もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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僅かな日常

★★★書籍発売記念SS 本編ではまだまだ遠い未来のサフィちゃん★★★

いつも通りサフィを抱きしめて眠ったはずなのに……
腕の中の大切な存在の感触が……明らかに違う。

「?!」

さあっと体中から血の気が引いた。
なんだ、何が起こった?

ゆっくりと手を這わせれば……

「んん……まだ眠いよお……」

サフィに似て非なる声。
しかし口調は確かにサフィそのもの。

激しく鳴り響く胸を押さえ、そうっと起き上がり上掛けをめくれば……

「え?」

そこに居たのは紛れもなくサフィ。
……いつものサフィよりも成長したサフィだった。

今は優しく閉じられた大きな瞳の周りにはまるで羽毛のようにけぶった長いまつげがびっしりと。
ふっくらとまろみを帯びた頬は、その柔らかさを残したまま、大人びたスッキリとしたラインに。
すうすうと健やかな吐息を漏らす可愛らしい蕾のような唇は、つやつやとしたサクランボのように美味しそうだ。

おもわずゴクリと喉を鳴らす。

そのまま視線をおろしていけば……

15か16歳くらいだろうか?
まだ成長途中の猫のようにしなやかな身体。
恵まれた長い手足。
染み一つない美しい白い肌は、まるでそれ自体が光を放っているかのようだ。
ミルクティーにも似た長い金髪がその細く魅惑的な肢体に添って美しい稜線を描き、細くくびれたウエストでかわいらしい渦を作っている。

「どうして」とか「何が起こっているのか」よりも先に私の胸に浮かんだのは「綺麗だ」「美しい」という言葉だった。

元々サフィの容姿は非常に整っている。
美のサフィールと言われるサフィール家の血、氷の美貌を誇るグランディー家の血、その双方のサラブレッドなのだからさもあらん。

ともすれば精巧なビスクドールにも見えるその容姿にもかかわらず「可愛い」「元気な」という言葉が似あうのは、サフィの発する生き生きとした輝きゆえ。
いつも楽しそうにキラキラと輝いた瞳。
なにか良いことがあったかのように両端の少し上がった口元は、いつも笑みを湛えているように見える。
ピンクに色づいた頬、その幼げな言動。
それらすべてがサフィを特別な存在にしていた。

しかしそれはあくまでも、言葉にするならば「可愛らしい」「愛らしい」なのだ。
……最近はそれに……少しなんというか……健康な色気も加わってはきたものの「サフィを一言で」と言われれば一番に「可愛い」が浮かぶ。


しかし、このサフィは……美しかった。綺麗だった。
私のサフィが天使なら、このサフィは妖精だ。大精霊のように清浄で清らかな美しさを身に纏っている。

触れたら消えてしまうのではないか、そんな懸念すら抱いてしまうほどに。

私は、ふっ、と自嘲した。
先ほどまで抱きしめて眠っていたというのに、何を馬鹿なことを。
私はサフィが絡むと簡単におかしくなってしまうのだ。

とにかく、この少年がサフィであることは間違いない。
私が夢見ているサフィ、……成長し、愛を交わす日のサフィそのものの姿なのだから。
いや、それよりももっと……。

「これは……夢かな?ふふ。夢でも会えて嬉しいよ、サフィ。
私の未来の愛しい人」

ああ、少し触れるくらいは許されるだろうか?
ほんの少しだけ………

震える指を頬に伸ばせば、指に吸い付くような滑らかな感触に思わずため息が漏れた。
胸が甘い疼きを訴える。
これはあまりにも……今の私には毒だ。

でも、夢ならば……夢でくらいは………

そっと顔を近づければ、その目蓋がふるふると微かに震えた。

「うう……ん。なあにい……?」

「ごめんね?起こしてしまったかな?
まだ寝ていていいよ?」

そう、ここは夢の中なのだから。

「レオン?……え?えええ?
あー、あーー、なんか俺の声、おかしくない?ええええ?」

おもむろに目をぱっちりと開けるサフィ。
慌てたように喉に触れようと手を上げ

「!!俺の手!!おっきい!えええ?!なんでえええっ?!」

自身の手を目にして文字通り飛び上がった。

「え?これは私の夢でしょう?」
「はあ?何言ってんのレオン!現実ですけど?!目を覚ましてえええええ!!!」

ガシッと身体を掴んで揺さぶられる。

「サ、サフィ?!」



ガバッ!


「よ、よかったあああああ!」


目の前には、私の愛しい子。可愛いサフィが。


「………サフィ?」


何故か泣きそうな表情で私に抱き着いてきた。


「いつもは俺より先に起きてるのに、今日のレオンってば幸せそうな顔して全然起きないんだもん!
お名前呼んでも起きないし、揺すっても起きないから……!!!」

「そうか。心配させてしまったんだね。ごめんね?」

ぎゅっと抱きしめれば、この腕の中にすっぽりと納まる小さな身体。
ああ、私のサフィだ。

「ふふふ。夢でね、……素敵な人に逢ったんだ」

あのサフィも素敵だったけれど、やはり私のサフィはこちらの方がしっくりくる。
魅惑の精霊を思い出していると、グイっと腕をひかれた。
そこには不機嫌そうに「むすう」と頬を膨らませたサフィが。


「レオンが夢で逢った素敵な人って誰?
俺が心配していた間に浮気ですか?
へえええ?はあああああ?ほおおおおお?」


……これはもしかして……


「……サフィ、ヤキモチをやいてくれているの?」

膨らんだ頬をそっと撫でると、余計に膨らんでしまった。

「なんでレオン嬉しそうなの?!
浮気した癖に!
この浮気ものーーーっ!!
俺が、俺がまだ小さいからって!!浮気はだめでしょおおおおおお!!」

プンスカと目に涙を浮かべて抗議するサフィには悪いが……
ああ、なんてなんて愛おしいんだろう。
この小さな可愛らしい存在が、愛おしくてたまらない。

「ふふふふ。そうだね。浮気はダメだよ?
あのね、夢で逢っていたのはサフィだよ?」

ちゅ、と目蓋にキス。

きょとん、と目を丸くするサフィ。

「……へ?俺?
いまさら俺の夢であんなに幸せそうににこにこしてたの?
毎日会ってるのに?なんなら今も一緒にいるのに?」

かああああ、と一気に赤くなるのが、可愛くてたまらない。

「うん。私はサフィといるといつでも幸せなんだ。
夢でね、たぶん……5年後くらいのサフィにあったんだよ。
大きくなっていて……とても美しかった」

そう教えれば、なぜか複雑そうな表情になってしまった。

「?どうしたの、サフィ?」
「…………やっぱり大人の方がいい?」

困ったように眉を下げた姿が、可愛そうなのにどうしようもなく可愛い。
ああ、やはり私のサフィを目にすると何よりも先に「可愛い」「愛おしい」が来てしまう。
あの綺麗で美しいサフィはとても魅力的だった。
でも……

「あのね、サフィ。私はサフィの成長を一番近くで見守ることができるのが嬉しいんだ。
小さなサフィが成長するのをずっとゲイルと共に見守ってきた。
その楽しみを奪わないで?
大きなサフィはとても美しかったけれど、私はね、今のこのサフィを愛しているんだよ?
私のサフィがいつかあのサフィになる。だから愛おしい。それだけなんだ」

心からの気持ちを伝える。

「……ならいいです。
たとえ俺でも浮気はダメですのでね?分かった?!」

つん、と尖らせた唇を指でつまむ。
うん。どんな顔をしても可愛いね?

「浮気なんてあり得ないよ。サフィのことしか見えないのに」




本心なのに「それもどうかと思うけどね」と言われてしまう。
そんなところも可愛いよ、サフィ。




※※※※


ひたすらサフィが可愛くてたまらないお兄様なのでありました。






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