もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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連合案件

学校っていいな3

わあああい、とぴょんぴょんしていると、ミルくんが吠えた。

「ちょっとお!先生、サフィを甘やかさない!!」

「いや、だってよお。確かに可哀そうだろ?ちっこいのにいろいろ頑張ってんだぜ?成績だってトップだし」

そうそう!負けるな、先生!頑張って!!

しかしミルくんは強かった。

「オネダリしたらなんでも許されるって思っちゃったらどうするんですか?教育に悪いでしょっ!!」

そんな言い方に俺はかちん。
思わずミルくんにくってかかる。

「オネダリとかしないもんっ!『どうしてもの時しかやっちゃダメ』ってゲイルが言ってたし!どうしてもの時だけだもんっ!!」

俺だって、できることはやる。これまでだって頑張ったでしょ?
やらなきゃなこと、やった方がいいこと、やりたいこと。時間的にどうしても全部はできない。
学校に来なきゃできるけど、学校には来たいんだもん。
優先順位をつけると、課題がどうしたって後になるんだもん。
バースのことは言っていいのかまだわかんないけど、丸投げしっぱなしよりちょっとはお手伝いしたい。
学校があるから無理だけど、課題をやめたら確認するくらいはできる。
だから。だから。

ぐっと唇を噛み締めた俺を見て、ミルくんが少しだけ語調を緩めた。
先生ではなく俺の方にしっかりと向き直り、俺の目を見つめる。

「サフィ。理由があるならちゃんと言いな?単なるオネダリとかワガママじゃないんでしょ。なら、言えるでしょ?」

まるで聞き分けの無い小さな子を諭すような声に、少しだけ冷静になった。

「……理由はまだ言えないの。言っていいのかわかんないから。
だけど、大事なことなの。課題がなければできるんだもん。ゲイルにお願いしたけど、ホントは俺が頼まれたことなの」

曖昧な言葉だったのに、それを聞いたミルくんはほほ笑んだ。
よく言えたね、と俺の頭をなでなで。
優しい手つきに強張っていた身体から力が抜ける。
理由ちゃんと言ってないよ?
だって外交問題に関わることだもん。どこまで言っていいのか分からないから何も言えないの。
それでも、あれで分かってくれるの?

「なら、それを言わなきゃ。婚約のお祝いにってオネダリして課題免除なんて、ダメでしょ。婚約って大切なことでしょ。そんな風に使っちゃダメ!
それに言い訳で免除するのは良くないの。きちんと理由があるなら伝える、言えない理由があるならそれを伝えてお願いしなきゃね?分かった?」

確かに、俺は婚約に関係ないことのために、婚約を免罪符にしようとした。
ちょうどいいからって、便利に使おうとしたんだ。
レオンがあんなに喜んで幸せそうにしてくれたのに。大切な大切な婚約なのに。
そうか。それでミルくんは……。

たぶんミルくんは将来側近になるために今から俺を鍛えてくれようとしてる。
これまでとは違い、これからの俺は「未来の王妃」だから。何も知らないままじゃダメだから。

「うん。うん、分かった!
ミルくん、叱ってくれてありがと。俺、ダメなことしちゃってた」

「ふん!分かればいいの。じゃあ、やることがあるでしょ?ほら」

ミルくんは自分が憎まれ役になっても俺のために叱ってくれた。
俺の甘えや間違いをしっかりと指摘して、さらに背中を押してくれた。
その気持ちに応えなきゃ。

俺は改めてシオン先生に向き直り、真摯に頭を下げた。


「ズルしてごめんなさい、先生。俺が悪かったの。
あのね、訂正します。お祝いじゃなくって、課題を免除してください。ついでに補講も免除してください。俺には助けてあげたい人がいます。お手伝いしたいの。詳しいことは言えませんが、お願いします!」



「…………いや、コレ俺の方が教師として失格な感じだよな?
すまん。俺も悪かった。
お前の婚約祝いじゃなく、お前の忙しい立場と状況を考慮し、課題と補講を免除する。
……これでいいか?」

ミルくんがにっこりと笑みを浮かべ、俺も一生懸命頷いた。




このやり取りに、クラスメートの間に緊張が走る。
あちこちでボソボソと密談が始まった。

「お、おい。これ今後の俺たちもヤバいんじゃないか?」
「へたにサフィを甘やかすとミルが怖えぞ?」
「サフィのために、俺たちもあえて厳しくしていかねえとなあ……」
「だね。甘やかして困るのはサフィだもんね」
「でも、ものすごく頑張ってるわよ?だから、友人として手を貸せるところは貸してあげましょうよ」
「私もそう思いますわ。なかなか上手な加減が難しそうですけど」
「だよなあ!サフィ見てるとつい甘やかしたくなるんだよなあ」
「そうそう。サフィもなんだかんだあちこちで人助けしてるしさ。すげえいい子なんだもん」

み……みなさーん……聞こえておりまするよおおお……。




そののち、なぜかみんな俺に食べ物をくれるようになった。
アメとかチョコとか、クッキーとか。
ミルくんが「甘やかしの方向を変えたらいいってもんじゃないでしょっ!!」と吠えた。
俺の側近候補が怖いので、お気持ちだけ頂きます。



※※※※※


申し訳ございません。
木曜日まで更新をお休みさせて頂きまする……。次の更新は金曜日となります。
私事で色々やることが多く重なっておりまして……
楽しみにしてくださっているお優しい方がた、申し訳ないですうううう。。

近日また更新情報などご報告させて頂きますので、お待ちくださりませ。

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