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俺とレオンの婚約式
ブルーな俺なのです
翌日、数日ぶりに学校に行くと、ニヤニヤしたいつメンが待ち構えていた。
「おはよう、サフィ!聞いたぜ?
おめでとう!」
「ロマンチックだったんでしょうねえ!詳しく教えてっ!」
「まあまあ、サフィだって疲れてるだろうしね?まずは落ちつこう、ミント」
「で?僕たち、サフィ様って呼んだ方がいい?」
「いやいやいや、早くない⁈
めっちゃ早いね?何で知ってるの?」
すると情報源は思わぬところだった。
「会長が鎮痛な顔で登校してね?
サフィは王城にお泊まりで休みだっていうから」
「あとは察し、ってやつ!」
「ずっとため息ついてるんだもの!サフィ、あとでフォローしときなさいよ?」
うーん。レオのショックは俺というより公爵のアレに気づいちゃったからでは?
さすがにハルパパのあの事件は言えないだろうから仕方ないけど。
一応学校にも俺の婚約は伝えられていて、俺の扱いは「王家に準ずるもの」になった。
といってももう学食でレオンがやらかしておるので、俺は非公式に「レオンハルト王子の伴侶」。したがって周りの反応は何も変わらない。
相変らず校内を歩けば「おはようサフィちゃん」「今日はいるんだね」とお菓子をくれる。
俺の頭をなで「どうか〇〇が叶いますように!」と拝む人もいる。
どうやら俺はラッキーチャーム扱いされているようだ。
ミルくんに言えば
「え?知らなかったの?ほんとにサフィを撫でるとご利益あるみたいだよ?」
「うん。なんとなく運がよくなるっていうか。それは前から言われてたよ?」
おお。冒険者ギルドで言われてたやつか!
運が明暗を分ける冒険者なら分かるけど、こんなとこでもラッキーは発揮されておったのですな。
どおりで皆さまお菓子をくれるわけだ。
あれはお布施だったのか!
「なんかさあ。婚約したらば、レオンの空気が急に変わってびっくりしたんだけど、学校はみんな変わらないねえ」
ダラダラしながらしみじみ呟けば、ミントの目がギラリと光った。
「なに?!そんなに変わられたの?これまでだって十分甘々だったじゃない!
どういう風に?ねえ?」
「いや、待てよ!それって俺たちが聞いていいやつか?あとで誰からとはいわんが、殺られたりしねえ?」
「言わなくていいから!レオンハルト様のイメージをこれ以上壊さないで!!!」
俺は慌てて開きかけたお口をぱくんと閉じた。
こうしてみると、学校は平和そのもの。
授業だって面白いし、魔法の授業なんて最高だもん。
ランチだって美味しいし、デザートだってあるし。
ああ、ずっと学校でこうしていたい……。
そんなことを思うあたり、俺ってば疲れてるのかもしれない。
は!これってばもしかして……
「またにてぃぶるー?」
ぽつりと零せば、みんなのお口があんぐりとあいた。
「まって?今なんていった?ま、まさかサフィ、レオンハルト様とそんな……」
「あ、間違えた。なんだっけ、結婚前とかになるやつ……」
「マリッジブルー?」
「そうそれ!!」
「あ、アンタって子は!間違えるにしても限度があるでしょおおおお!!」
「イタタタタタタ!!」
ギリギリギリ、とミルくんにこめかみをぐりぐりされた。
「へへへ……」
「?は?なんで笑ってるの?」
「こういうの、いいなってさ」
言ったら「アンタそういう趣味が……」って目をされた。
違うからねっ?
そういう意味じゃなくってえ!
「ドラゴン狩ったりとか、いきなり甘々砂糖漬けみたいになったりとか、日常じゃないことばっかりしてるとね、こういう普通が一番だなって思うの。
あとね、王子と婚約するなんてことがあると、日常の尊さってやつをしみじみと感じちゃうんだよ……」
日常の尊さを語ったのだが、こやつらには伝わらなかったもよう。
「なんかおじいさんみたいなことを言い出したね?」
「ドラゴン狩るとか、言ってる中身は凄いけどな」
「君たちになんということのない日常の尊さがわからぬのです!
あっちこっちでいろんな目にあってみなされ!俺のゆってることわかると思う!」
「てゆーか、それ全部サフィが自分で招いてるやつだし!」
「そうよねえ。普通はそんないろんな目に合わないのよ?」
こういう双子のツッコミすら尊い。
実は俺は気づいてしまったのだ。
いまさらすぎて、逆にどうして気付かなかったのかとすら思うんだけど。
小さなころから当たり前みたいに王城とウチとを行き来して育ったから忘れてた。
レオンは、王子。つまり、それって将来はこの国の王様になるってことなんだよね。
てことは。
このままいくと、俺は将来王妃様になるってことなのでは?!
この国の!いわゆる国母ってやつになってしまうのでは?!
ねえねえねえ!俺だよ?この俺なんだよ?いいの?
そもそも、俺ってば普通に冒険者続けるつもりなんだけど!
ドラゴンだって乗ったりするつもりだし、好きなことして楽しく生きるつもりなんだけど!
ギルドとかにも行くし、孤児院にも通いたいし、下町を歩き回るのだって大好き。
だけど、王妃様がそういうのって……いいのかなあ?
もっと難しいことを言えば、俺にこの国をまとめるお手伝いなんぞできるのだろうか。
帝国に言って偉そうなことを言ってはきたが、それはあくまでも第三者だから言えること。
自分たちが法を決めたり、善悪を判断していく。それってすごく怖いよね。
一人の決断が国民みんなを左右しちゃうんだもん。
かといって、レオンだけにそれを背負わせるのは違うと思う。
じゃあレオンが他の人と……って思うと、胸がぎゅうっとなって苦しくなって、絶対に無理、って思っちゃう。
まだ10歳だけど、さすがに分かる。
もう後戻りはできないんだって。
そう思ったらば、急に婚約とか結婚とかがふわふわしたものから生々しいものに思えちゃって、なんだか怖くなってしもうたのだ。
だけど、こういうのって誰に言ったらいいの?
将来俺が王妃になるっていうのが怖いとか、みんなに言ったらわかってくれるのかなあ?
色々考えるとなんだかもやもやっとして、それでもこうやって日常やみんなと話してたりするとちょっとだけ和らいで、日常って尊いなあって思うわけなのですよ。
「おはよう、サフィ!聞いたぜ?
おめでとう!」
「ロマンチックだったんでしょうねえ!詳しく教えてっ!」
「まあまあ、サフィだって疲れてるだろうしね?まずは落ちつこう、ミント」
「で?僕たち、サフィ様って呼んだ方がいい?」
「いやいやいや、早くない⁈
めっちゃ早いね?何で知ってるの?」
すると情報源は思わぬところだった。
「会長が鎮痛な顔で登校してね?
サフィは王城にお泊まりで休みだっていうから」
「あとは察し、ってやつ!」
「ずっとため息ついてるんだもの!サフィ、あとでフォローしときなさいよ?」
うーん。レオのショックは俺というより公爵のアレに気づいちゃったからでは?
さすがにハルパパのあの事件は言えないだろうから仕方ないけど。
一応学校にも俺の婚約は伝えられていて、俺の扱いは「王家に準ずるもの」になった。
といってももう学食でレオンがやらかしておるので、俺は非公式に「レオンハルト王子の伴侶」。したがって周りの反応は何も変わらない。
相変らず校内を歩けば「おはようサフィちゃん」「今日はいるんだね」とお菓子をくれる。
俺の頭をなで「どうか〇〇が叶いますように!」と拝む人もいる。
どうやら俺はラッキーチャーム扱いされているようだ。
ミルくんに言えば
「え?知らなかったの?ほんとにサフィを撫でるとご利益あるみたいだよ?」
「うん。なんとなく運がよくなるっていうか。それは前から言われてたよ?」
おお。冒険者ギルドで言われてたやつか!
運が明暗を分ける冒険者なら分かるけど、こんなとこでもラッキーは発揮されておったのですな。
どおりで皆さまお菓子をくれるわけだ。
あれはお布施だったのか!
「なんかさあ。婚約したらば、レオンの空気が急に変わってびっくりしたんだけど、学校はみんな変わらないねえ」
ダラダラしながらしみじみ呟けば、ミントの目がギラリと光った。
「なに?!そんなに変わられたの?これまでだって十分甘々だったじゃない!
どういう風に?ねえ?」
「いや、待てよ!それって俺たちが聞いていいやつか?あとで誰からとはいわんが、殺られたりしねえ?」
「言わなくていいから!レオンハルト様のイメージをこれ以上壊さないで!!!」
俺は慌てて開きかけたお口をぱくんと閉じた。
こうしてみると、学校は平和そのもの。
授業だって面白いし、魔法の授業なんて最高だもん。
ランチだって美味しいし、デザートだってあるし。
ああ、ずっと学校でこうしていたい……。
そんなことを思うあたり、俺ってば疲れてるのかもしれない。
は!これってばもしかして……
「またにてぃぶるー?」
ぽつりと零せば、みんなのお口があんぐりとあいた。
「まって?今なんていった?ま、まさかサフィ、レオンハルト様とそんな……」
「あ、間違えた。なんだっけ、結婚前とかになるやつ……」
「マリッジブルー?」
「そうそれ!!」
「あ、アンタって子は!間違えるにしても限度があるでしょおおおお!!」
「イタタタタタタ!!」
ギリギリギリ、とミルくんにこめかみをぐりぐりされた。
「へへへ……」
「?は?なんで笑ってるの?」
「こういうの、いいなってさ」
言ったら「アンタそういう趣味が……」って目をされた。
違うからねっ?
そういう意味じゃなくってえ!
「ドラゴン狩ったりとか、いきなり甘々砂糖漬けみたいになったりとか、日常じゃないことばっかりしてるとね、こういう普通が一番だなって思うの。
あとね、王子と婚約するなんてことがあると、日常の尊さってやつをしみじみと感じちゃうんだよ……」
日常の尊さを語ったのだが、こやつらには伝わらなかったもよう。
「なんかおじいさんみたいなことを言い出したね?」
「ドラゴン狩るとか、言ってる中身は凄いけどな」
「君たちになんということのない日常の尊さがわからぬのです!
あっちこっちでいろんな目にあってみなされ!俺のゆってることわかると思う!」
「てゆーか、それ全部サフィが自分で招いてるやつだし!」
「そうよねえ。普通はそんないろんな目に合わないのよ?」
こういう双子のツッコミすら尊い。
実は俺は気づいてしまったのだ。
いまさらすぎて、逆にどうして気付かなかったのかとすら思うんだけど。
小さなころから当たり前みたいに王城とウチとを行き来して育ったから忘れてた。
レオンは、王子。つまり、それって将来はこの国の王様になるってことなんだよね。
てことは。
このままいくと、俺は将来王妃様になるってことなのでは?!
この国の!いわゆる国母ってやつになってしまうのでは?!
ねえねえねえ!俺だよ?この俺なんだよ?いいの?
そもそも、俺ってば普通に冒険者続けるつもりなんだけど!
ドラゴンだって乗ったりするつもりだし、好きなことして楽しく生きるつもりなんだけど!
ギルドとかにも行くし、孤児院にも通いたいし、下町を歩き回るのだって大好き。
だけど、王妃様がそういうのって……いいのかなあ?
もっと難しいことを言えば、俺にこの国をまとめるお手伝いなんぞできるのだろうか。
帝国に言って偉そうなことを言ってはきたが、それはあくまでも第三者だから言えること。
自分たちが法を決めたり、善悪を判断していく。それってすごく怖いよね。
一人の決断が国民みんなを左右しちゃうんだもん。
かといって、レオンだけにそれを背負わせるのは違うと思う。
じゃあレオンが他の人と……って思うと、胸がぎゅうっとなって苦しくなって、絶対に無理、って思っちゃう。
まだ10歳だけど、さすがに分かる。
もう後戻りはできないんだって。
そう思ったらば、急に婚約とか結婚とかがふわふわしたものから生々しいものに思えちゃって、なんだか怖くなってしもうたのだ。
だけど、こういうのって誰に言ったらいいの?
将来俺が王妃になるっていうのが怖いとか、みんなに言ったらわかってくれるのかなあ?
色々考えるとなんだかもやもやっとして、それでもこうやって日常やみんなと話してたりするとちょっとだけ和らいで、日常って尊いなあって思うわけなのですよ。
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