40 / 538
新生活スタート!
俺のお散歩2
俺は、思ったよりこの3人での散歩を楽しんでいる自分に気付いた。
この2人となんて気詰まりだと思ってたんだが、さりげなく優しい気遣いを見せるライリオを俺はちょっと見直していた。
俺の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれる。
ふと目をやると「それはね」と色々と教えてくれる。
それに…この庭は俺の思う「普通の庭」じゃなかった。単なる「広い庭」でもない。
子供の好きそうなもの、子供が喜びそうなものがあちこちに散りばめられ、毎日楽しめるよう工夫されていた。
「サフィラスが」散歩することを前提に、俺の好きそうなものが沢山ある、俺のために設計され、俺のために考えられた庭だった。
普通に「今までごめんね」とか「なかよくしてね」とか、そういう言葉だけだったら、こんな気持ちにはならなかったと思う。
公爵の趣味でもなければ、ライリオの趣味とも違うだろう、公爵家の中でテイストの違うこの庭は、言葉なんかよりよほど雄弁に彼らの気持ちを語っていた。俺への精一杯の心配りが感じられた。
橋も子供が通るのにちょうどいい感じ。
池だって、万が一落ちても大丈夫な深さになっているみたい。
暑い日なんかには、水遊びもできるんじゃないかな?
おさかな釣りだってできるよね、きっと。
ブランコに、飛石。迷路。
貴族っぽくないけど、でも俺が好きそうなものがいっぱい。
そんな「サフィのための」お庭。
ちょっと見直した。
でも、でも、まだまだだからね!
だって、4年分の悲しい気持ちは、そんなにすぐにはなくならない。
だから、調子にのらせちゃわないようにしないとね。
もうしばらくは、俺のご機嫌取りをがんばって!
そしたら…そしたら、いつか。笑顔で仲良くしてあげないでもないから。
俺は2人が追いつくのを待ちながら、くすりと笑った。
2人はにこにこしながら、あっという間に俺に追いついた。
「あははは。こんな楽しいお散歩、初めて!」
リオネルが笑う。
「そうだな。………とても楽しい。そして、最高の気分だ」
ライオネルが微笑む。
「ぼくも、おにわのおさんぽ、はじめて。こうしゃくけでは、おそとでたことなかったから。
でも、ここならまいにちおさんぽしてもいい。とてもよきばしょ。ぼく…ここ、すき」
「良かったあ!あのね、ここね、サフィのお庭だからね。だからもし…サフィが嫌だったら僕たちは来ない。
でも、一緒でもいいっていってくれるなら、毎朝一緒にお散歩したい」
「サフィラスが決めていい。サフィラスがしたいようにしてくれていい」
2人はじいっと俺を見て、俺の返事を待っていた。
俺は、仕方ないなあ、って態度でこう答えた。
「うーん。ゲイルが、まいにちおさんぽしなさいっていうし。たまにはテイルもゆっくりさせてあげたいし。だから……ライとリオがしたいなら、いっしょにさんぽしてあげてもいい」
つん、と横を向き、唇を尖らせる。
どうしても、っていうから許可してあげるんだからね!
俺が一緒に散歩したいからじゃないんだから!
そんな可愛くない俺の態度にも、2人は怒らなかった。
「やったあ!!一緒に散歩する!したい!」
「うん。一緒に散歩できると嬉しい。許可をくれてありがとう、サフィラス」
「…………サフィでいい」
「え?」
「サフィラス、っていいにくいでしょ。サフィでいい。ぼくだってライってよんでるし」
「………そうか。では、そう呼ばせてもらおう。ありがとう、サフィ」
ライ。それくらいでそんなに幸せそうな顔しないでよ。いつもクールなくせに。
ばか。あほ。どうしてそんなに俺に気を遣うの。俺の言葉で喜ぶの。俺のためにってがんばっちゃうの。
あーあ!あーあ!!やっぱ、一緒に散歩なんてしなきゃよかったなあ!
もうさあ…。ライリオ。ずるい!
一緒にいてこんな所見せられたら…憎めないじゃん。ちょっと可愛いな、なんて思っちゃうじゃん。
だから、近寄らないようにしてたのに。
「ずるいよね、ライリオ」
ぼそっと呟いたら
「えええ?!僕、な、なにかした?」
「すまない、サフィ!いや、サフィラス!やはり図々しかっただろうか?」
なんて慌てだすから、そんな2人を見て俺は「やっぱりずるい」って思ったのだった。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。