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第1章
波乱の再会 その3 ~プレイボーイとウサギの絆創膏~
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テスト準備期間も半ばに入ったこの日はいつもと違う事が起きた。女子4人の勉強会が行われない事になったのだ。どうやら先生役のエリカに用事があって、今日はそれぞれ自習する事になり早々に学校を後にしていた。
二郎はいつも通り校内の見周りをして写真部の部屋に顔を出し、16時前になる事を確認して部屋を出た。この写真部のある地学準備室は別館の2階にあり、位置的には二郎達のクラス教室のある本館2階の正面に位置していた。
二郎が部屋から出て向かいの教室を見ると、1,2,3,5組の教室には人影はなく、2年4組だけいつも通り四葉が一人、窓際で自習している姿が見えた。その姿を見てせっかくなので飲み物でも差し入れしようと、二郎は本館一階の自動販売機へ向かった。
冷たいミルクティーを1本買い階段を上がり2階のフロアに着くと、四葉以外は誰もいないはずの廊下から人の声が聞こえてきた。
何か嫌な予感を感じた二郎が少し急ぎ足で4組に向かうと一人の男子が四葉に迫るように何かを言っているようだった。二郎は息を殺しながら教室の中を見た。
(結城さんと・・・あいつは確か、五十嵐だったか)
「結城さん。実は俺、君の事がずっと好きだったんだ。俺は隣のクラスの五十嵐瞬って言って野球部に入っている。俺は君が本当は可愛いってこと知ってるんだよ。そんな変な格好してないでメガネとマスク取ってみてくれないか」
瞬は初めこそ小さな声で話し始めたものの、緊張なのか興奮なのか、だんだんと声が大きくなっていることに気づかず四葉に迫っていった。
「なんですか、いきなり。私はあなたの事なんて知りませんし、付き合う気もありません。やめてください」
四葉は本気のドン引きのトーンで瞬の告白を一蹴した。
「どうしてだよ、こんな毎日一人で自習なんかして、せっかくの高校時代なんだしもっと遊びたいだろ。お前だって恋人作ってもっと色々したいと思わないのかよ」
瞬は四葉の思わぬ反応に緊張から怒りのこもった言葉で再度迫った。
「いや、マジで迷惑なのでやめてください!」
四葉はゴミを見るような目つきで拒絶した。
「嘘つくなよ、お前だって本当は彼氏でも作って遊びたいんだろ。友達も一人もいないような奴を俺が彼女にしてやるって言ってんだから、おとなしく俺の女になれば良いんだよ」
瞬はまさか振られとは思わなかった相手からの一切忖度もない断りに、プライドを傷つけられ、逆上した勢いでいきなり四葉の手を握りしめ怒鳴りつけた。
「やめて、痛っ」
四葉は怖くなり顔を下に逸らし身をかがめた。
そのとき閉じられていたドアが勢いよく開かれた。
「おい、てめー、その手を離せ。ぶち殺すぞ!」
二郎が我慢の限界だという顔で瞬をにらみ付けた。
「誰だ、お前、どうしてこんな時間にここにいるんだよ」
「うるせーボケ、早くその汚ねー手を離せ。マジでしばくぞ、こら!!」
二郎はさっきよりも大きな声で瞬に怒鳴りつけた。
その勢いに押され手を離した瞬は、二郎の方に体を向けた。
「お前、確か山田だったか。なんだよ一年の時に同じクラスだった根暗野郎じゃねーか」
瞬は一年の時にクラスで目立たなかった二郎を見て、気を大きくして見下した態度をとった。
「そういうお前は、・・・誰だったかな。ごめん、マジで分からないわ」
二郎は瞬であることを分かっていたが、あえて相手をおちょくるように答えた。
「ふざけんな、五十嵐だっての。なんでお前ごときが俺の名前を忘れてんだよ。最下層民が!」
瞬は自分よりも下と見ていた二郎の物言いに、やり返すように二郎を見下す台詞を吐いた。
それもそうだった。一年の時から二郎はクラスでも目立たず、一部の生徒と交流を持つくらいで、クラス全体から見れば居ても居なくてもどうでも良さそうな影の薄い存在だったため、そんな奴からいきなり怒鳴られたことが我慢ならなかった。
「知らねーよ、そんなこと。それよりお前、彼女に何してんだよ。迷惑だって言ってんだろ。さっさと諦めて消えろ。バカが」
「ふざけんな、調子に乗ってんじゃねーぞ。なんで俺がこんな根暗なブスに振られなきゃいけないんだよ。こんなの俺が少し遊んでやろうと思って声かけてやっただけだろ、バっカじゃねーの」
瞬は自分が盛大に振られたことを棚上げし、四葉の悪口を言い始めた。
「アホか、お前。いつも一生懸命で、真面目に目標に向かって頑張ってる彼女に、お前のようなカスが釣り合う分けねーだろ。彼女を馬鹿にするのもいい加減にしろ!・・・お前、これが何か分かるか。お前が全力で振られた様子を取った動画だよ」
二郎は彼女を全力で擁護した後、瞬を黙らせるために右手に持った携帯を前に出し、先程の様子を再生して見せた。
「お前なんでそんなモノ持ってんだよ」
「お前には悪いが、昨日お前ら野球部の連中がでかい声で話していた事を聞いててな。初めはこんなことするつもりはなかったんだが、正直、お前みたいなクソ野郎と彼女が付き合うのは我慢ならなくてな。それにお前なら今みたいに強引に迫っていきそうな気がして証拠の為に取っておいたんだよ」
二郎は事が起こったときに、瞬が後々面倒事を起こさないように脅す材料として動画を撮影していた。
「ふざけんな、そんなモノ誰が信じるかよ」
「そうか、そんじゃ、試しに3組の連中に見てもらうかな。女子はどう反応するだろうな。ゴミくずを見るようにお前を扱うだろうな。男子には笑いの種にされて卒業までずっとお前はいじられ続けるだろうよ。どうだ。やってみるか」
一切の容赦を見せない二郎が、瞬に今後起こるであろう未来予想図を話し聞かせた。
「ま、ま待ってくれ、冗談だよ。俺が悪かった。謝るから勘弁してくれよ」
瞬は二郎の言葉にようやく状況を理解したのか顔面蒼白になりながら二郎に謝った。
「バカか、お前は、謝るのは俺じゃねーだろ。謝る必要があるのは彼女にだろ」
二郎は瞬から四葉に視線を移しながら謝罪を促した。
「すみません、俺、正直振られるなんて思いもしなかったから、カッとして、本当にごめん」
瞬は冷静さを取り戻したのか、素直に四葉に対して謝った。
「もういいですから、頭を上げてください」
四葉は一秒でも早く瞬との関わりを絶ちたいと、素っ気なく話を終わらせ顔をそらした。
瞬はこれ以上この場にいることに我慢できずに、足早に教室から出ようとして二郎に呼び止められた。
「おい、五十嵐。今後、お前がもし彼女に何かいやがらせを何かしてみろ。このことを校内にばらまくから覚悟しとけよ。言っておくが、彼女を守るためなら、お前みたいな奴の学校生活がどうなろうと知ったこっちゃないからな。それをよく頭に入れておけよ」
二郎は小学生の頃に起きた事を思い出しながら、二度と自分の知らぬところで、自分の友人が傷つけられることがないように、残酷なまでに瞬に追い打ちをかけて釘を刺した。
瞬が教室からいなくなり二人の間に一瞬の沈黙が訪れた。
(俺、何やってんだ。彼女を助けるためとはいえ、人の告白を撮影までして邪魔して、あまつさえいきなり割り込んだあげくに、何様のつもりなのか、上から彼女の事をあれこれ言って、最後には脅しまでかけて、これじゃどっちが悪党なのか分からないわ。あー、気持ち悪い勘違い野郎だって思われたよな。どうするかな)
二郎は自分が思いのほか今の状況下において冷静さを失っていたことに気づき、客観的に見てかなり痛い勘違い男だと自分の一連の行動を評価しうなだれていた。
一方で、四葉は目の前で二人の男が自分をめぐりる争いで言い合いをしている状況に頭の整理が追いつかない状況に陥っていた。
(一体何が起こったの。どうして私はいきなり名前も知らない男子から告白されて、しかも、なぜか山田君が絶好のタイミングで現れたと思ったら、自分よりも怒っていて、そのうえ、なぜか私凄く褒められてるし。それになんで山田君はこんな状況で証拠になるような動画なんて撮って五十嵐君を脅してるの。何が一体どうしてこうなったの。でも、山田君が来てくれて良かった。なんだかんだで、山田君がいなかったらどうなっていたか分からないし、とりあいず、感謝を伝えないと駄目だよね)
四葉は頭の中で一連の流れを思い出しながら、少しずつ落ち着きを取り戻し、二郎に声をかけた。
「山田君、あの、えーと、その、助けてくれてありがとうね」
二郎は四葉から少し離れた席に座り頭を抱えていたが、四葉の声に気づき立ち上がった。
「いや、ごめん、急にしゃしゃり出てきて。こんなつもりはなかったんだけど、気がついたら体が動いていて」
二郎は四葉をまっすぐに見つめて素直に自分の気持ちを伝えた。
「そんなことないよ、ありがとう。正直、いきなり男の人に手を掴まれて怖かったから、本当に助かったよ」
四葉は急に向けられた真剣な眼差しにドギマギして、視線を外して答えた。
「そうか、それなら良かったけど、なんかその、あれこれ偉そうに言ってしまってごめん。いきなり現れて引くよな。マジで」
「まぁイメージしてたよりもハードコアでワイルドな言動で驚いたけど、それは個性だし良いんじゃないかな」
二郎の心配に、恥ずかしさをごまかすためか斜め上からのフォローを入れた四葉に二郎が思わずツッコミを入れる。
「いやいや、普段こんな話し方しないし、ワイルドとは真逆の存在だぞ俺は」
名誉を挽回するために必死で言い訳をする二郎に四葉が笑って言った。
「ハハハ、ごめんね、山田君、冗談だから。そんなに一生懸命否定しなくても分かってるよ。山田君が私を守ってくれるためにあんな怖い口調で彼に言ってくれたんでしょ。ありがとう、本当に」
四葉は恥ずかしさをごまかすのをやめて、二郎の気持ちを素直に受け取り感謝を伝えた。
二郎はとりあえず名誉挽回が出来たことにホっと一息ついたところで、四葉の手を見て心配そうに言った。
「手は大丈夫か、もし赤くなっていたら、これで冷やしてくれ。君に差し入れと思って買ってきた紅茶だから」
「え、嘘、わざわざ私のために買ってきてくれたの。ありがとう」
四葉は素直に紅茶缶を受け取って手を冷やし始めた。
その様子を見ていた二郎がある事に気がついた。
「その絆創膏、どこかで見たような。あれ、どこだっけ」
二郎が無意識につぶやいていると、四葉が笑いながら何かをやり始めた。
「ふふふ、そっか、山田君、まだ気づいてないんだね。ごめんね。隠してるわけじゃないんだけど、話すチャンスがなくて」
そんなことを言いながら四葉はメガネやマスクを取り外し、髪を後ろに結び始めた。みるみるうちに今まで顔の半分も見えなかった地味なメガネっ子の四葉が、どこかで見たことのあるような大人びた女性店員の姿に変わっていった。
「え、どういうことだ。・・・あ、ウサギの絆創膏、どこかで見たことがあると思ったら、パン屋の店員さん。という事は、君があの人なの。え、マジですか」
二郎はこの日一番の間の抜けた驚き顔で、四葉を指さしながら言った。
「そうだよ、いつもお買い上げありがとうございます。今日の焼きたてのパンはまだ分かりませんがまた買いに来て下さいね」
四葉が接客用の笑顔と話し口調で二郎にお辞儀した。
「そうか、だから、この前行った時、なんだかよそよそしくしていたのか。この前の教室で初めて話したときに、すぐに言ってくれれば良かったのに、ひどいじゃないか」
「私もあの教室で会った時は気づかなくて、君が店に来てようやく最近店に良く来るウチの学生だって知ったんだよ。私もいきなりのことで恥ずかしくて焦っちゃって、一度奥に逃げ込んでどうして良いか分からずあたふたしてたんだから。でもあの時は邪険に扱ってしまってごめんね」
四葉は事情を説明して、両手を合わせてウィンクして先日のそっけない対応を謝った。
「そうだったのか、それなら良かったよ。俺もしかしたら毎回オススメを聞くから、めんどくさい奴だと思われたかと思って、不安だったんだよ。あー、良かったわ」
二郎は安心した様子でいると、四葉が追い打ちをかける。
「まぁ、若干面倒なときもあるけどね。それも仕事だからいいけどね」
「え、マジで、迷惑だったか。もうオススメを聞くのはやめます、ごめんなさい」
「冗談、冗談、大丈夫だから、いつでも気にせずオススメ聞いてね。山田君って真面目だね」
そんなやり取りをしながら、瞬のことなどすっかり二人は記憶から消し去っていた。
そんなこんなで時間は16時30分を過ぎていた。
「そろそろ帰ろうか」
四葉が声をかける。
「そうだな、今日もバイトなのか」
「ううん、さすがにテスト前だしバイトはお休みだよ」
「じゃどうして、わざわざ学校に残って勉強してたんだ」
二郎が不意に思った疑問を四葉に問いかけた。
「え、それはその・・・。もしかしたらまた話しができるかなと思って」
「話が出来るって誰とさ」
「それは・・・・山田君とだよ」
「どうして。そんなこと」
二郎は理解しがたい四葉の言葉に驚きをみせる。
「だって、この前、教室での帰り際に、また声をかけていいかって、言ったじゃん山田君」
「それでバイトもないのに居残り勉強してたのか、毎日」
「そうだよ、昨日も一昨日も私がいたの知ってたくせに、何回もスルーするから、さすがに泣きそうになったよ。しかも昨日、クラスが同じのレベッカが君と一緒にハッピータウン食べながら勉強したとかなんとか自慢してきて、激おこだったんだから私。声かけるとか言って他の女子と楽しく勉強しちゃって。山田君、なかなかのプレイボーイだよね、まったく」
四葉は今週になってから放置されていた怒りをすねた顔で二郎にぶつけていた。
「いや、あれはレベッカに急に勉強教えてほしいって言われて、仕方なく一緒に勉強してただけだし」
「そう、随分レベッカと仲がいいみたいね。ふん、山田君なんて冷めた食パンでも食べてれば良いわよ」
「そう怒らずに、頼むぜ。結城さん」
二郎は平謝りで、彼女の名を呼んだ。
「ふふふ、ごめんね、これも冗談だって。そうだ、もし山田君が良ければ、二郎君って呼んでも良いかな。私のことも四葉でいいからさ。そしたら私を放置してレベッカと楽しくハッピータウンを食べていたことは許してあげるよ」
四葉は小悪魔的に二郎を手玉に取り、お互いの名前呼びを提案した。
「別に勉強を教えていただけなんだが、君がそれで良いなら良いけど。そんなんで許してくれるのかい」
「もちろん良いよ、二郎君」
「そうですか、・・・四葉さん」
二郎は満足そうに笑顔を浮かべる四葉の考えをまったく理解しきれないまま、彼女の提案を受け入れた。
こうして二郎と四葉の2週間近くにわたる不思議な出会いは幕を閉じ、新たなステージが始まるのであった。
一方、二郎と四葉の出会いの裏で繰り広げられていた三佳の赤点回避大作戦はエリカの孤軍奮闘の末、なんとか赤点を回避し、無事、三佳は関東大会に出場できることになった。さらに三佳は名だたる選手が集まる中で、なんと関東2位の成績を納めて8月の全国大会の出場券を手にすることになった。
今回の一件で最も苦労し、功績を納めたのは間違いなくエリカだろうと、二郎は思うのであった。
二郎はいつも通り校内の見周りをして写真部の部屋に顔を出し、16時前になる事を確認して部屋を出た。この写真部のある地学準備室は別館の2階にあり、位置的には二郎達のクラス教室のある本館2階の正面に位置していた。
二郎が部屋から出て向かいの教室を見ると、1,2,3,5組の教室には人影はなく、2年4組だけいつも通り四葉が一人、窓際で自習している姿が見えた。その姿を見てせっかくなので飲み物でも差し入れしようと、二郎は本館一階の自動販売機へ向かった。
冷たいミルクティーを1本買い階段を上がり2階のフロアに着くと、四葉以外は誰もいないはずの廊下から人の声が聞こえてきた。
何か嫌な予感を感じた二郎が少し急ぎ足で4組に向かうと一人の男子が四葉に迫るように何かを言っているようだった。二郎は息を殺しながら教室の中を見た。
(結城さんと・・・あいつは確か、五十嵐だったか)
「結城さん。実は俺、君の事がずっと好きだったんだ。俺は隣のクラスの五十嵐瞬って言って野球部に入っている。俺は君が本当は可愛いってこと知ってるんだよ。そんな変な格好してないでメガネとマスク取ってみてくれないか」
瞬は初めこそ小さな声で話し始めたものの、緊張なのか興奮なのか、だんだんと声が大きくなっていることに気づかず四葉に迫っていった。
「なんですか、いきなり。私はあなたの事なんて知りませんし、付き合う気もありません。やめてください」
四葉は本気のドン引きのトーンで瞬の告白を一蹴した。
「どうしてだよ、こんな毎日一人で自習なんかして、せっかくの高校時代なんだしもっと遊びたいだろ。お前だって恋人作ってもっと色々したいと思わないのかよ」
瞬は四葉の思わぬ反応に緊張から怒りのこもった言葉で再度迫った。
「いや、マジで迷惑なのでやめてください!」
四葉はゴミを見るような目つきで拒絶した。
「嘘つくなよ、お前だって本当は彼氏でも作って遊びたいんだろ。友達も一人もいないような奴を俺が彼女にしてやるって言ってんだから、おとなしく俺の女になれば良いんだよ」
瞬はまさか振られとは思わなかった相手からの一切忖度もない断りに、プライドを傷つけられ、逆上した勢いでいきなり四葉の手を握りしめ怒鳴りつけた。
「やめて、痛っ」
四葉は怖くなり顔を下に逸らし身をかがめた。
そのとき閉じられていたドアが勢いよく開かれた。
「おい、てめー、その手を離せ。ぶち殺すぞ!」
二郎が我慢の限界だという顔で瞬をにらみ付けた。
「誰だ、お前、どうしてこんな時間にここにいるんだよ」
「うるせーボケ、早くその汚ねー手を離せ。マジでしばくぞ、こら!!」
二郎はさっきよりも大きな声で瞬に怒鳴りつけた。
その勢いに押され手を離した瞬は、二郎の方に体を向けた。
「お前、確か山田だったか。なんだよ一年の時に同じクラスだった根暗野郎じゃねーか」
瞬は一年の時にクラスで目立たなかった二郎を見て、気を大きくして見下した態度をとった。
「そういうお前は、・・・誰だったかな。ごめん、マジで分からないわ」
二郎は瞬であることを分かっていたが、あえて相手をおちょくるように答えた。
「ふざけんな、五十嵐だっての。なんでお前ごときが俺の名前を忘れてんだよ。最下層民が!」
瞬は自分よりも下と見ていた二郎の物言いに、やり返すように二郎を見下す台詞を吐いた。
それもそうだった。一年の時から二郎はクラスでも目立たず、一部の生徒と交流を持つくらいで、クラス全体から見れば居ても居なくてもどうでも良さそうな影の薄い存在だったため、そんな奴からいきなり怒鳴られたことが我慢ならなかった。
「知らねーよ、そんなこと。それよりお前、彼女に何してんだよ。迷惑だって言ってんだろ。さっさと諦めて消えろ。バカが」
「ふざけんな、調子に乗ってんじゃねーぞ。なんで俺がこんな根暗なブスに振られなきゃいけないんだよ。こんなの俺が少し遊んでやろうと思って声かけてやっただけだろ、バっカじゃねーの」
瞬は自分が盛大に振られたことを棚上げし、四葉の悪口を言い始めた。
「アホか、お前。いつも一生懸命で、真面目に目標に向かって頑張ってる彼女に、お前のようなカスが釣り合う分けねーだろ。彼女を馬鹿にするのもいい加減にしろ!・・・お前、これが何か分かるか。お前が全力で振られた様子を取った動画だよ」
二郎は彼女を全力で擁護した後、瞬を黙らせるために右手に持った携帯を前に出し、先程の様子を再生して見せた。
「お前なんでそんなモノ持ってんだよ」
「お前には悪いが、昨日お前ら野球部の連中がでかい声で話していた事を聞いててな。初めはこんなことするつもりはなかったんだが、正直、お前みたいなクソ野郎と彼女が付き合うのは我慢ならなくてな。それにお前なら今みたいに強引に迫っていきそうな気がして証拠の為に取っておいたんだよ」
二郎は事が起こったときに、瞬が後々面倒事を起こさないように脅す材料として動画を撮影していた。
「ふざけんな、そんなモノ誰が信じるかよ」
「そうか、そんじゃ、試しに3組の連中に見てもらうかな。女子はどう反応するだろうな。ゴミくずを見るようにお前を扱うだろうな。男子には笑いの種にされて卒業までずっとお前はいじられ続けるだろうよ。どうだ。やってみるか」
一切の容赦を見せない二郎が、瞬に今後起こるであろう未来予想図を話し聞かせた。
「ま、ま待ってくれ、冗談だよ。俺が悪かった。謝るから勘弁してくれよ」
瞬は二郎の言葉にようやく状況を理解したのか顔面蒼白になりながら二郎に謝った。
「バカか、お前は、謝るのは俺じゃねーだろ。謝る必要があるのは彼女にだろ」
二郎は瞬から四葉に視線を移しながら謝罪を促した。
「すみません、俺、正直振られるなんて思いもしなかったから、カッとして、本当にごめん」
瞬は冷静さを取り戻したのか、素直に四葉に対して謝った。
「もういいですから、頭を上げてください」
四葉は一秒でも早く瞬との関わりを絶ちたいと、素っ気なく話を終わらせ顔をそらした。
瞬はこれ以上この場にいることに我慢できずに、足早に教室から出ようとして二郎に呼び止められた。
「おい、五十嵐。今後、お前がもし彼女に何かいやがらせを何かしてみろ。このことを校内にばらまくから覚悟しとけよ。言っておくが、彼女を守るためなら、お前みたいな奴の学校生活がどうなろうと知ったこっちゃないからな。それをよく頭に入れておけよ」
二郎は小学生の頃に起きた事を思い出しながら、二度と自分の知らぬところで、自分の友人が傷つけられることがないように、残酷なまでに瞬に追い打ちをかけて釘を刺した。
瞬が教室からいなくなり二人の間に一瞬の沈黙が訪れた。
(俺、何やってんだ。彼女を助けるためとはいえ、人の告白を撮影までして邪魔して、あまつさえいきなり割り込んだあげくに、何様のつもりなのか、上から彼女の事をあれこれ言って、最後には脅しまでかけて、これじゃどっちが悪党なのか分からないわ。あー、気持ち悪い勘違い野郎だって思われたよな。どうするかな)
二郎は自分が思いのほか今の状況下において冷静さを失っていたことに気づき、客観的に見てかなり痛い勘違い男だと自分の一連の行動を評価しうなだれていた。
一方で、四葉は目の前で二人の男が自分をめぐりる争いで言い合いをしている状況に頭の整理が追いつかない状況に陥っていた。
(一体何が起こったの。どうして私はいきなり名前も知らない男子から告白されて、しかも、なぜか山田君が絶好のタイミングで現れたと思ったら、自分よりも怒っていて、そのうえ、なぜか私凄く褒められてるし。それになんで山田君はこんな状況で証拠になるような動画なんて撮って五十嵐君を脅してるの。何が一体どうしてこうなったの。でも、山田君が来てくれて良かった。なんだかんだで、山田君がいなかったらどうなっていたか分からないし、とりあいず、感謝を伝えないと駄目だよね)
四葉は頭の中で一連の流れを思い出しながら、少しずつ落ち着きを取り戻し、二郎に声をかけた。
「山田君、あの、えーと、その、助けてくれてありがとうね」
二郎は四葉から少し離れた席に座り頭を抱えていたが、四葉の声に気づき立ち上がった。
「いや、ごめん、急にしゃしゃり出てきて。こんなつもりはなかったんだけど、気がついたら体が動いていて」
二郎は四葉をまっすぐに見つめて素直に自分の気持ちを伝えた。
「そんなことないよ、ありがとう。正直、いきなり男の人に手を掴まれて怖かったから、本当に助かったよ」
四葉は急に向けられた真剣な眼差しにドギマギして、視線を外して答えた。
「そうか、それなら良かったけど、なんかその、あれこれ偉そうに言ってしまってごめん。いきなり現れて引くよな。マジで」
「まぁイメージしてたよりもハードコアでワイルドな言動で驚いたけど、それは個性だし良いんじゃないかな」
二郎の心配に、恥ずかしさをごまかすためか斜め上からのフォローを入れた四葉に二郎が思わずツッコミを入れる。
「いやいや、普段こんな話し方しないし、ワイルドとは真逆の存在だぞ俺は」
名誉を挽回するために必死で言い訳をする二郎に四葉が笑って言った。
「ハハハ、ごめんね、山田君、冗談だから。そんなに一生懸命否定しなくても分かってるよ。山田君が私を守ってくれるためにあんな怖い口調で彼に言ってくれたんでしょ。ありがとう、本当に」
四葉は恥ずかしさをごまかすのをやめて、二郎の気持ちを素直に受け取り感謝を伝えた。
二郎はとりあえず名誉挽回が出来たことにホっと一息ついたところで、四葉の手を見て心配そうに言った。
「手は大丈夫か、もし赤くなっていたら、これで冷やしてくれ。君に差し入れと思って買ってきた紅茶だから」
「え、嘘、わざわざ私のために買ってきてくれたの。ありがとう」
四葉は素直に紅茶缶を受け取って手を冷やし始めた。
その様子を見ていた二郎がある事に気がついた。
「その絆創膏、どこかで見たような。あれ、どこだっけ」
二郎が無意識につぶやいていると、四葉が笑いながら何かをやり始めた。
「ふふふ、そっか、山田君、まだ気づいてないんだね。ごめんね。隠してるわけじゃないんだけど、話すチャンスがなくて」
そんなことを言いながら四葉はメガネやマスクを取り外し、髪を後ろに結び始めた。みるみるうちに今まで顔の半分も見えなかった地味なメガネっ子の四葉が、どこかで見たことのあるような大人びた女性店員の姿に変わっていった。
「え、どういうことだ。・・・あ、ウサギの絆創膏、どこかで見たことがあると思ったら、パン屋の店員さん。という事は、君があの人なの。え、マジですか」
二郎はこの日一番の間の抜けた驚き顔で、四葉を指さしながら言った。
「そうだよ、いつもお買い上げありがとうございます。今日の焼きたてのパンはまだ分かりませんがまた買いに来て下さいね」
四葉が接客用の笑顔と話し口調で二郎にお辞儀した。
「そうか、だから、この前行った時、なんだかよそよそしくしていたのか。この前の教室で初めて話したときに、すぐに言ってくれれば良かったのに、ひどいじゃないか」
「私もあの教室で会った時は気づかなくて、君が店に来てようやく最近店に良く来るウチの学生だって知ったんだよ。私もいきなりのことで恥ずかしくて焦っちゃって、一度奥に逃げ込んでどうして良いか分からずあたふたしてたんだから。でもあの時は邪険に扱ってしまってごめんね」
四葉は事情を説明して、両手を合わせてウィンクして先日のそっけない対応を謝った。
「そうだったのか、それなら良かったよ。俺もしかしたら毎回オススメを聞くから、めんどくさい奴だと思われたかと思って、不安だったんだよ。あー、良かったわ」
二郎は安心した様子でいると、四葉が追い打ちをかける。
「まぁ、若干面倒なときもあるけどね。それも仕事だからいいけどね」
「え、マジで、迷惑だったか。もうオススメを聞くのはやめます、ごめんなさい」
「冗談、冗談、大丈夫だから、いつでも気にせずオススメ聞いてね。山田君って真面目だね」
そんなやり取りをしながら、瞬のことなどすっかり二人は記憶から消し去っていた。
そんなこんなで時間は16時30分を過ぎていた。
「そろそろ帰ろうか」
四葉が声をかける。
「そうだな、今日もバイトなのか」
「ううん、さすがにテスト前だしバイトはお休みだよ」
「じゃどうして、わざわざ学校に残って勉強してたんだ」
二郎が不意に思った疑問を四葉に問いかけた。
「え、それはその・・・。もしかしたらまた話しができるかなと思って」
「話が出来るって誰とさ」
「それは・・・・山田君とだよ」
「どうして。そんなこと」
二郎は理解しがたい四葉の言葉に驚きをみせる。
「だって、この前、教室での帰り際に、また声をかけていいかって、言ったじゃん山田君」
「それでバイトもないのに居残り勉強してたのか、毎日」
「そうだよ、昨日も一昨日も私がいたの知ってたくせに、何回もスルーするから、さすがに泣きそうになったよ。しかも昨日、クラスが同じのレベッカが君と一緒にハッピータウン食べながら勉強したとかなんとか自慢してきて、激おこだったんだから私。声かけるとか言って他の女子と楽しく勉強しちゃって。山田君、なかなかのプレイボーイだよね、まったく」
四葉は今週になってから放置されていた怒りをすねた顔で二郎にぶつけていた。
「いや、あれはレベッカに急に勉強教えてほしいって言われて、仕方なく一緒に勉強してただけだし」
「そう、随分レベッカと仲がいいみたいね。ふん、山田君なんて冷めた食パンでも食べてれば良いわよ」
「そう怒らずに、頼むぜ。結城さん」
二郎は平謝りで、彼女の名を呼んだ。
「ふふふ、ごめんね、これも冗談だって。そうだ、もし山田君が良ければ、二郎君って呼んでも良いかな。私のことも四葉でいいからさ。そしたら私を放置してレベッカと楽しくハッピータウンを食べていたことは許してあげるよ」
四葉は小悪魔的に二郎を手玉に取り、お互いの名前呼びを提案した。
「別に勉強を教えていただけなんだが、君がそれで良いなら良いけど。そんなんで許してくれるのかい」
「もちろん良いよ、二郎君」
「そうですか、・・・四葉さん」
二郎は満足そうに笑顔を浮かべる四葉の考えをまったく理解しきれないまま、彼女の提案を受け入れた。
こうして二郎と四葉の2週間近くにわたる不思議な出会いは幕を閉じ、新たなステージが始まるのであった。
一方、二郎と四葉の出会いの裏で繰り広げられていた三佳の赤点回避大作戦はエリカの孤軍奮闘の末、なんとか赤点を回避し、無事、三佳は関東大会に出場できることになった。さらに三佳は名だたる選手が集まる中で、なんと関東2位の成績を納めて8月の全国大会の出場券を手にすることになった。
今回の一件で最も苦労し、功績を納めたのは間違いなくエリカだろうと、二郎は思うのであった。
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イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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