青春クロスロード ~若者たちの交差点~

Ryosuke

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第3章

夏休み その4 花火大会⑨ ~終わった恋だけが種になる~

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 一方、三佳を連れて人混みから離れた場所へ歩いていた剛は、大きな深呼吸をした後に覚悟を決めたように三佳と向き合い告白をしようと足を止めた。

 そんな剛の様子を見ながら、この後起こることを経験上、正しく理解した三佳は諦めのこもった小さなため息をついて剛の背中を見ていた。

「三佳ちゃん、俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。今日はどうしても言いたいことがあって、二郎に無理言って参加させてもらったんだ。だから、アイツを責めないでやってくれよ」

 剛は意図せずこの状況を作った二郎を庇うように言った。

「いや、別に二郎君の事はなんとも思ってないから大丈夫だよ」

 三佳は意外な言葉から始まった剛の告白に、一瞬戸惑いながら落ち着いて返答した。

「そうか、なら良いけど。やけにアイツの事を見ていた気がしたから気になってさ」

「そんなに私、二郎君の事、見てたかな」

「そんな気がしただけだから大丈夫なら良いんだ。・・ふー」

 剛は再び大きな深呼吸して仕切り直すように三佳を見つめた。

「三佳ちゃん、俺は君が好きだ。二年になってから、君の事を近くで見るようになって、部活の間に少しずつ君を知っていって、気がついた三佳ちゃんを好きになっていたんだ。本当はこの前のペンギンランドに行ったときに告白しようと思っていたんだけど、ああいう形での集まりになって告白できなかったから、どうしてもこの気持ちを早く伝えたかったんだ。もし三佳ちゃんが他に好きな人がいないで、俺のことを少しでも好いてくれているなら、俺とつきあってください。必ず君を好きにさせてみせるからどうかお願いします」

 剛は大和や尊と違いこれまで何度も告白をされ、自分がそれなりにモテるという自信もあり、自分が本気で告白すれば、三佳が相手でもチャンスがあると考えていたため、一言話始めれば、それなりに堂々と自信に満ちた告白を告げることが出来ていた。

 ただ三佳の答えは告白する前から決まっていた。しかし、すみれの事を考えてすぐには返答することが出来ずに答えに窮していた。

 その様子を後一押しだと勘違いした剛はさらに続けて言葉を投げかけた。

「三佳ちゃん、もし恋人同士になれば、夏休みが明けた後には一緒にお昼ご飯食べたり、テスト勉強したり、放課後とか休みの日にデートしたり、きっと今よりもっと毎日が楽しくなるはず。だから、俺と一緒に最高の高校生活を送ろうよ」

 剛は三佳を説得するため付き合ったときの未来予想図を必死に語った。しかし、それは三佳の耳には一切届いてなかった。なぜなら、三佳にとっては楽しい日々どころか、地獄の学校生活が訪れるかもしれないという恐怖があったからだ。しかしながら、それを天秤に掛けたとしても、剛と付き合うという結論には至らなかった。それは三佳自身が初めて感じた二郎への淡い恋心にどうしても嘘をつくことは出来なかったからだった。

「剛君、ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど、私はあなたとは付き合えないわ。私、気になる人がいて多分その人のことが好きなんだと思うの。今はまだその人のことをまだあまり知らないけど、これからもっと知っていきたいと思っているの。今まで多くの男子から告白されたけど、そんな風に思える人はこれが初めてなの。だから、ごめんなさい」

 三佳は剛が一ミリも入り込むことが出来ないほど完璧に剛の告白を断った。

「そっか。そうだよな。なんとなくわかっていたけど、実際に振られるとキツいもんだな。ありがとう。これできっぱりと君を諦めることが出来るよ。夏休みの間、ずっとモヤモヤしていたからこれでようやく先に進めるよ。大人げないかもしれないけど今日はこれで俺は帰るから、二郎にはうまく説明しておいてくれるかな」
「うん、ごめんね、つよぽん。私逃げる様な真似して。せっかくデートに誘ってくれたのに、その気持ちを無碍にしてごまかしてゴメンなさい」

 三佳は夏休み前のデートの誘いをぶち壊した自分の行いを改めひどいことをしたと思い知り今更ながらと思いつつも剛に謝った。

「そんな謝らないでよ。あの時点で脈がないことを察していれば、今日もこんな嫌な思いをさせずに済んだだろうし、逆に強引に巻き込んで悪かったよ。拓実やエリカにも色々気を遣わせてしまったみたいだし、後で謝っておくよ。だから、三佳ちゃんは気にしないでよ」

「・・・つよぽん」

「じゃ、俺はそろそろ行くよ。花火大会楽しんでね」

 剛は潔く三佳の言葉を受け入れて、清々しい顔で三佳に別れを告げて会場を後にしたのだった。

 残された三佳は剛に対して言った自分の気持ちを改めて思い返して、自分の気持ちを言葉にしたことで二郎への自分の思いを実感し両頬を押さえながらもだえるように赤面して自問自答していた。

(私やっぱり二郎君の事好きなのかな。でも、これって本当に好きって事でいいのかな。もう、わかんないよ。好きって何なの。もうどうしたいいのよ。あれこれ考えてもしょうが無いわ。この際、二郎君に会って自分の気持ちを確かめるしかないわ。よし、そうと決まれば二郎君を探しに行こう。どうせ二郎君の事だから、一人で会場をさまよっているかもしれないし、他の人には見つからないで会うにはきっと今がチャンスだわ)

 三佳は三佳らしく考えるよりも行動して自分の気持ちを確かめようと二郎を探し始めたのだった。
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