476 / 538
東の国
東国王
東国の大広間。
といったらいいのだろうか。
王国などの広間とは違い、30畳くらいの個室というほうが近いのかもしれない。
石造りの広い部屋の奥に平安時代の御簾台のような一段高い箇所があり、そこにいくつもの大きなクッションが置かれていた。草履は履いたままだし、座面も織物のようなものなのだけれど畳のような感覚なのかもしれない。
その中央。
朱の塗りが施された座椅子にもたれ、黒髪の男性が座っていた。
ストレート長い髪を背に垂らし、和服とチャイナ服の間のような変わった衣装を身に纏っている。
紺を基調に全体に金糸の刺繍が施されているのが、さすが王族という感じ。
キリリと切れ上がった眦の美丈夫だ。
「東国国王、ミトラ・ミカゲだ。君たちを歓迎する、と言いたいところだが、見ての通り我が国は今それどころでははなくてな。君はゲルリアス殿の息子だと聞いておるのだが……」
取り繕うことなく厳しい現状を押し出してきた。
この感じ、嫌いじゃない。
まずはきちんとした礼節を持って口上を述べる。
「此度は突然の訪国にもかかわらずお目通り頂き感謝いたします。私はゲルリアスが息子、サフィラスと申します。ドラゴンライダーあと……サンダーエンジェルという二つ名を冠する冒険者でもあります。バース国に向かった父が約束の期日となっても戻らぬため、その足取りを追いここまでやって参りました。
父はここに滞在しているのとコテツ殿より伺いました。どうか、父に会わせて頂きたく」
「お初にお目にかかります。私はサフィラスのバディであるS級冒険者、ドラゴンバスターのキース。氷の山を越える友の力になれればと、同行いたしました」
「ご拝謁を賜り感謝いたします。私はフィオネル。ゲルリアスの婚約者です。お互いの所在を示す魔道具を共に身に着けておりますゆえ、同行した次第。此度の天災、陛下のご心痛がいかほどなものかお察しいたします。我らでお力になれることあらばなんなりと」
キースはともかく、どう見ても貴族にしか見えない公爵は「ゲイルの婚約者」の立場で押し通すことにしたみたい。
本当かどうかはさておき。
これで一通りの挨拶は終わったね。
礼儀は遠したよね?
よし。
じゃあここからは……
「ということで、失礼を承知で率直に申し上げます。わが父ゲイルを救うために私は参りました。
私は非常に勘がよいのです。その勘が、父の危機だと私を駆り立てております。
どうか今すぐゲイルに会う許可を頂きたく。ゲイルを治療できるのは私しかおりません」
といったらいいのだろうか。
王国などの広間とは違い、30畳くらいの個室というほうが近いのかもしれない。
石造りの広い部屋の奥に平安時代の御簾台のような一段高い箇所があり、そこにいくつもの大きなクッションが置かれていた。草履は履いたままだし、座面も織物のようなものなのだけれど畳のような感覚なのかもしれない。
その中央。
朱の塗りが施された座椅子にもたれ、黒髪の男性が座っていた。
ストレート長い髪を背に垂らし、和服とチャイナ服の間のような変わった衣装を身に纏っている。
紺を基調に全体に金糸の刺繍が施されているのが、さすが王族という感じ。
キリリと切れ上がった眦の美丈夫だ。
「東国国王、ミトラ・ミカゲだ。君たちを歓迎する、と言いたいところだが、見ての通り我が国は今それどころでははなくてな。君はゲルリアス殿の息子だと聞いておるのだが……」
取り繕うことなく厳しい現状を押し出してきた。
この感じ、嫌いじゃない。
まずはきちんとした礼節を持って口上を述べる。
「此度は突然の訪国にもかかわらずお目通り頂き感謝いたします。私はゲルリアスが息子、サフィラスと申します。ドラゴンライダーあと……サンダーエンジェルという二つ名を冠する冒険者でもあります。バース国に向かった父が約束の期日となっても戻らぬため、その足取りを追いここまでやって参りました。
父はここに滞在しているのとコテツ殿より伺いました。どうか、父に会わせて頂きたく」
「お初にお目にかかります。私はサフィラスのバディであるS級冒険者、ドラゴンバスターのキース。氷の山を越える友の力になれればと、同行いたしました」
「ご拝謁を賜り感謝いたします。私はフィオネル。ゲルリアスの婚約者です。お互いの所在を示す魔道具を共に身に着けておりますゆえ、同行した次第。此度の天災、陛下のご心痛がいかほどなものかお察しいたします。我らでお力になれることあらばなんなりと」
キースはともかく、どう見ても貴族にしか見えない公爵は「ゲイルの婚約者」の立場で押し通すことにしたみたい。
本当かどうかはさておき。
これで一通りの挨拶は終わったね。
礼儀は遠したよね?
よし。
じゃあここからは……
「ということで、失礼を承知で率直に申し上げます。わが父ゲイルを救うために私は参りました。
私は非常に勘がよいのです。その勘が、父の危機だと私を駆り立てております。
どうか今すぐゲイルに会う許可を頂きたく。ゲイルを治療できるのは私しかおりません」
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。