聖女だしツエエだし、命の危険とかは無いと思う。それは本当にそう思ってる。
だけどそれ以外の不測の事態が起こっているのではないだろうか。
「………ねえ、ルー。あと三日待って連絡が無かったら、俺、行ってくる。
バースまで転移してくれる?
それで、バースからブリードさんに東国に送って貰って、向こうに付いたらすぐにルーを呼ぶから、そしたら東国にマークをお願い。ルーって省エネモードにもなれたでしょ。犬ですって顔してそのまま一緒にゲイル探すの手伝ってくれる?」
「…………確かに小さくはなれるが………我を犬だと思うのはお主くらいだぞ?」
ええー?
「じゃあ、オオカミと犬と猫のミックスってことにしよう!…お爺さんがネコ、おばあさんが狼のパパと犬のママとの間に生まれた子!」
それならいける!そういうこともあるはず!!
「……善処してみよう。サフィは必ず行くと言い出すだろうと思ってはおった。お主一人で行かせるのは我も不安故ゆえ。タガが外れたお主がなにをしでかすか分からぬからな」
呆れたような声で、それでもしぶしぶ頷いてくれた。
「だがな、サフィ。レオンには許可を取るのだぞ?何も言わず行こうなどとは思わぬようにな?
そのようなことをすれば……大惨事が起こる」
ブルリと身を震わせるルー。聖獣が怖がるような何がレオンにあるというのだろう。あんなに優しいのに。たまに魔王だけど。
ゲイル。ゲイルを信じてあと三日待つよ。約束の日までは俺は大人しくしてる。
ちゃんとお仕事だってお勉強だってする。
でも、その日が来たら、誰が何といっても俺は行く。
東国へ。
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