もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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東の国

おじいさんの話

おじいさんの名前は「コテツ」さん。
やっぱりというか、他の国とかでは聞いたことのない名前。どことなく日本人っぽい。
顔も……東洋と西洋のミックスって感じ。真っ白な長髪&お髭で仙人様みたいだから顔が良く分からないけど。

なんとコテツさんは東国の宰相さんだった。10年くらい前に引退して、息子さん夫婦とお孫さんとここに住んでいたのだそう。



東国はもともと雪深い国。夏の温かい時期に食料を蓄えて冬に備え、冬の間に様々な工芸品やショウユなどのスパイスを作り、それを年に一度行商人が他の国に売りに行って東国にない食料や物資を持ち帰る、という形で生活を営んできた。
贅沢ではないが自給自足で十分暮らしてゆくことはできる。貧しい代わりに皆仲が良く、大きな家族のようにして暮らしていたのだそう。
王族も「この国のリーダー」という立ち位置。一応大きな城に住んではいるが、そこは嵐や災害の際にはシェルターとなり国民を受け入れるそのためのものなのだという。

そんな国がおかしくなってきたのはここ数年。
例年ならば春には雪が溶けだし夏には土が顔を出すというのに、徐々に春が遅くなり、夏が短くなってきたのだ。
おかげで貯えが十分に無いままに冬を迎えることになってしまう。
その分、必死で冬に様々な工芸品を作り、行商人に託すのだが……なにしろ間にあるのは氷の山。運べる量に刃限りがある。
徐々に生活は苦しくなっていき、ついには立ち行かなくなった。

王様だって手をこまねいていたわけではない。
寒さに強い植物を開発したり、温室のようなものを作り室内で植物を育てるなど様々な工夫を凝らした。
それでも、寒さはひどくなる一方。対処は後手後手に回ってしまう。

遂に「もうここはダメだ。国を捨てて全員で山越えしよう」と言い出すものが出始めた。
「他国の助けを借りよう」というものと「他国の助けを借りれば、東国など属国にされてしまう」というもの。
「いっそこのままみなで滅びを待とう」というもの。

意見はまとまらず、一部には食糧庫を襲うなど過激な手段に出るものが出始めた。
これが恐らく「暴動」と言われた出来事なのだろう。



そんな折、大寒波が来た。

これは毎年10日間ほど続くもので、特におかしなものではないって言うんだけど……今年は例年とは違った。
本来ならば来るはずの春の代わりにその寒波がひと月も続いたのだ。
終わりなき冬のお陰で薪も使い果たし、外に狩りに出ることもできず、ついに食料も尽きてしまったのだという。
冬の前に山越えして他国を回っていた商団が、魔道具を駆使して冬山を越えなんとか食料を持ち帰ったんだけど……それもあっという間に食い尽くしてしまった。商団も食糧難だからと全部食料に代えて来てたんだけど、まさか春が遅れているのは想定外。頑張って運んだ分も焼け石に水だったのだ。

そこにゲイルが来た。
ゲイルは雪に埋もれた東国を見てびっくり仰天。
慌てて魔法で雪をどけて道を作り、あちこちの家の扉を叩いて回った。
この時には結構な人が寒さと飢えで動けなくなっていたみたい。
おじいさんの家もありったけの食料を近所の人と分け合い、木製の家具は全部壊して薪に変えて耐えていたんだって。
ゲイルは弱り切った人を癒し、薬を与え、治療し、炊き出しを行った。そして王城がシェルターとなるのならば、皆で一か所に集まりこの窮地を凌ぐようにと提案したのだという。
中には「余所者の力を借りたくはない」「ここで死にたい」とその手助けを拒んだ人もいた。それをコテツさんはゲイルと共に説得して回ったんだって。

そしてゲイルとコテツさんの家族は、助かった人たちをせっせと城に運び続けた。
雪のせいでそれも難航した。
それでもなんとか9割の人は避難させることがでたんだけど……
城に行くことを拒んだものが数人いた。
その人たちは「この国を捨てる」「他国に移住する」とコテツさんが止めるのも聞かず山越えしていったという。
コテツさんがここに残ったのは、彼らが戻ってきたときのためだったみたい。
そうこうするうちに自分も動けなくなって今に至る。というわけ。

「ここに来るまでに誰かとすれ違わなかったか?」

移住するって人たちか。きっとあの黒い点なんだろうな。
どう伝えたらいいか迷う俺に代わって、キースが淡々と事実だけを告げた。

「あの山を素人が生身で超えるのは不可能だ。商団は予めそれなりの装備を整え、魔道具も使ったからこそなんとか戻ることができたんだろう。俺たちは従魔を使って空から来たんだ。見下ろした限り、もう命のある者はなかった」

おじいさんも覚悟はしていたんだろう。どこか諦めたような口調でポツリとこう言って肩を落とした。

「……雪が解けたら迎えにいってやらんとなあ」











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