180 / 538
不穏な影
お兄様怒る!
お兄様に続いて穴から出てきたミカミカが、あわあわしつつ元気いっぱいの俺と真っ青なナージャ、机に並ぶデザートの数々を瞬時に把握。額に手を当て「あちゃー」している。
しかし怒れるお兄様は問答無用。
「サフィ、無事かっ!キサマかサフィを誑かしたのは!
何が言い残すことはあるか?無いなら死ね!」
ナージャが言い訳する間も無く魔法を炸裂させようとした。
俺は大慌てで怒れる大魔人にピョーンっとジャンピングハグ!ガッツリ羽交締めしながら、心を沈めるミニミニヒール!
「ぶじぶじぶじーー!最高のおもてなしをされておりましたので、サツらないでっ!お兄様、しずまりたまええええ!」
怒りのあまり真っ赤を通り越して真っ白な顔色となっていた魔人が、徐々にお兄様に戻っていく。
「サフィ!サフィ!大丈夫?どこか痛いところはない?泣かされなかった?」
くるくると回転させられながら、全身をくまなくチェックされる俺。
「だ、だいじょぶ!だいじょぶですのでね!お兄様、落ちついて!」
「⁈これは魔力封じの腕輪!」
バキイ!
ウソでしょ⁈握りつぶしたよこの人!
「キサマ!よくも私のサフィにこのような穢らわしいものを!言い訳は無いな?そのまま死ね!」
ああ!またDEATHかお兄様!
「ダメーッ!俺はなんともないですのでね!どうどうどう!」
「申し訳ございません!」
視界の端で腰を抜かしたナージャがそのまま五体投地の態勢に。黒豹さんがそんなナージャをその身体で庇っている。
「まあ、落ち着けレオン。まずは話を聞いてみようぜ?」
ミカミカが腕を組みながらため息をついた。
「で。何がどうしてこうなった?」
「…というわけなの」
俺はさっき聞いたナージャの事情をお兄様に話した。
もちろん「内緒だよ」と念押ししましたよ!
途中、ナージャが俺を娶ろうとしたあたりでお兄様が物凄い怒気を発して周りが凍りつく事体はあったが、なんとかご理解いただきました。
ちなみに俺の場所はお兄様のお膝の上。ガッツリしっかりと抱え込まれておりまする。
これくらいでお兄様が鎮まりなさるのならば!いくらでも乗りましょう!
「事情は理解した。だが、それはあなたの勝手な事情だ。我が国になんの関係が?
そもそもサフィが聖女だと誰が言った?仮に聖女だとしても、他国の聖女を拉致しようとしたからには国際問題となるが、それを理解しての行動か?」
おお!俺と同じこと言ってるう!
パチパチパチ!
俺は思わず拍手!
すると唇を噛み締め項垂れていたナージャが、決死の表情で顔を上げた。
「それでも!それでも私には聖女に賭けるしかないのです!私が王座についたあかつきには、必ずやこちらの国に便宜を図るとお約束致します!私にできることならばなんでも致します!
どうか……どうかお力をお貸しください!この通りです!」
膝を折りお兄様の足元に傅くナージャ。
その金色の瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。
「あなたが王座に着ける確証は無い。そちらの国では側妃と第二王子の力が増しているそうですね。その上、正妃様の聖女としてのお力も衰えている。もはやあなたには『第一王子』という立場以外、なんの後ろ盾も無い。
あなたにできること?何ができるというのですか?」
「……お兄様」
あまりに身も蓋もない指摘に、さすがにナージャが可哀想になる。
「サフィ、サフィは甘い。
あのままこの後ろ盾のない王子がサフィを連れ帰っていたらどうなったと思う?側妃の派閥は間違いなくサフィを狙ってきただろう。誰がサフィを守ってくれる?」
「……」
「ナージャ。あなたはそこまで考えてサフィを連れ去るおつもりでしたか?連れて行けばなんとかなる、と安易なお考えではありませんでしたか?」
お兄様の言葉に、ナージャは真っ青になり目を見開いた。
「サ、サフィは私が守るつもりで……」
弱々しい反論を、お兄様はピシャリと遮る。
「失礼ですが、あなたは子供だ。母親を失いたくないばかりに他者を平気で巻き込み、その先など考えない。
サフィを守る?誘拐同然に連れ去り、どうやって守るのです。娶る?ふざけないでくれ。サフィの意志は?幸せは考えたのか?
サフィは優しい子だ。あなたの話に絆されたかもしれない。
だが、私は違う。私が優先するのは、サフィの幸せだ。勝手な都合に私の大切な人を利用しないでくれ!」
お母様のことが心配で、お母様を失いたくなくて必死だったナージャ。
ナージャの気持ちが痛いほどわかる。
大切だから大好きだから、という以外にも、自分のせいでという罪悪感もあるんだろう。だからこんな無茶をしてしまったんだ。
でもお兄様の気持ちもわかる。お兄様がここまで激怒しているのは俺のため。例えば、万が一だけど俺が本当にナージャが好きでついて行きたいのだと言えば、どんなに辛くても協力してくれたに違いない。
お兄様は、それくらい俺のことを想ってくれてる。
どちらの気持ちもわかる俺は、何も言えなくなってしまった。
ナージャを助けてあげたいけど、こんなに俺のことを想ってくれてるお兄様には逆らえない。俺にとってはナージャよりお兄様の方がだいじ。
それにゲイルやキースの意見も聞かなきゃ。俺の優先は、俺の家族。
だけど。だけど、ナージャはもうひとりの俺なんだ。もしお母様が生きていたら、きっと俺も…。
エリアナは無理だったけど、ナージャのお母様なら助けられる。
しかし怒れるお兄様は問答無用。
「サフィ、無事かっ!キサマかサフィを誑かしたのは!
何が言い残すことはあるか?無いなら死ね!」
ナージャが言い訳する間も無く魔法を炸裂させようとした。
俺は大慌てで怒れる大魔人にピョーンっとジャンピングハグ!ガッツリ羽交締めしながら、心を沈めるミニミニヒール!
「ぶじぶじぶじーー!最高のおもてなしをされておりましたので、サツらないでっ!お兄様、しずまりたまええええ!」
怒りのあまり真っ赤を通り越して真っ白な顔色となっていた魔人が、徐々にお兄様に戻っていく。
「サフィ!サフィ!大丈夫?どこか痛いところはない?泣かされなかった?」
くるくると回転させられながら、全身をくまなくチェックされる俺。
「だ、だいじょぶ!だいじょぶですのでね!お兄様、落ちついて!」
「⁈これは魔力封じの腕輪!」
バキイ!
ウソでしょ⁈握りつぶしたよこの人!
「キサマ!よくも私のサフィにこのような穢らわしいものを!言い訳は無いな?そのまま死ね!」
ああ!またDEATHかお兄様!
「ダメーッ!俺はなんともないですのでね!どうどうどう!」
「申し訳ございません!」
視界の端で腰を抜かしたナージャがそのまま五体投地の態勢に。黒豹さんがそんなナージャをその身体で庇っている。
「まあ、落ち着けレオン。まずは話を聞いてみようぜ?」
ミカミカが腕を組みながらため息をついた。
「で。何がどうしてこうなった?」
「…というわけなの」
俺はさっき聞いたナージャの事情をお兄様に話した。
もちろん「内緒だよ」と念押ししましたよ!
途中、ナージャが俺を娶ろうとしたあたりでお兄様が物凄い怒気を発して周りが凍りつく事体はあったが、なんとかご理解いただきました。
ちなみに俺の場所はお兄様のお膝の上。ガッツリしっかりと抱え込まれておりまする。
これくらいでお兄様が鎮まりなさるのならば!いくらでも乗りましょう!
「事情は理解した。だが、それはあなたの勝手な事情だ。我が国になんの関係が?
そもそもサフィが聖女だと誰が言った?仮に聖女だとしても、他国の聖女を拉致しようとしたからには国際問題となるが、それを理解しての行動か?」
おお!俺と同じこと言ってるう!
パチパチパチ!
俺は思わず拍手!
すると唇を噛み締め項垂れていたナージャが、決死の表情で顔を上げた。
「それでも!それでも私には聖女に賭けるしかないのです!私が王座についたあかつきには、必ずやこちらの国に便宜を図るとお約束致します!私にできることならばなんでも致します!
どうか……どうかお力をお貸しください!この通りです!」
膝を折りお兄様の足元に傅くナージャ。
その金色の瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。
「あなたが王座に着ける確証は無い。そちらの国では側妃と第二王子の力が増しているそうですね。その上、正妃様の聖女としてのお力も衰えている。もはやあなたには『第一王子』という立場以外、なんの後ろ盾も無い。
あなたにできること?何ができるというのですか?」
「……お兄様」
あまりに身も蓋もない指摘に、さすがにナージャが可哀想になる。
「サフィ、サフィは甘い。
あのままこの後ろ盾のない王子がサフィを連れ帰っていたらどうなったと思う?側妃の派閥は間違いなくサフィを狙ってきただろう。誰がサフィを守ってくれる?」
「……」
「ナージャ。あなたはそこまで考えてサフィを連れ去るおつもりでしたか?連れて行けばなんとかなる、と安易なお考えではありませんでしたか?」
お兄様の言葉に、ナージャは真っ青になり目を見開いた。
「サ、サフィは私が守るつもりで……」
弱々しい反論を、お兄様はピシャリと遮る。
「失礼ですが、あなたは子供だ。母親を失いたくないばかりに他者を平気で巻き込み、その先など考えない。
サフィを守る?誘拐同然に連れ去り、どうやって守るのです。娶る?ふざけないでくれ。サフィの意志は?幸せは考えたのか?
サフィは優しい子だ。あなたの話に絆されたかもしれない。
だが、私は違う。私が優先するのは、サフィの幸せだ。勝手な都合に私の大切な人を利用しないでくれ!」
お母様のことが心配で、お母様を失いたくなくて必死だったナージャ。
ナージャの気持ちが痛いほどわかる。
大切だから大好きだから、という以外にも、自分のせいでという罪悪感もあるんだろう。だからこんな無茶をしてしまったんだ。
でもお兄様の気持ちもわかる。お兄様がここまで激怒しているのは俺のため。例えば、万が一だけど俺が本当にナージャが好きでついて行きたいのだと言えば、どんなに辛くても協力してくれたに違いない。
お兄様は、それくらい俺のことを想ってくれてる。
どちらの気持ちもわかる俺は、何も言えなくなってしまった。
ナージャを助けてあげたいけど、こんなに俺のことを想ってくれてるお兄様には逆らえない。俺にとってはナージャよりお兄様の方がだいじ。
それにゲイルやキースの意見も聞かなきゃ。俺の優先は、俺の家族。
だけど。だけど、ナージャはもうひとりの俺なんだ。もしお母様が生きていたら、きっと俺も…。
エリアナは無理だったけど、ナージャのお母様なら助けられる。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。