もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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たくさんの感謝と共に(おみやげ配るだけ!)

俺、おみやげ配り人になる7(熊さんとお料理人のみなさん、バイツー先生と魔塔のみなさん)

王様たちにナイフを渡し、俺はまたお兄様のお部屋に。
王城の人たちにも直接渡したかったけど、王城は広い。
あちこち配り歩くと誰に渡したのかわかんなくなってしまうので。
王妃様に託すことにしました。

バラのおかしとハンカチを持って急いで食堂に戻ると、王様と王妃さまがワクワク顔。
はしたないから口には出さないが「さっさと菓子を出せ」って顔が言ってる。

「おまたせです!これ!
バラのおかしなのです!」

俺はバリバリと箱を開けて、中を見せた。

「あのね、これはおさとうをとかしてかたまりにして、ぷうって吹くの。
そしたらふうせんみたいにふくらむでしょ。
それをアツいうちにへこましてお花の形にするのです。
うすくってパリパリ。でもお口にいれたままにしてると、しゅんととけるの。
とてもかわいかったので、王妃さまににあうとおもったの」

王妃様はそうっとバラに手を伸ばした。

「まあ…!なんて可愛らしいのかしら!
こんなに可愛らしいのに、お菓子だなんて!
食べてみていい?」
「うん!たべてみて!」

俺は王様、王妃様、お兄様のてのひらに1つづつのせてあげた。
そうっと大切なものを運ぶように慎重に口に入れる。

「「「!!」」」

とたん、3人とも目を見開いた。

「!ほう!これは!」
「………うん。やっぱり不思議な触感だ!」
「なんて繊細な!」

うっとりと目をつぶる3人を見て、俺はうんうんと頷いた。
そうでしょうともそうでしょうとも!
俺も食べた時に驚いた!見た目も可愛いけど、お口に入れたときの衝撃が凄いの!
これを冒険者が持ってきたなんてビックリだよね!
にしても、お兄様だってその時一緒に食べたでしょうに!
何度食べても驚きのおいしさなのね。

俺も1つもらってお口に。

「んんーーーーー!!!」

うん!確かに!
俺も思わずうなっちゃった。
何度食べても驚くこのお菓子。お兄様の様子にも納得!
美しくて儚いお菓子は、我ながら素敵なお土産だったと思う。

王妃様にバラのお菓子の箱とハンカチをまとめて渡して、侍女さんや侍従さんたちに配ってもらうようにお願いした。
護衛さん分は、護衛ズにまとめて託そうと思う。
王城のみなさんを俺のためだけに大集結させるわけにはいかないからね。

「いつもおせわになってます。しんせつにしてくれてありがとう、って。
お伝えくださいませ!
みんなとっても優しくしてくれるので!」

王妃様はにこにこしながら二つ返事で引き受けてくれた。

「サフィちゃんは素敵な気遣いができるのね。ありがとう。みんな喜ぶわ」

うん。喜んでくれるといいな。







約束どおり熊さんの所にも寄った。
王城の厨房に顔を出すと、みんななんかピッカピカなエプロン(いつもは普通にソースとかついてる)で出迎えてくれた。

「サフィラスさま!いらっしゃい!」

俺はみんなの代表として熊さんに渡すことに。

「あのね、これはオレが初めてお出かけしたおみやげです。
ちゃんと自分でかせいだお金で買いました。
いつもおいしいごはんとか、おかしとかアップルパイとか作ってくれるみんなに、かんしゃのきもちです。
さいしょは胃が小さくってそんなにたべれなかったの。
だけどみんながいろいろ工夫してくれたから、いまはたくさんたべれるようになったの!
どうもありがとうございます!これからもよろしくです!」

ペコリと礼。

俺の言葉に料理人さんたちが目を潤ませている。

「はじめてお会いした時よりずいぶんお身体もしっかりされて…。我々も嬉しいです!」
「何を召し上がっても喜んで下さるので作りがいがあるんですよ」
「うんうん。次は何を出そうかと考えるのも楽しくてね」

そんな風に思っててくれたの!
どれも俺の食べやすいサイズで作ってくれてあった。
ちょっとずつ色んな種類が食べられるようにいつも工夫してくれてたよね。

「みんな、やさしい!!好き!!」

俺は1人1人にハグをして回った。
大きな体に大きな手。
美味しいものを生み出す魔法の体と手だ。
食育っていうけど、俺の身体はみんなに育ててもらったもの。
おかげでこんなに大きくなったよ!まだ小さいけど!当社比ですので!



「あのね、バラのおかしなの。お口にいれるとパリッとしゅうってします!
とってもおいしかったので、食べてみてください!」

箱を開けて中を見せると、みんな突然職人さんの顔になった。

「ほう!これは…飴細工ですか?」
「それにしても、薄い!うーん…」
「膨らませてからしぼませているのでは?」
「そうか!我々だと花弁一枚一枚作っているが、庶民の菓子はまとめて大量につくるからな」
「こんな効率的な方法が!」

「あのね、お口に入れてみて?」

とにかく食べてみて欲しい。見た目もだけど、触感がよきですので!

「おお!これは!なんと楽しい!」
「まさしくパリパリしゅん、です!」
「うわあ!はじめてですこんなの!」
「まさか庶民がここまで!」

料理人さんたちの目がギラギラと光りだした。
猛烈な勢いで「こうしちゃおれん!」と何か捏ねだす。

「サフィラスさま!これを超えるものをお口に入れて見せますので!
楽しみにしていてくださいね!」



近日中にバラのお菓子高級バーションが王城で量産されるかもしれない。

帰りに「お土産です」って大きなアップルパイを3つも持たされた。
俺が渡したお土産より大量じゃん!
やっぱりみんな、優しい!!




そうこうしているうちに、あっという間に魔法訓練の時間に。
早く起きた意味!と思ったけど、先に王様とか熊さんたちに渡せたからヨシとする。

俺はお兄さまと一緒にようやく最初の目的地のはずだった魔塔に向かった。
俺のおみやげ配り行脚も、あとバイツー先生含む魔塔のみなさんとミカミカ、護衛ズで終わり。
おっちゃんたちはどうせバラバラと公爵家に凸してくるから、その時に渡すこととしよう。

以外と大変であった。
でも、みんなすっごく喜んでくれて、俺のほうがまるでごほうびを貰ったみたいな気持ち。
あとちょっとで終わると思うと、少し寂しい気もする。


「こんにちわですー!サフィとレオンお兄さまがきましたー!
バイツーせんせーはいますか?」

たのもー!と魔塔に入ると、今まさに外に出んとするバイツー先生と鉢合わせた。

「え?サフィちゃん?今日こっちに来る日だっけえ?」

目を丸くして首をかしげるバイツー先生に、俺は説明した。

「ううん。まとうのみなさまにもごようがあったからきたの」

すれ違うところだった!間に合ってよかったあ!

俺は居住まいを正し、こほんと咳をした。

「あのですね。きょうはおみやげがあるのです!」
「え?お土産?どうしたの?なんのお土産?僕の分もある?」

異常な食いつきを見せる先生。
おっとっと!ちょっと待てーい!


俺は手をグイっと突き出し、先生を静止。

「えっと。ゲイルとお兄さまといっしょにはじめてお出かけしました。
それで、自分でかせいだお金でおみやげを買ったの。
いつもありがとうのきもちなのです!
あのね、バイツーせんせーがオレのせんせーになってくれて、とてもうれしいです。
せんせーは面白くって分かりやすくって、まほうの天才!
くんれんなのにとっても楽しいの!ありがとうございます!
せんせーのおかげでオレツエエできました!オレの身は安全!
せんせーがいてくれてよかったです!さいこうのせんせいなので!
バイツー先生、大好きです!」

ナイフを渡そうとして、ふと思った。
あれ?
パワーの効果ついてるけど、先生って自分でできるんでないかい?
効果、必要だった?

で、でも、ナイフとして綺麗だし!

「あの…おみやげだけどナイフなの。
せんせー、いそがしいから、パワーのこうかがついてるの。
1かいだけ、お疲れをなおせます。
でもよくかんがえたら、バイツーせんせい、自分でできたかも…。
でも、あの、あの!こうかのもようがステキですし!ナイフとしても使えますので!
ヒモも切れます!おかしとか分けるときもべんり!
あと、あと、リンゴとか割ったりとかも!おてがみあけれます!」

俺は一生懸命ナイフの効能について説明した。
ど、どうかなあ?使ってくれる?

バイツー先生は俺の説明を聞いてきょとん、とした後、とっても優しいお顔になった。
大事そうに手に持ったナイフを目を細めて見つめる先生。

「……うん。とってもきれいなナイフ。それに、丁寧に効果が付与されてる。
素晴らしい職人さんの仕事だねえ!
これ、持っているだけでも元気になりそうだよお!
ふふふ。とっても素敵な贈り物だねえ。僕のためにわざわざ買ってきてくれたの?」
「そう。いつもおせわになってるから」

先生は、俺のことをふわりと抱きしめた。

「ありがとう。サフィちゃん。すっごおく、すっごおおおく嬉しい。
あのね、僕のための贈り物って、ほとんどが下心なの。
何かして欲しいとか、見返りに何を、とかね。
こんなに純粋ですばらしいプレゼントを貰ったの、初めてなんだあ。
大事に使わせてもらうね。………本当にありがとう」

ひとことひとこと、噛みしめるように話す先生。
ものすごく喜んでくれているのが伝わってくる。

俺はなんだか申し訳なくなってしまって、正直に打ち明けた。


「あのね、かんしゃとありがとうのきもちは本当。
だけど、オレにも下心、あるの。
ずっとずっとせんせーにおしえて欲しいの。
大好きなせんせいに、これからもずっとよろしくして欲しい下心なの」

嫌われちゃうかな。でも、こんなに喜んでくれた先生に嘘はつきたくなかった。
ドキドキしながら断罪を待つ俺。
すると

「あははははは!」

先生が突然笑いだした。

「え?せ、せんせー?」
「そ、そんな可愛らしい下心だったら、どんどん抱いてっ!
もう全く!サフィちゃんったら、最高だよねえ!
あのね、僕にも下心あるんだよお!
ずっとサフィちゃんの先生でいたいっていう下心。
どう?許してくれる?」

え?そ、そうなの?
そんなの…

「がってんしょーちのすけ!ゆるす!ゆるしまくりです!
ずっとせんせーがせんせー!うれしい!」

ぴょーいっと飛びつく俺に、先生がおっとっと。

「おっとお!
ふふふふ。よかったあ!
ところで、がってんしょーちのすけって、なんの呪文?新しい魔法なのかなあ?
僕、聞いたことないんだけど…」
「私も聞いたことがないなあ!サフィってたまにおかしな呪文を口にするよね?
これはどんな呪文なの?」

ええー?そんなこと言われても……

「…………りょうかいです、っていみ?」
「…りょうかいです?」
「がってんしょーちのすけ?」

せっかくいい感じだったのに、2人とも「がってんしょーち」を繰り返す江戸っ子になってしまった…。
俺のせいで…ごめん!



バイツー先生に、魔塔のみんなにお菓子があるんだよ、と伝えたら、あっちゅーまにワラワラと人が湧いてきた。

「食べ物があると聞きまして!」
「神の助け!朝から何もたべていないんですううう!」
「それは俺の分もありますか?」

ひええええ!みんな飢えてた!!

「こ、これ!猫ちゃんの形のドーナッツなの!
40こあるから、たりるとおもいまする!
おひとつづつどー…」

どうぞ、と言い終わらないうちにわああーっとドーナッツが消えていった。

「か、かわいいいいい!!なにこれ!」
「うう…甘い…体に砂糖が染み渡る…!」
「はあ…可愛い…。食うのが可哀想だが…食う!我が糧となれ!」

お兄様と俺は呆然。バイツー先生は苦笑。

「泊まり込んでるのが何人かいるからねえ…。ごめんねえ、飢えたハイエナみたいで」

意外と辛辣である。

「あのねえーーー!それ、サフィちゃんのおみやげだからねええええ!!
ちゃんと自分で働いて稼いだお金で買ってきてくれたんだよおおおお!
みんなちゃんと味わって食べるようにねえええ!!」

「あああ!!それ早く言って下さいよっ!」
「もう食べちゃったじゃないですか!先に言ってくれてたらもっと味わって食べたのにいいい!」
「サフィちゃんが、ご自分のお金で?!天使か?!天使がいる!!」
「馬鹿野郎!サフィちゃんが天使なんて当たり前のことだろう!」
「うん!オレ知ってた!サフィちゃんは天使!」

「「「「ありがとうございますうううう!!!」」」」

一部訳の分からないことを言っていたけど、喜んでるのは充分に伝わってきた。
おみやげとしての喜びもだけど、食料としての喜びもあるっぽい。
お腹にたまりそうなドーナツにしたのは正解だった!

「………あの……。クマさんにアップルパイを3つもらったんだけど、1つたべる?」
「「「「いただきます!!!天使か!!!」」」」

この人たち、飢えてる!
俺はアップルパイを2つ置いて、今度来る時には沢山のおやつを差し入れしようと心に誓ったのだった。




その日の魔法の訓練は、せっかくだからと付与を習った。
これは多くの魔力を使用するということで、できる人はめったにいないのだそう。

「でも、サフィちゃんとレオン殿下ならできると思うんだよねえ。
やってみる?」
「みる!!」

そうしたら、使っちゃったナイフにまた効果を付けてあげられるよね!

「じゃあ、しばらくは付与の訓練ねえ!」
「はーい!」

これからの訓練も楽しみ!



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