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俺、またしてもお披露目会?!
閑話休題 サフィが、ばたんきゅう(お兄様視点)
サフィちゃんが寝ている間に、お兄様ちょっと可哀想な感じになっていたのでした。
※※※※※※※※※※※※※※※※
ルーダ様と楽し気に遊んでいたサフィが、突然倒れた。
つい先ほどまできゃっきゃとあちこち走り回っていたのに、突然立ち止まり
「めがまわる…」
と言ったと思ったら、ふらふらと足元がおぼつかなくなりそのまま床に崩れ落ちたのだ!
「サフィ!!」
とっさに近くにいたゲイルが抱き止める。
私も慌てて駆け寄り、サフィの様子を見た。ゲイルの腕の中のサフィは、意識がない。そしてその顔は真っ青だった。
いつもやわらかなピンクに染まっているほほも、色を失ってしまっている。
楽し気に輝くその瞳も今は閉じられたまま、長いまつげが顔にかすかな影を落としていた。
背筋がゾッとした。
公爵に聞いた「サフィラスが死にかけたことがある」という話が脳裏に浮かび、急に現実味を帯びて私にのしかかってきた。
思わず伸ばした手を、ゲイルが制す。
「大丈夫。息はしている。
……どこか、サフィを寝かせてやれる部屋はないだろうか?
そこでこうなった原因を詳しく調べたいんだが…」
まるで親鳥が子を守らんとするかのように、ゲイルの腕がしっかりとサフィを囲い込み「俺のものだ」と主張していた。
「レオン、俺が支えるからサフィの上着とブーツを脱がせてやってくれないか?」
「あ、ああ!…サフィは大丈夫だろうか?」
「魔力の乱れを感じる。恐らく、一気に魔力を使い過ぎたんだろう」
「そうか…。私の魔力を分けてやることはできるだろうか?」
「いや、俺のをやる。俺は血縁だし、属性もかなり近いからな」
慌てて部屋を手配させる一方で、どこか焦燥を感じた。
私など蚊帳のそとで、ゲイルにより私の大切なサフィの処遇が決まっていく。
ずきん!
ゲイルの行動は、愛する息子を心配する親として当然の行動。
家族として当然の権利だ。
なのになぜか私の胸は痛んだ。
なぜサフィを守るのが私の腕ではないんだ?
私の大切な子が倒れたというのに、なぜ黙ってゲイルの指示に従うことしかできない?
ゲイルが親であり医師だと分かってはいても。
私にはない権利をゲイルが持っている、そのことが羨ましく、無性に悔しかった。
私はゲイルのようにサフィを1番に守る権利が欲しいと思った。
サフィを腕の中に囲い、大切に大切にする権利が欲しい、そう思った。
今の私の立場は、サフィが自分を「まがりにん」と称したように「一時的に宿を貸す家主」であり「仮のサフィの兄」に過ぎない。
将来的に父親になると決まっているゲイルは元より、過去に色々あれど血縁である公爵たちよりも私のサフィへの立場は下なのだ。
サフィに関する権利は彼らにあり、私はいわば「部外者」なのだ。
そのことをまざまざと見せつけられたような気がした。
サフィは青ざめた顔でひたすら眠っている。上下ずる胸だけが彼の生を伝えてくれた。
その手をしっかりと握り、まるで祈るような姿勢で少しづつ魔力をサフィに流し込むゲイル。
本来ならば魔力の多いサフィにゲイルから魔力を送ることはできない。
だが、今の魔力量はサフィのほうが少なくなっているため、このような手段が可能なのだという。
先に屋敷に戻っていた公爵たちには、
サフィが倒れたこと、
こちらで寝かせてゲイルが付き添い様子を見ること、
サフィの意識が戻るまではそちらで待機してもらうようにと連絡をさせた。
そして最後まで部屋に残っていた父上たちも、サフィが落ち着いたのを確認し、しぶしぶ公務に戻っていった。
全ての手配が終わっても、私はどうしてもサフィから離れられず、かといってサフィに触れいたずらにサフィ魔力を揺らしてしまうこともできず、ただサフィの横でひたすら彼の顔を眺めて立ち尽くしている。
サフィの手を握りつきっきりで世話をやくゲイルは、そんな私に苦笑した。
「おい。レオン。お前の方が倒れそうだぞ?」
それをあなたが言うのか。
あなたのほうが私よりよほど倒れそうではないか。
いっそ私があなたと交代したほうが…!
できるなら、私の魔力をサフィにあげたかった。
私以外の魔力など、サフィに流して欲しくなかった。
私だって、たった1週間ではあるがまるで親のようにサフィを慈しみ、大切に守り、世話をしたのだ!
それなのに…!
溢れそうな言葉を、無理やり飲み下した。
サフィにはゲイルが必要なのだ。
そして、ゲイルにはサフィの側にいる権利がある。
私が何を言わずともゲイルには私の気持ちが伝わったようだ。
どこか疲れ切ったような顔で苦笑し、私を諫める。
「…お前の気持ちはよくわかる。
だがな、いずれにせよ、今お前がここにいてもやれることはない。俺に任せろ。
俺はサフィの父親であり、医者なんだぞ?
目を覚ましたら一番に呼んでやるから。
それまではしっかり休み、自分の仕事をしろ。サフィだって、そうして欲しいはずだ」
確かに。
サフィは私が仕事を放棄することなど望まないだろう。
魔力が足りず眠っているだけだ。命の危険はない。だから、何人もつきそっている必要はないのだ。
分かっている。分かってはいるんだ!
でも……
私は触れてしまわぬよう気を付けながら、そっとサフィの小さな頬に手をかざした。
青ざめた頬に私の熱が少しでも伝わればいいと。そう願って…。
ただひたすら眠る彼の顔は、とても静かで端正だった。
いつもにこにことしているから気づかなかった。笑顔が消えるだけで、こんなにも違うのか。
まるで神が作った奇跡のビスクドールのようだ。繊細で秀麗な生ける美術品。
それでも。
ちょっすねたように唇を尖らす顔が見たい。
目をキラキラさせたあの笑顔が見たい。
怒って頬を膨らませる、あの可愛い表情を見せて欲しい。
生き生きとしたサフィが、私は好きなのだ。
「……サフィ。少しだけ離れるからね?
私は自分のなすべきことをしてくるよ。
だから…早くその目をあけて、私を見て?そのお口でお兄様の名を呼んで?
早く元気におなり」
「……熱烈な告白みたいだぞ?」
ゲイルが呆れたように片眉をあげた。
「…まだ、そのつもりはありませんよ。
なにしろサフィには最強の保護者がついていますから」
私は苦々しい想いで呟く。
今は、悔しいがゲイルに託そう。
だが…サフィに許されるなら、権利が欲しい。
一番にサフィを守る、その権利をどうか…。
※※※※※※※※※※※※※※※※
ルーダ様と楽し気に遊んでいたサフィが、突然倒れた。
つい先ほどまできゃっきゃとあちこち走り回っていたのに、突然立ち止まり
「めがまわる…」
と言ったと思ったら、ふらふらと足元がおぼつかなくなりそのまま床に崩れ落ちたのだ!
「サフィ!!」
とっさに近くにいたゲイルが抱き止める。
私も慌てて駆け寄り、サフィの様子を見た。ゲイルの腕の中のサフィは、意識がない。そしてその顔は真っ青だった。
いつもやわらかなピンクに染まっているほほも、色を失ってしまっている。
楽し気に輝くその瞳も今は閉じられたまま、長いまつげが顔にかすかな影を落としていた。
背筋がゾッとした。
公爵に聞いた「サフィラスが死にかけたことがある」という話が脳裏に浮かび、急に現実味を帯びて私にのしかかってきた。
思わず伸ばした手を、ゲイルが制す。
「大丈夫。息はしている。
……どこか、サフィを寝かせてやれる部屋はないだろうか?
そこでこうなった原因を詳しく調べたいんだが…」
まるで親鳥が子を守らんとするかのように、ゲイルの腕がしっかりとサフィを囲い込み「俺のものだ」と主張していた。
「レオン、俺が支えるからサフィの上着とブーツを脱がせてやってくれないか?」
「あ、ああ!…サフィは大丈夫だろうか?」
「魔力の乱れを感じる。恐らく、一気に魔力を使い過ぎたんだろう」
「そうか…。私の魔力を分けてやることはできるだろうか?」
「いや、俺のをやる。俺は血縁だし、属性もかなり近いからな」
慌てて部屋を手配させる一方で、どこか焦燥を感じた。
私など蚊帳のそとで、ゲイルにより私の大切なサフィの処遇が決まっていく。
ずきん!
ゲイルの行動は、愛する息子を心配する親として当然の行動。
家族として当然の権利だ。
なのになぜか私の胸は痛んだ。
なぜサフィを守るのが私の腕ではないんだ?
私の大切な子が倒れたというのに、なぜ黙ってゲイルの指示に従うことしかできない?
ゲイルが親であり医師だと分かってはいても。
私にはない権利をゲイルが持っている、そのことが羨ましく、無性に悔しかった。
私はゲイルのようにサフィを1番に守る権利が欲しいと思った。
サフィを腕の中に囲い、大切に大切にする権利が欲しい、そう思った。
今の私の立場は、サフィが自分を「まがりにん」と称したように「一時的に宿を貸す家主」であり「仮のサフィの兄」に過ぎない。
将来的に父親になると決まっているゲイルは元より、過去に色々あれど血縁である公爵たちよりも私のサフィへの立場は下なのだ。
サフィに関する権利は彼らにあり、私はいわば「部外者」なのだ。
そのことをまざまざと見せつけられたような気がした。
サフィは青ざめた顔でひたすら眠っている。上下ずる胸だけが彼の生を伝えてくれた。
その手をしっかりと握り、まるで祈るような姿勢で少しづつ魔力をサフィに流し込むゲイル。
本来ならば魔力の多いサフィにゲイルから魔力を送ることはできない。
だが、今の魔力量はサフィのほうが少なくなっているため、このような手段が可能なのだという。
先に屋敷に戻っていた公爵たちには、
サフィが倒れたこと、
こちらで寝かせてゲイルが付き添い様子を見ること、
サフィの意識が戻るまではそちらで待機してもらうようにと連絡をさせた。
そして最後まで部屋に残っていた父上たちも、サフィが落ち着いたのを確認し、しぶしぶ公務に戻っていった。
全ての手配が終わっても、私はどうしてもサフィから離れられず、かといってサフィに触れいたずらにサフィ魔力を揺らしてしまうこともできず、ただサフィの横でひたすら彼の顔を眺めて立ち尽くしている。
サフィの手を握りつきっきりで世話をやくゲイルは、そんな私に苦笑した。
「おい。レオン。お前の方が倒れそうだぞ?」
それをあなたが言うのか。
あなたのほうが私よりよほど倒れそうではないか。
いっそ私があなたと交代したほうが…!
できるなら、私の魔力をサフィにあげたかった。
私以外の魔力など、サフィに流して欲しくなかった。
私だって、たった1週間ではあるがまるで親のようにサフィを慈しみ、大切に守り、世話をしたのだ!
それなのに…!
溢れそうな言葉を、無理やり飲み下した。
サフィにはゲイルが必要なのだ。
そして、ゲイルにはサフィの側にいる権利がある。
私が何を言わずともゲイルには私の気持ちが伝わったようだ。
どこか疲れ切ったような顔で苦笑し、私を諫める。
「…お前の気持ちはよくわかる。
だがな、いずれにせよ、今お前がここにいてもやれることはない。俺に任せろ。
俺はサフィの父親であり、医者なんだぞ?
目を覚ましたら一番に呼んでやるから。
それまではしっかり休み、自分の仕事をしろ。サフィだって、そうして欲しいはずだ」
確かに。
サフィは私が仕事を放棄することなど望まないだろう。
魔力が足りず眠っているだけだ。命の危険はない。だから、何人もつきそっている必要はないのだ。
分かっている。分かってはいるんだ!
でも……
私は触れてしまわぬよう気を付けながら、そっとサフィの小さな頬に手をかざした。
青ざめた頬に私の熱が少しでも伝わればいいと。そう願って…。
ただひたすら眠る彼の顔は、とても静かで端正だった。
いつもにこにことしているから気づかなかった。笑顔が消えるだけで、こんなにも違うのか。
まるで神が作った奇跡のビスクドールのようだ。繊細で秀麗な生ける美術品。
それでも。
ちょっすねたように唇を尖らす顔が見たい。
目をキラキラさせたあの笑顔が見たい。
怒って頬を膨らませる、あの可愛い表情を見せて欲しい。
生き生きとしたサフィが、私は好きなのだ。
「……サフィ。少しだけ離れるからね?
私は自分のなすべきことをしてくるよ。
だから…早くその目をあけて、私を見て?そのお口でお兄様の名を呼んで?
早く元気におなり」
「……熱烈な告白みたいだぞ?」
ゲイルが呆れたように片眉をあげた。
「…まだ、そのつもりはありませんよ。
なにしろサフィには最強の保護者がついていますから」
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今は、悔しいがゲイルに託そう。
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