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6、婚約破棄にはそれなりの理由が必要なのです
これはもう話をするだけ無駄ね。二人とも理解する知能を持っていないんだもの。面倒だわ。
私は高位貴族にふさわしい「内面を見せない笑み」を浮かべて見せた。
「婚約破棄は構いませんが、この婚約は王命なのです。ですから、殿下から婚約破棄するにはそれなりの理由が必要なのです。ここまで説明させていただいてもご理解いただけないようで、残念ですわ。ですが、殿下からではなく私の側から破棄を申し出ることは可能です。理由は『アレックス殿下の心変わり』『婚約者への罵倒・不当な扱い』『婚約者の目の前での不貞』といったところでしょうか?『名誉棄損』も付け加えてもいいかもしれませんわね。」
「は?キサマ、何を言っている!心変わりはともかく、不当な扱い、不貞などと、まるで私に非があるようではないか!」
「あら、非が無いとでも?婚約者がありながら他のご令嬢と不謹慎な距離で常に行動を共にするのは、不貞行為に当たります。それに、そこのご令嬢が証拠もなしに私に冤罪をかけましたわよね?偽証罪になるのかしら?それとも、男爵家のご令嬢が高位である公爵家の私に冤罪をかけたのですから、不敬罪も追加ですわねえ。殿下もそれを信じ、このような公の場で私を罵倒されたのですから、同罪ですわよ?とすれば共謀罪……。ああ、まだありましたわ。婚約者のための支度金をそこの女性につぎ込んでおられますよね?知らないとでも思っていらしたの?証拠は既に押さえておりますわよ。こちらは横領と文書偽造かしら?」
ひとつひとつあげて指折り数えるたびに、二人の顔色がどんどん悪くなっていきます。
「あら、どうしましょう!きりがないわ……」
「困りましたわ」と口元を押さえて首を振って憂いを帯びた表情を耳をそばだてていた観客の皆様にお見せすれば、あちこちのテーブルから「まあ……」「なんということかしら!」と殿下に対する非難の声が聞こえてまいりました。
ええ。グッジョブですわ。どうぞこの茶番に積極的にご参加くださいな。皆様のお声が大きければ大きいほど、私の力になるのですもの。
前半はともかく、後半は公金ですからね。王族であろうと罰せられます。ちなみにこれは一例ですの。まだまだありましてよ?
「ねえ殿下?どの理由にしたらよろしいでしょうか?いくつ理由が必要ですか?ひとつ?ふたつ?それとも全て?」
ここで思わずクスリと笑みが漏れてしまいました。
「ね?いい加減ご理解いただけました?これこそが正当な婚約破棄の理由というものですわ。単に気に入らないからなどというのは、理由にはなりませんの。先に言っておきますわね。私の罪をでっち上げても無駄です。ご自分の立場を悪くするだけですよ?
言い終えた私は、固まったお二人に向かって、優雅に一礼。
さあ。もういいわよね?務めは十分果たしたわ。
「あなたたち。例の物を!」
パンパンと手を叩けば、潜んでいた公爵家の影がすかさず「殿下が婚約者に贈った宝石のリストと請求書」「婚約者に贈ったドレスのリストと請求書」を手渡してくれます。
ええ、私が婚約者となった際、父が公爵家の影をつけてくれましたの。父も私も全くアレックス様を信頼しておりませんでした。彼を諌めたせいで逆恨みされ、いわれのない罪を着せられでもしたら困りますもの。
予め「万が一」がないように手を打っておくのがジーニアス流なのです。
陰に渡された書類を掲げ、アホックスの目の前でパラパラとめくります。
「ちなみに私はきちんと証拠をそろえておりましてよ? こちらがあなたが婚約者のための予算を使って『婚約者に贈る』のだと買い求めた品目のリストです。…まあ、不思議ですわ。このどれ一つとして、私、受け取った記憶がございませんの。どこに消えたのでしょうねえ?」
にこりと微笑み首を傾げてみせれば、アレックス様がハッと顔を上げ鬼の首を取ったかのように喚きだしました。
「い、いや!渡したはずだ!婚約者である私の贈り物を覚えていないとは、やはり君は薄情なのだな。贈られたものも覚えていない薄情な婚約者、それが婚約破棄の理由だ!」
往生際が悪くまだ仰いますか。減らず口がお上手ですわね。
ではこちらも…
「仕方ありませんねえ。あなたが私に贈ったとされているものを読み上げますね? ブルーダイヤとプラチナのブローチ…」
ちらり。
「あら、ご令嬢のつけていらっしゃるブローチ、この目録にあるものとよく似ていらっしゃいますわねえ?」
首を傾げて見せば、小娘が慌てたようにブローチを隠します。
「こ、これは……そう、お前が私のプレゼントを勝手に売り払っていたのだ!私はそれを買い戻しただけだ!これこそが婚約破棄の理由だ!!」
呆れて物が言えないとはこのことです。アレックス様、あなたいったい誰に向かって言っているの?
王国一の資産を誇るジーニアスが、頂いたプレゼントを売り払うですって?
「……この私が?その程度のはした金のために、わざわざ?話になりませんわね」
私は高位貴族にふさわしい「内面を見せない笑み」を浮かべて見せた。
「婚約破棄は構いませんが、この婚約は王命なのです。ですから、殿下から婚約破棄するにはそれなりの理由が必要なのです。ここまで説明させていただいてもご理解いただけないようで、残念ですわ。ですが、殿下からではなく私の側から破棄を申し出ることは可能です。理由は『アレックス殿下の心変わり』『婚約者への罵倒・不当な扱い』『婚約者の目の前での不貞』といったところでしょうか?『名誉棄損』も付け加えてもいいかもしれませんわね。」
「は?キサマ、何を言っている!心変わりはともかく、不当な扱い、不貞などと、まるで私に非があるようではないか!」
「あら、非が無いとでも?婚約者がありながら他のご令嬢と不謹慎な距離で常に行動を共にするのは、不貞行為に当たります。それに、そこのご令嬢が証拠もなしに私に冤罪をかけましたわよね?偽証罪になるのかしら?それとも、男爵家のご令嬢が高位である公爵家の私に冤罪をかけたのですから、不敬罪も追加ですわねえ。殿下もそれを信じ、このような公の場で私を罵倒されたのですから、同罪ですわよ?とすれば共謀罪……。ああ、まだありましたわ。婚約者のための支度金をそこの女性につぎ込んでおられますよね?知らないとでも思っていらしたの?証拠は既に押さえておりますわよ。こちらは横領と文書偽造かしら?」
ひとつひとつあげて指折り数えるたびに、二人の顔色がどんどん悪くなっていきます。
「あら、どうしましょう!きりがないわ……」
「困りましたわ」と口元を押さえて首を振って憂いを帯びた表情を耳をそばだてていた観客の皆様にお見せすれば、あちこちのテーブルから「まあ……」「なんということかしら!」と殿下に対する非難の声が聞こえてまいりました。
ええ。グッジョブですわ。どうぞこの茶番に積極的にご参加くださいな。皆様のお声が大きければ大きいほど、私の力になるのですもの。
前半はともかく、後半は公金ですからね。王族であろうと罰せられます。ちなみにこれは一例ですの。まだまだありましてよ?
「ねえ殿下?どの理由にしたらよろしいでしょうか?いくつ理由が必要ですか?ひとつ?ふたつ?それとも全て?」
ここで思わずクスリと笑みが漏れてしまいました。
「ね?いい加減ご理解いただけました?これこそが正当な婚約破棄の理由というものですわ。単に気に入らないからなどというのは、理由にはなりませんの。先に言っておきますわね。私の罪をでっち上げても無駄です。ご自分の立場を悪くするだけですよ?
言い終えた私は、固まったお二人に向かって、優雅に一礼。
さあ。もういいわよね?務めは十分果たしたわ。
「あなたたち。例の物を!」
パンパンと手を叩けば、潜んでいた公爵家の影がすかさず「殿下が婚約者に贈った宝石のリストと請求書」「婚約者に贈ったドレスのリストと請求書」を手渡してくれます。
ええ、私が婚約者となった際、父が公爵家の影をつけてくれましたの。父も私も全くアレックス様を信頼しておりませんでした。彼を諌めたせいで逆恨みされ、いわれのない罪を着せられでもしたら困りますもの。
予め「万が一」がないように手を打っておくのがジーニアス流なのです。
陰に渡された書類を掲げ、アホックスの目の前でパラパラとめくります。
「ちなみに私はきちんと証拠をそろえておりましてよ? こちらがあなたが婚約者のための予算を使って『婚約者に贈る』のだと買い求めた品目のリストです。…まあ、不思議ですわ。このどれ一つとして、私、受け取った記憶がございませんの。どこに消えたのでしょうねえ?」
にこりと微笑み首を傾げてみせれば、アレックス様がハッと顔を上げ鬼の首を取ったかのように喚きだしました。
「い、いや!渡したはずだ!婚約者である私の贈り物を覚えていないとは、やはり君は薄情なのだな。贈られたものも覚えていない薄情な婚約者、それが婚約破棄の理由だ!」
往生際が悪くまだ仰いますか。減らず口がお上手ですわね。
ではこちらも…
「仕方ありませんねえ。あなたが私に贈ったとされているものを読み上げますね? ブルーダイヤとプラチナのブローチ…」
ちらり。
「あら、ご令嬢のつけていらっしゃるブローチ、この目録にあるものとよく似ていらっしゃいますわねえ?」
首を傾げて見せば、小娘が慌てたようにブローチを隠します。
「こ、これは……そう、お前が私のプレゼントを勝手に売り払っていたのだ!私はそれを買い戻しただけだ!これこそが婚約破棄の理由だ!!」
呆れて物が言えないとはこのことです。アレックス様、あなたいったい誰に向かって言っているの?
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「……この私が?その程度のはした金のために、わざわざ?話になりませんわね」
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