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第2章
ある梅雨の日 その1 ~凜と二郎の不思議な関係~ ①
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5月末の中間テストが終わり、6月も中頃となるとあのジメジメした季節がやってくる。
梅雨である。梅雨が始まると二郎の生活パターンは大きく変わる。なぜなら、校内の見回りをする必要がなくなるからである。
梅雨の季節、琴吹高校では外で部活を行っている野球部、サッカー部、テニス部、そして、陸上部が雨の日は校内トーニングを行うため、放課後の校舎内は非常に騒がしくなる。
琴吹高校は上から見るとカタカナの「エ」の字になっており、その「エ」の字の右下に体育館が少しはみ出た形になっている。雨天時に校内でトレーニングを行う時、それぞれの部毎に一つのフロアを使うことになっていた。野球部は3年のクラス教室のある本館3階を、サッカー部は2年のクラス教室のある本館2階を、テニス部は美術室や家庭科室のある別館1階を、そして写真部の地学準備室や理科室がある別館2階を陸上部が使うことになっていた。別館3階は吹奏楽部が音楽室や同フロアの他の空き教室を使用していた。
ちなみに校舎の入り口は「エ」の字の左側の渡り廊下一階部分にあり、そこから右に向かうと本館、左へ向かうと別館となっており、それぞれ2階3階につながる階段は建屋を6:4程に分ける箇所にあり、階段上って左手のフロアを6割占める方に2年、3年のクラス教室がそれぞれ2階、3階とあり、右手側に2階と3階にわたり1年の教室が割り振られていた。さらに2階右手側の奥には図書室が設置されており、3階右手側奥には生徒会室があった。また本館と別館はそれぞれの階層で渡り廊下があり自由に行き来出来る構造となっていた。この状況下において、校舎内全体は生徒で溢れている状態が作られるため、二郎の出る幕はなかった。
二郎の梅雨の放課後のパターンといえば、普通にバスケ部に出るか、写真部にお茶を飲みに行くか、生徒会に捕まり手伝いをするかのどれかだった。
梅雨が始まり1週間が経ったある日、二郎は写真部でレベッカとお茶を飲み、早々に下校する事にした。下校する生徒も見当たらない静かな下駄箱で靴を取り出していると後ろから一人の女子生徒に声をかけられた。
「あら、二郎君。今日は暇みたいね。どうせ帰るなら、ちょっと手を貸してくれないかしら」
二郎を呼び止めたのは、背中まで伸びるロングヘヤーの黒髪で、白のカチューシャを付け、整った顔立ちと色気のある大人びた声を持つ後輩男子達が憧れる生徒会副会長の二階堂凜だった。
「いや、ものすごく忙しくて、帰って大相撲の夏場所を見なくちゃいけないので、すいません、さよなら、先輩」
二郎は凜の誘いを申し訳なさそうに断り、逃げるように急いで靴を履き始めた。
「夏場所は5月で終わっているでしょ。次の名古屋場所は7月からで、6月はたしか相撲はお休みだったと思うけど、二郎君」
無駄に詳しい大相撲の日程を解説した凜は二郎のふざけた言い訳を一蹴して笑顔で後ろから二郎の肩に両手を置いた。
「いやー、そうでしたっけ。ハハハ、大相撲にまで詳しいなんて、さすが生徒会副会長様ですよ。力士同士が揺れる肉をぶつけ合って、歯を食いしばる様がお好きなんですね。良い趣味してますよ、凜先輩は、ハハハ」
二郎はあっけなくバレた嘘をごまかすように、凜を冷やかそうと軽口を叩いた。
「えぇそうね、可愛い後輩が歯を食いしばって苦しむ様子を見るのは大好きよ」
「痛たたたた、先輩、ギブです。すいません、勘弁してください」
凜はありったけの力を込めて二郎の肩を掴みながら全力で肩もみを始め、二郎の苦しむ様子を楽しむのであった。
結局、凜に捕まった二郎は本館3階の右端に位置する生徒会室へ連行された。
梅雨である。梅雨が始まると二郎の生活パターンは大きく変わる。なぜなら、校内の見回りをする必要がなくなるからである。
梅雨の季節、琴吹高校では外で部活を行っている野球部、サッカー部、テニス部、そして、陸上部が雨の日は校内トーニングを行うため、放課後の校舎内は非常に騒がしくなる。
琴吹高校は上から見るとカタカナの「エ」の字になっており、その「エ」の字の右下に体育館が少しはみ出た形になっている。雨天時に校内でトレーニングを行う時、それぞれの部毎に一つのフロアを使うことになっていた。野球部は3年のクラス教室のある本館3階を、サッカー部は2年のクラス教室のある本館2階を、テニス部は美術室や家庭科室のある別館1階を、そして写真部の地学準備室や理科室がある別館2階を陸上部が使うことになっていた。別館3階は吹奏楽部が音楽室や同フロアの他の空き教室を使用していた。
ちなみに校舎の入り口は「エ」の字の左側の渡り廊下一階部分にあり、そこから右に向かうと本館、左へ向かうと別館となっており、それぞれ2階3階につながる階段は建屋を6:4程に分ける箇所にあり、階段上って左手のフロアを6割占める方に2年、3年のクラス教室がそれぞれ2階、3階とあり、右手側に2階と3階にわたり1年の教室が割り振られていた。さらに2階右手側の奥には図書室が設置されており、3階右手側奥には生徒会室があった。また本館と別館はそれぞれの階層で渡り廊下があり自由に行き来出来る構造となっていた。この状況下において、校舎内全体は生徒で溢れている状態が作られるため、二郎の出る幕はなかった。
二郎の梅雨の放課後のパターンといえば、普通にバスケ部に出るか、写真部にお茶を飲みに行くか、生徒会に捕まり手伝いをするかのどれかだった。
梅雨が始まり1週間が経ったある日、二郎は写真部でレベッカとお茶を飲み、早々に下校する事にした。下校する生徒も見当たらない静かな下駄箱で靴を取り出していると後ろから一人の女子生徒に声をかけられた。
「あら、二郎君。今日は暇みたいね。どうせ帰るなら、ちょっと手を貸してくれないかしら」
二郎を呼び止めたのは、背中まで伸びるロングヘヤーの黒髪で、白のカチューシャを付け、整った顔立ちと色気のある大人びた声を持つ後輩男子達が憧れる生徒会副会長の二階堂凜だった。
「いや、ものすごく忙しくて、帰って大相撲の夏場所を見なくちゃいけないので、すいません、さよなら、先輩」
二郎は凜の誘いを申し訳なさそうに断り、逃げるように急いで靴を履き始めた。
「夏場所は5月で終わっているでしょ。次の名古屋場所は7月からで、6月はたしか相撲はお休みだったと思うけど、二郎君」
無駄に詳しい大相撲の日程を解説した凜は二郎のふざけた言い訳を一蹴して笑顔で後ろから二郎の肩に両手を置いた。
「いやー、そうでしたっけ。ハハハ、大相撲にまで詳しいなんて、さすが生徒会副会長様ですよ。力士同士が揺れる肉をぶつけ合って、歯を食いしばる様がお好きなんですね。良い趣味してますよ、凜先輩は、ハハハ」
二郎はあっけなくバレた嘘をごまかすように、凜を冷やかそうと軽口を叩いた。
「えぇそうね、可愛い後輩が歯を食いしばって苦しむ様子を見るのは大好きよ」
「痛たたたた、先輩、ギブです。すいません、勘弁してください」
凜はありったけの力を込めて二郎の肩を掴みながら全力で肩もみを始め、二郎の苦しむ様子を楽しむのであった。
結局、凜に捕まった二郎は本館3階の右端に位置する生徒会室へ連行された。
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