もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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みんなの愛が重い件

俺の大変な1日の最後

濃ゆーい、あまりにも濃ゆーい1日を送って疲れ切った俺をリオがうちまで送ってくれた。
(というより、リオが俺の馬車に同乗してうちに来てうちからゲートで帰っていったのです。これで送ってくれたといえるのだろうか)

ぐったりとソファに沈み込んだ俺に、キースが不思議そうに言った。

「サフィはヒールできるんだろう?冒険者たちの疲れを取ったりしていたよな?
自分にはできないのか?」

「うーん。やってもいいんだけどね。
たまにならいいけど、自分だとつい乱発しちゃいそうだし。
そしたらそれが当たり前になっちゃうでしょ。
自分だとちょっと疲れただけで無意識にヒールしちゃう。
そうすると身体がさぼるようになるんだって。
ヒールしないと回復しなくなっちゃうの。
ゲイルが言ってた」
「そうなのか?」
「うん。そうなの」

奥が深いんだなー、となんども頷いているキース。
そうなの。ただやればいいってもんじゃないの。
それがゲイルの教え。
必要な時に必要な量を。使いすぎはダメ。


それに、この疲れの大半は生徒会のせい。
あのウルフなお耳に興奮しすぎたせいもちょっとはあるかもしれないけど、それはほんのちょっとのはず。
これは生徒会による精神的な疲れなの。

ぐにゃんぐにゃんの俺を哀れに思ったのか、キースが俺の横に座って俺の頭をキースの膝に載せるようにして寝かせてくれた。
そしてそのまま俺の瞼に掌をのせて優しくマッサージしてくれる。

「うう……」

掌から伝わる人割とした熱と程よい圧力!
き、きもちいい……!
うっとりしながらなすがままの俺。
キースってば甘やかし上手さん!

「とてもよき…。
すんごくきもちいい…
キースじょうず…もっとして…」

うっとりと呟いたら、なぜかキースが固まった。

「?もう終わり?キースおつかれ?」
「い、いや大丈夫だ。
だが……サフィは少し言葉を選んだほうが…。
いや、なんでもない。ああもう!俺は子供になにを言っているんだ…」

目元を赤くしてなんかごちゃごちゃ言ってる。
やっぱお疲れ?

「キース?」
「すまん。こっちの話だ。少しは楽になったか?」
「うん!とってもいい感じ!ヒールみたいに目がぽかぽかになった!ありがと!
キースの手も魔法みたいだね」

にこにことお礼を言ったら、なぜかキースが撃沈した。

「……サフィはそのままでいてくれ。
俺が悪かった」

あ、そ、そうなの?
よくわからんがありがとう?






しばらくしたらゲイルが帰ってきたから、お風呂に入りながら今日のことをご報告。
お昼がバイキングだった話をしたら

「サフィ、ちゃんと取れたか?
取り過ぎて残したりしてねえよな?
ちゃんと適量取るんだぞ?」

なんてリースくんたちと同じことを言われた。

「残してないよ!ちゃんと全部食べたもん!」

嘘じゃない。
心の中で「多い分はリースくんたちが食べてくれたしね!」と付け足す。

「まさか多かった分を友達に食って貰ったりしてないな?」
「み、見てたの?え?ゲイル学院にいた?」
「居ねえわ!やりそうだな、と思っただけだ。
てか、そういうのもダメだぞ?
ちゃんと少しづつ取りなさい!友達に迷惑をかけるんじゃない!」



ゲイルがシェフとこそそこやっていると思ったら。
その日のディナーはまさかのバイキング形式だった。
繰り返そう。
まさかの!おうちのご飯が!バイキング形式だった!

「うちでバイキングの練習しような、サフィ。
ちゃんと適量を覚えよう!
そうすれば学院でも恥ずかしくないぞ?」

バイキングの練習?聞いたことないよ?
なんというお父様の優しさ!
って、過保護かよ!!!

キースとティガー、マリー、ゲイルもバイキングに参加。
なんで疑問に思わないの?ねえ。
これ、おうちの晩御飯だよ?

学院の食堂みたいにみんなで並んで順番に取っていく。

少しつまんではゲイルが頷き。
1つ乗せてはキースが微笑む。

「あ!これ好きなやつ!」

多く取り分けようとすれば…ティガーが小声で囁いた。

「向こうにデザートもありますよ?本日はチーズケーキです」

そっと戻せばマリーが拍手!

みんなに注目されながら、サポートされながら好きなものをとって……
できるかーーーー!!!!
こんなのバイキングじゃないっ!

おかしいよね?
自宅のディナーがバイキング!そんなことある?ねえ?
バイキングってこういうものじゃないの!
ちょっととり過ぎたりしてお残ししそうなのを無理して食べるのもバイキングの醍醐味でしょ?!
この「いけるかいけないか」ハラハラドキドキこそがバイキングなの!
徐々に慣れてきて、少しづつとって2度目に気に入ったものだけ、というバイキング猛者になるまでのこの葛藤だっ
て大事な楽しみのひとつ!
大人数に囲まれて前後左右からアドバイスされたり拍手されたりしながらするもんじゃない!それだけは確か!

シェフ!
こっそり覗かない!
侍女のみなさん!目頭をそっと押さえない!
「ああ!ちゃんと戻されました!」「成長なさいましたね…」じゃない!おかしいから!

俺はバイキングという名のおかしなディナーを全員に注目されながらなんとか切り抜けたのだった。
もう絶対にとりすぎたりしない!
おうちでは普通のご飯がいいから!



夕食後、キースとお散歩。
最近は夜のおさんぽが定番なのだ。
散歩してたら、突然キースにクスクス笑われた。

「サフィって本当にみんなに愛されてるよな」
「家族の愛が重い……」
「良い家族だ。羨ましいな」

ちょっと遠い目をするキース。
遠い故郷を思い出してるのかな?
しかし、他人事のように言っているのが気にくわぬ!
ここは断固として主張させてもらおう!

「キースの家族でもあるでしょ。
家族って、一緒のお家にいる人たちって意味なんだよ。
ゲイルは俺のお父様であり俺の家族。
キースもティガーもマリーも家族でしょ?
俺もみんなもキースのこと家族だって思ってるよ。
前に言ったでしょうが。
もしかして忘れちゃったの?」

キースが目を真ん丸にした。
そしてとっても優しい表情に。

「ごめん。忘れちゃってたみたいだ。
サフィの家族は俺の家族でもあった」
「もう忘れちゃダメだよ!」

ぷんすかと抗議したら、

「そうだな。もう絶対に忘れない」

嬉しそうに笑った。


元の家族のこと忘れてなんて言えないけど。
そんな奴らなんて思い出せないくらいに幸せになって欲しい。
新しい家族俺たちといっしょに幸せになろうね、キース!

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