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8、このような方が国のトップだなんて……本当にガッカリ
さあ、そろそろ閉幕の時間ですわよ。
「あなたからこの不毛な婚約の終わりをお申し出頂きましたこと、感謝申し上げます。王太子の地位と引き換えになりましょうが、仕方ありませんわよね?そちらの男爵令嬢のご実家もかなり被害を被ることになりましょうが……真実の愛のためですものね?」
満面の笑みを浮かべ、言葉を失った恋人たちに最後の挨拶を致しました。
「婚約破棄にご協力頂き感謝致します。アレックス様とエリザべス様のご婚約が無事に成立致しますよう、私も心からお祈り申し上げますわ。
では、もうお会いすることもないでしょうが、失礼致しますわね」
スカートを軽く摘んで膝を折り、綺麗な礼を披露いたします。
エリザべス様? これが淑女として正しい挨拶の仕方ですのよ?あなたには無理でしょうけれど。せめてしかとその目に焼き付けておくといいわ。
私はすぐに邸に戻り、父に事の次第を報告いたしました。
「お父様、失礼致します。あのお約束は覚えていらっしゃいますか?時が来ました。私に最高の婚約者を見つけて頂きたく存じます」
「アレはダメだったか。うむ。話は影から聞いておる」
父も口には出しませんでしたが、相当腹に据えかねていたようです。王家の影だけでなく、公爵家からも「私とあちらに」影をつけておりましたので、全て連絡はいっていたのでしょう。
「これまですまなかった。……長い間苦労させたな」
と言って、私の労をねぎらってくれたのでした。
良かったわ。ここで「もう少し頑張れなかったのか」などと言われておりましたら、父のことも見限ってしまうところでしたもの。
父はすぐに王城に遣いをやってくれました。
そして自身も私を伴って王城に向かい、陛下に私のそろえた証拠を突き付け、殿下との婚約破棄を願い出たのでした。
「既にご存じでございましょう?」
陛下は黙ってその証拠をご覧になりました。その瞳に浮かぶのは、諦観。
「これ以上殿下を庇いたてなさるようならば、他の貴族たちも黙ってはおりますまい。陛下、お覚悟なさいませ。陛下にはもう一人、立派な後継ぎがいらっしゃるではありませぬか」
そうです。正妃様のお生みになった第二王子、エリオット殿下です。
側妃様を重用する陛下に愛想をつかし、、正妃様はエリオット様を連れ離宮に篭っていらっしゃいます。そして優秀な人材を離宮に集め、孤児院の支援、貧困対策、街の整備や社交など、王妃としての公務を行っていらっしゃるのです。
私も何度か正妃様のお茶会に招待され、お話をする機会を頂いたのですが……正妃様から溢れ出る気品はもちろん、幅広い知識、温かな人柄、それでありながら腐敗を許さぬ確固とした姿勢には感服致しました。
全く、陛下はなぜこのように素晴らしいお方がいらっしゃるのに、側妃様などに……。ああ、これ以上は不敬ですわね。
正妃様は、私が「将来できることならこの方のお力になりたい」などと第一王子の婚約者の身でありながら見果てぬ夢を見るほどに、憧れているお方なのです。
私はあえて感情を乗せず事実だけを口にいたしました。
「お父様、それは第二王子のエリオット殿下のことでしょうか?私もエリオット殿下は非常に優秀なお方であると聞き及んでおりますわ」
陛下は私の言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような表情をなさいました。第一王子ばかりを可愛がっているというのは本当のようです。眉を寄せ、うなるようにして、こう吐き捨てられたのです。
「……あれは、苛烈な母の陰に隠れているだけの臆病者だと聞いておる。あのように口うるさい女に育てられては誰でもそうなるであろう」
苛烈?口うるさい?
真面目な正妃様は、職務を放棄して側妃様との時間を優先する陛下に何度も苦言を呈したと伺っております。もしかして、そのことを仰っているのでしょうか?
開いた口が塞がらないとはこのこと。
陛下と側妃様、アレックス様は似た者同士なのですね。とても良くわかりました。
「口を挟む無礼をお許しください。陛下、臆病者だと仰るのは、エリオット殿下のどのような点をさしていらっしゃるのでしょう?
殿下は素晴らしいお方です。優しすぎる側面もございますが、臆病ものではございません。すべき決断をきちんとなさるお方です。
どうか、ご自分のお二人のお子を公平な目で見てご判断ください」
我慢ならず申し上げた私を、陛下はこの一言で切り捨てました。
「確かに無礼だな」
椅子の背に背を投げかけ、足を前に投げ出した尊大な仕草。もう話は済んだといわんばかりです。
「ご令嬢。あなたには迷惑をかけた。だが、私と息子のことに口を出すのはやめてもらおう。
婚約解消は認める。が、破棄は許さぬ。
なんと言われようと、私はアレックスがかわいいのだ。親として息子を見捨てるような決定はできぬ。
アレックスに王としての資質が足りぬというのであれば、良い側近で周りを固めればよいだけのこと。そうではないか?」
これにはさしものお父様も言葉を失っておりました。
お気持ちとても良くわかります。このような方が国のトップだなんて……本当にガッカリです。
「あなたからこの不毛な婚約の終わりをお申し出頂きましたこと、感謝申し上げます。王太子の地位と引き換えになりましょうが、仕方ありませんわよね?そちらの男爵令嬢のご実家もかなり被害を被ることになりましょうが……真実の愛のためですものね?」
満面の笑みを浮かべ、言葉を失った恋人たちに最後の挨拶を致しました。
「婚約破棄にご協力頂き感謝致します。アレックス様とエリザべス様のご婚約が無事に成立致しますよう、私も心からお祈り申し上げますわ。
では、もうお会いすることもないでしょうが、失礼致しますわね」
スカートを軽く摘んで膝を折り、綺麗な礼を披露いたします。
エリザべス様? これが淑女として正しい挨拶の仕方ですのよ?あなたには無理でしょうけれど。せめてしかとその目に焼き付けておくといいわ。
私はすぐに邸に戻り、父に事の次第を報告いたしました。
「お父様、失礼致します。あのお約束は覚えていらっしゃいますか?時が来ました。私に最高の婚約者を見つけて頂きたく存じます」
「アレはダメだったか。うむ。話は影から聞いておる」
父も口には出しませんでしたが、相当腹に据えかねていたようです。王家の影だけでなく、公爵家からも「私とあちらに」影をつけておりましたので、全て連絡はいっていたのでしょう。
「これまですまなかった。……長い間苦労させたな」
と言って、私の労をねぎらってくれたのでした。
良かったわ。ここで「もう少し頑張れなかったのか」などと言われておりましたら、父のことも見限ってしまうところでしたもの。
父はすぐに王城に遣いをやってくれました。
そして自身も私を伴って王城に向かい、陛下に私のそろえた証拠を突き付け、殿下との婚約破棄を願い出たのでした。
「既にご存じでございましょう?」
陛下は黙ってその証拠をご覧になりました。その瞳に浮かぶのは、諦観。
「これ以上殿下を庇いたてなさるようならば、他の貴族たちも黙ってはおりますまい。陛下、お覚悟なさいませ。陛下にはもう一人、立派な後継ぎがいらっしゃるではありませぬか」
そうです。正妃様のお生みになった第二王子、エリオット殿下です。
側妃様を重用する陛下に愛想をつかし、、正妃様はエリオット様を連れ離宮に篭っていらっしゃいます。そして優秀な人材を離宮に集め、孤児院の支援、貧困対策、街の整備や社交など、王妃としての公務を行っていらっしゃるのです。
私も何度か正妃様のお茶会に招待され、お話をする機会を頂いたのですが……正妃様から溢れ出る気品はもちろん、幅広い知識、温かな人柄、それでありながら腐敗を許さぬ確固とした姿勢には感服致しました。
全く、陛下はなぜこのように素晴らしいお方がいらっしゃるのに、側妃様などに……。ああ、これ以上は不敬ですわね。
正妃様は、私が「将来できることならこの方のお力になりたい」などと第一王子の婚約者の身でありながら見果てぬ夢を見るほどに、憧れているお方なのです。
私はあえて感情を乗せず事実だけを口にいたしました。
「お父様、それは第二王子のエリオット殿下のことでしょうか?私もエリオット殿下は非常に優秀なお方であると聞き及んでおりますわ」
陛下は私の言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような表情をなさいました。第一王子ばかりを可愛がっているというのは本当のようです。眉を寄せ、うなるようにして、こう吐き捨てられたのです。
「……あれは、苛烈な母の陰に隠れているだけの臆病者だと聞いておる。あのように口うるさい女に育てられては誰でもそうなるであろう」
苛烈?口うるさい?
真面目な正妃様は、職務を放棄して側妃様との時間を優先する陛下に何度も苦言を呈したと伺っております。もしかして、そのことを仰っているのでしょうか?
開いた口が塞がらないとはこのこと。
陛下と側妃様、アレックス様は似た者同士なのですね。とても良くわかりました。
「口を挟む無礼をお許しください。陛下、臆病者だと仰るのは、エリオット殿下のどのような点をさしていらっしゃるのでしょう?
殿下は素晴らしいお方です。優しすぎる側面もございますが、臆病ものではございません。すべき決断をきちんとなさるお方です。
どうか、ご自分のお二人のお子を公平な目で見てご判断ください」
我慢ならず申し上げた私を、陛下はこの一言で切り捨てました。
「確かに無礼だな」
椅子の背に背を投げかけ、足を前に投げ出した尊大な仕草。もう話は済んだといわんばかりです。
「ご令嬢。あなたには迷惑をかけた。だが、私と息子のことに口を出すのはやめてもらおう。
婚約解消は認める。が、破棄は許さぬ。
なんと言われようと、私はアレックスがかわいいのだ。親として息子を見捨てるような決定はできぬ。
アレックスに王としての資質が足りぬというのであれば、良い側近で周りを固めればよいだけのこと。そうではないか?」
これにはさしものお父様も言葉を失っておりました。
お気持ちとても良くわかります。このような方が国のトップだなんて……本当にガッカリです。
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