もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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不穏な影

お兄様怒る!

お兄様に続いて穴から出てきたミカミカが、あわあわしつつ元気いっぱいの俺と真っ青なナージャ、机に並ぶデザートの数々を瞬時に把握。額に手を当て「あちゃー」している。
しかし怒れるお兄様は問答無用。

「サフィ、無事かっ!キサマかサフィを誑かしたのは!
何が言い残すことはあるか?無いなら死ね!」

ナージャが言い訳説明する間も無く魔法を炸裂させようとした。
俺は大慌てで怒れる大魔人お兄様にピョーンっとジャンピングハグ!ガッツリ羽交締めしながら、心を沈めるミニミニヒール!

「ぶじぶじぶじーー!最高のおもてなしをされておりましたので、サツらないでっ!お兄様、しずまりたまええええ!」

怒りのあまり真っ赤を通り越して真っ白な顔色となっていた魔人お兄様が、徐々にお兄様に戻っていく。

「サフィ!サフィ!大丈夫?どこか痛いところはない?泣かされなかった?」

くるくると回転させられながら、全身をくまなくチェックされる俺。

「だ、だいじょぶ!だいじょぶですのでね!お兄様、落ちついて!」
「⁈これは魔力封じの腕輪!」

バキイ!
ウソでしょ⁈握りつぶしたよこの人!

「キサマ!よくも私のサフィにこのような穢らわしいものを!言い訳は無いな?そのまま死ね!」

ああ!またDEATHかお兄様!

「ダメーッ!俺はなんともないですのでね!どうどうどう!」

「申し訳ございません!」

視界の端で腰を抜かしたナージャがそのまま五体投地の態勢に。黒豹さんがそんなナージャをその身体で庇っている。

「まあ、落ち着けレオン。まずは話を聞いてみようぜ?」

ミカミカが腕を組みながらため息をついた。

「で。何がどうしてこうなった?」





「…というわけなの」

俺はさっき聞いたナージャの事情をお兄様に話した。
もちろん「内緒だよ」と念押ししましたよ!
途中、ナージャが俺を娶ろうとしたあたりでお兄様が物凄い怒気を発して周りが凍りつく事体はあったが、なんとかご理解いただきました。

ちなみに俺の場所はお兄様のお膝の上。ガッツリしっかりと抱え込まれておりまする。
これくらいでお兄様が鎮まりなさるのならば!いくらでも乗りましょう!

「事情は理解した。だが、それはあなたの勝手な事情だ。我が国になんの関係が?
そもそもサフィが聖女だと誰が言った?仮に聖女だとしても、他国の聖女を拉致しようとしたからには国際問題となるが、それを理解しての行動か?」

おお!俺と同じこと言ってるう!
パチパチパチ!
俺は思わず拍手!

すると唇を噛み締め項垂れていたナージャが、決死の表情で顔を上げた。

「それでも!それでも私には聖女に賭けるしかないのです!私が王座についたあかつきには、必ずやこちらの国に便宜を図るとお約束致します!私にできることならばなんでも致します!
どうか……どうかお力をお貸しください!この通りです!」

膝を折りお兄様の足元に傅くナージャ。
その金色の瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。

「あなたが王座に着ける確証は無い。そちらの国では側妃と第二王子の力が増しているそうですね。その上、正妃様の聖女としてのお力も衰えている。もはやあなたには『第一王子』という立場以外、なんの後ろ盾も無い。
あなたにできること?何ができるというのですか?」

「……お兄様」

あまりに身も蓋もない指摘に、さすがにナージャが可哀想になる。

「サフィ、サフィは甘い。
あのままこの後ろ盾のない王子がサフィを連れ帰っていたらどうなったと思う?側妃の派閥は間違いなくサフィを狙ってきただろう。誰がサフィを守ってくれる?」

「……」

「ナージャ。あなたはそこまで考えてサフィを連れ去るおつもりでしたか?連れて行けばなんとかなる、と安易なお考えではありませんでしたか?」

お兄様の言葉に、ナージャは真っ青になり目を見開いた。

「サ、サフィは私が守るつもりで……」

弱々しい反論を、お兄様はピシャリと遮る。

「失礼ですが、あなたは子供だ。母親を失いたくないばかりに他者を平気で巻き込み、その先など考えない。
サフィを守る?誘拐同然に連れ去り、どうやって守るのです。娶る?ふざけないでくれ。サフィの意志は?幸せは考えたのか?
サフィは優しい子だ。あなたの話に絆されたかもしれない。
だが、私は違う。私が優先するのは、サフィの幸せだ。勝手な都合に私の大切な人を利用しないでくれ!」

お母様のことが心配で、お母様を失いたくなくて必死だったナージャ。
ナージャの気持ちが痛いほどわかる。
大切だから大好きだから、という以外にも、自分のせいでという罪悪感もあるんだろう。だからこんな無茶をしてしまったんだ。

でもお兄様の気持ちもわかる。お兄様がここまで激怒しているのは俺のため。例えば、万が一だけど俺が本当にナージャが好きでついて行きたいのだと言えば、どんなに辛くても協力してくれたに違いない。
お兄様は、それくらい俺のことを想ってくれてる。

どちらの気持ちもわかる俺は、何も言えなくなってしまった。
ナージャを助けてあげたいけど、こんなに俺のことを想ってくれてるお兄様には逆らえない。俺にとってはナージャよりお兄様の方がだいじ。
それにゲイルやキースの意見も聞かなきゃ。俺の優先は、俺の家族。

だけど。だけど、ナージャはもうひとりの俺なんだ。もしお母様が生きていたら、きっと俺も…。
エリアナは無理だったけど、ナージャのお母様なら助けられる。




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