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第5章
恋のから騒ぎ③ ~嫉妬と友情と贖罪の話~
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ここ2年3組でも騒動解決の詳細をある程度知りつつも一とすみれの噂にあたふためく生徒がいた。それは共に二郎に騒動の解決のために情報提供をした女子バスケ部副部長の神部歩と生徒会書記の宮森巴だった。
歩と巴は騒動解決後に二郎から詳細を聞いていたこともあり、互いに共通認識として主犯が佐々木勇次であり、協力者が五十嵐瞬と鈴木亜美菜だったことを聞いていた。また亜美菜に関しては一年時からのすみれと因縁もあったが、すでに和解に至っていることもあって、責めないでやって欲しいという懇願を二郎から聞いていたこともあり、現状として亜美菜に対してはノータッチを決め込んでいた。
そんな状況においても、一とすみれの件は説明を受けていなかったため、歩は部員として、巴は生徒会の仲間として一と深い関係にあったことで大きな衝撃を受けて二人の噂を受け止めていた。
「宮森さん、あの噂聞いた。一ノ瀬君ってば、このどさくさに紛れて彼女が出来たんだって。しかも、相手は同じクラスの橋本さんだってさ。橋本さんって確か鈴木さんと因縁のあったって言う子だよね。何か一ノ瀬君から聞いていた?」
昼休み、歩は一人静かに昼食を摂る巴の席まで行きこっそりと耳打ちするように話し掛けた。
「うんん、私は何も聞いてないかな。でも・・・・あの時の子は橋本さんだったってことか・・・一ノ瀬君の女ったらしめ・・・・・あー、違う、悪いのは私だ。はぁー」
巴は力なく歩の問いかけにつぶやいた。
夏祭り当日、巴はすみれが一に告白する前に生徒会の場所取りのために一と二人きりとなり、その流れの中で告白未遂を犯していた。結果的には巴に告白をするために二人の下へ来た大和の出現によってうやむやになってしまったが、巴としては一に自分の想いを知られた状況であり、また一からすればその答えを出さずに、その直後すみれからの告白を受け入れたため、巴の告白が宙ぶらりんとした状態で放置されていた。
その事を思い出した巴は一人後悔の渦に飲み込まれて自己嫌悪に陥っていた。
巴と一の関係は思いのほか深く長いモノだった。二人は一学年のときに同じクラスとなり、共に生徒会の門を叩くと、無事二人揃って生徒会に加入することとなった。生真面目な巴とひょうきんな一は初めこそソリが合わない事もあったが、共に時間を過ごしていく内に根は真面目で周りの人たちを和まそうとわざと道化を演じたり、空気を読んで周囲を気配ったりする一の懐の深さを知った巴は自分が持たない一の美徳に惹かれていくことになる。また、クラス内でも大和を含めた3人は行動を共にする事が多くなり、さほど時間が経たないうちに巴は一を好きになっていた。それはちょうど忍と二郎の関係に似た状況だった。
しかし、恋愛ベタな巴は素直な態度を取ることが出来ずに一に対して厳しい態度を取ることもしばしばあった。ところがそれもしっかり者の彼女がプレイボーイの彼氏を諫めるような姿に周囲からは見え、共に生徒会に所属し学力優秀で美男美女の二人は付き合いっているのではないかと言った噂がクラス内で流れるほど二人が一緒にいる事が自然な間柄になっていた。
そういった雰囲気が作られる中で巴自身いつかは一と本当に恋人同士になれるという淡い期待を持っていたが、実際のところ自ら告白する勇気も出ず、また今の関係を壊したくないという思いが勝り、気がつけば学年が替わりクラスが別々になってしまっていた。しかし、巴にとっては生徒会という特別な絆があったため、一を近くで支えるのは自分だけだという自信もあり、2年の夏休みまで現状に甘えて行動を起こすことが出来ずにいたのであった。
そんな状況で巡ってきた夏祭りでの二人きりになる千載一遇の好機にいざ告白という場面で、結局は勇気が出ずに告白未遂で終わった自分を情けなく感じていた。
そこに湧いて出た一とすみれの交際話が巴をさらなる後悔の地獄へ突き落とすのであった。
「どうしたの、大丈夫?・・・・そっか、宮森さんも何も聞いてなかったんだ。まったく、山田の奴、この騒動の顛末を話したときにこの事も一緒に教えてくれても良いのに。友達甲斐のない奴」
歩としては噂ではなくなんだかんだ喧嘩しつつも付き合いの長い二郎から直接一の件も説明してほしかったという思いもあり、拗ねたように表情を曇らせた。
「べ、別に気にしないで大丈夫だから。・・・私は特に一ノ瀬君が誰と付き合おうが気にしないし、相手が誰かとか特に気にしないから!それにそもそも私が一ノ瀬君のプライベートのことなんて知るわけないし、興味もないし、ただ生徒会で一緒に活動しているだけの間柄だから、一ノ瀬君が私なんかにそんな話をするわけないから!」
巴は動揺を隠そうと巴の言葉をバッサリと切り捨てるように強めの口調で言った。
「ちょっと、宮森さん。怖いんだけど、急にどうしたのよ。一ノ瀬君と喧嘩でもしたの。私の知る限りで一ノ瀬君と仲の良い生徒と言えば、山田を抜けばほとんどの人が宮森さんを一番初めに思い浮かべると思うんだけど違うの」
「別にそんなことないし、一ノ瀬君なんて沢山友達いるし、ましてや女子友達だってたくさんいるでしょ。たとえば5組の成田さんとか同じ部活のあなただって私よりも彼と仲が良いでしょ。一ノ瀬君にとっては私なんて所詮生徒会だけの薄い関係の女だわ」
巴は拗ねたように一への恨み節を口にしていた。
「いやいや、何を言っているのよ。宮森さん以上に一ノ瀬君と関係の深い女子なんていないでしょ。それに比べればあたしこそ部活が同じっていうだけの間柄だよ。たまに放課後二人が生徒会の仕事で校内を歩いている姿をみると皆がお似合いだって言うくらいには皆が認めている関係だと思っていたんだけど、もしかしてそんな風に思われるのが迷惑だったかな。もしそうならごめんね」
歩は巴の不機嫌な様子を見て、余計な邪推で不快にさせていたと思い素直に謝った。
「え、私達がお似合い?べ、別にそんなことないし、ただの友人だからそんなこと考えたことないし、だから、神部さんが謝る事なんて無いから気にしないで良いから」
先程までとは明らかに異なるあたふためく巴の態度に何かを感じ取った歩がじと目で答えた。
「へー、そっか。それならいいんだけどさ。まぁ頑張っていこう!」
(なるほど、これはまんざらでもないって事だね、宮森さん。あたしにはどうすることもできないけど、一ノ瀬君の事を相当気にしているみたいだし、同じ苦しい片思いをするモノ同士仲良くしようね)
歩は以前以上に巴に親近感を感じて、全力のサムズアップポーズを取って互いの健闘を誓うのであった。
一方そんなビッグカップル誕生で浮き足立つクラスの中にあっておそらく全く異なる思考に立つ女子がいた。それは首謀者の一人であり、一年次から続いたすみれとの因縁を断ち切り和解に至っていた鈴木亜美菜だった。
亜美菜は騒動解決当初は自分の行いが校内に広まることを恐れて内心ビクビクしながら学校生活を送るモノと考えていた。しかし、すみれの提案もあって二人は晴れて友人として新たな関係を築くことになった。それでもやはり自分の行いを知るものはそれなりの態度を取ると思っていたがそうはならなかった。週が明けて初日事の詳細を聞いたであろう歩と巴は初めこそ好奇の視線を亜美菜に送ることもあったが、それも一瞬でありそれ以降は普段と変わらない様子で数日が経過していた。
亜美菜はこの状況もすみれや一が関係者に自分の事を許すように言い含めてくれたのではないかと思っており、改めて自分の行いを猛省しつつ、さんざん酷い態度を取ってきた自分を許してくれたすみれに恩を感じるようになっていた。
そんな亜美菜はこの残された高校生活を今幸せの絶頂にいるすみれを守るために自分に出来ることは何でもしようと心に誓うのであった。それは自分に出来る唯一の贖罪であり、また友人となったすみれへの感謝と友情の証になると考えるのであった。
そしてこの亜美菜の今後の行動がまたしても一悶着を起こす事になることをこの時は誰も知らないのであった。
歩と巴は騒動解決後に二郎から詳細を聞いていたこともあり、互いに共通認識として主犯が佐々木勇次であり、協力者が五十嵐瞬と鈴木亜美菜だったことを聞いていた。また亜美菜に関しては一年時からのすみれと因縁もあったが、すでに和解に至っていることもあって、責めないでやって欲しいという懇願を二郎から聞いていたこともあり、現状として亜美菜に対してはノータッチを決め込んでいた。
そんな状況においても、一とすみれの件は説明を受けていなかったため、歩は部員として、巴は生徒会の仲間として一と深い関係にあったことで大きな衝撃を受けて二人の噂を受け止めていた。
「宮森さん、あの噂聞いた。一ノ瀬君ってば、このどさくさに紛れて彼女が出来たんだって。しかも、相手は同じクラスの橋本さんだってさ。橋本さんって確か鈴木さんと因縁のあったって言う子だよね。何か一ノ瀬君から聞いていた?」
昼休み、歩は一人静かに昼食を摂る巴の席まで行きこっそりと耳打ちするように話し掛けた。
「うんん、私は何も聞いてないかな。でも・・・・あの時の子は橋本さんだったってことか・・・一ノ瀬君の女ったらしめ・・・・・あー、違う、悪いのは私だ。はぁー」
巴は力なく歩の問いかけにつぶやいた。
夏祭り当日、巴はすみれが一に告白する前に生徒会の場所取りのために一と二人きりとなり、その流れの中で告白未遂を犯していた。結果的には巴に告白をするために二人の下へ来た大和の出現によってうやむやになってしまったが、巴としては一に自分の想いを知られた状況であり、また一からすればその答えを出さずに、その直後すみれからの告白を受け入れたため、巴の告白が宙ぶらりんとした状態で放置されていた。
その事を思い出した巴は一人後悔の渦に飲み込まれて自己嫌悪に陥っていた。
巴と一の関係は思いのほか深く長いモノだった。二人は一学年のときに同じクラスとなり、共に生徒会の門を叩くと、無事二人揃って生徒会に加入することとなった。生真面目な巴とひょうきんな一は初めこそソリが合わない事もあったが、共に時間を過ごしていく内に根は真面目で周りの人たちを和まそうとわざと道化を演じたり、空気を読んで周囲を気配ったりする一の懐の深さを知った巴は自分が持たない一の美徳に惹かれていくことになる。また、クラス内でも大和を含めた3人は行動を共にする事が多くなり、さほど時間が経たないうちに巴は一を好きになっていた。それはちょうど忍と二郎の関係に似た状況だった。
しかし、恋愛ベタな巴は素直な態度を取ることが出来ずに一に対して厳しい態度を取ることもしばしばあった。ところがそれもしっかり者の彼女がプレイボーイの彼氏を諫めるような姿に周囲からは見え、共に生徒会に所属し学力優秀で美男美女の二人は付き合いっているのではないかと言った噂がクラス内で流れるほど二人が一緒にいる事が自然な間柄になっていた。
そういった雰囲気が作られる中で巴自身いつかは一と本当に恋人同士になれるという淡い期待を持っていたが、実際のところ自ら告白する勇気も出ず、また今の関係を壊したくないという思いが勝り、気がつけば学年が替わりクラスが別々になってしまっていた。しかし、巴にとっては生徒会という特別な絆があったため、一を近くで支えるのは自分だけだという自信もあり、2年の夏休みまで現状に甘えて行動を起こすことが出来ずにいたのであった。
そんな状況で巡ってきた夏祭りでの二人きりになる千載一遇の好機にいざ告白という場面で、結局は勇気が出ずに告白未遂で終わった自分を情けなく感じていた。
そこに湧いて出た一とすみれの交際話が巴をさらなる後悔の地獄へ突き落とすのであった。
「どうしたの、大丈夫?・・・・そっか、宮森さんも何も聞いてなかったんだ。まったく、山田の奴、この騒動の顛末を話したときにこの事も一緒に教えてくれても良いのに。友達甲斐のない奴」
歩としては噂ではなくなんだかんだ喧嘩しつつも付き合いの長い二郎から直接一の件も説明してほしかったという思いもあり、拗ねたように表情を曇らせた。
「べ、別に気にしないで大丈夫だから。・・・私は特に一ノ瀬君が誰と付き合おうが気にしないし、相手が誰かとか特に気にしないから!それにそもそも私が一ノ瀬君のプライベートのことなんて知るわけないし、興味もないし、ただ生徒会で一緒に活動しているだけの間柄だから、一ノ瀬君が私なんかにそんな話をするわけないから!」
巴は動揺を隠そうと巴の言葉をバッサリと切り捨てるように強めの口調で言った。
「ちょっと、宮森さん。怖いんだけど、急にどうしたのよ。一ノ瀬君と喧嘩でもしたの。私の知る限りで一ノ瀬君と仲の良い生徒と言えば、山田を抜けばほとんどの人が宮森さんを一番初めに思い浮かべると思うんだけど違うの」
「別にそんなことないし、一ノ瀬君なんて沢山友達いるし、ましてや女子友達だってたくさんいるでしょ。たとえば5組の成田さんとか同じ部活のあなただって私よりも彼と仲が良いでしょ。一ノ瀬君にとっては私なんて所詮生徒会だけの薄い関係の女だわ」
巴は拗ねたように一への恨み節を口にしていた。
「いやいや、何を言っているのよ。宮森さん以上に一ノ瀬君と関係の深い女子なんていないでしょ。それに比べればあたしこそ部活が同じっていうだけの間柄だよ。たまに放課後二人が生徒会の仕事で校内を歩いている姿をみると皆がお似合いだって言うくらいには皆が認めている関係だと思っていたんだけど、もしかしてそんな風に思われるのが迷惑だったかな。もしそうならごめんね」
歩は巴の不機嫌な様子を見て、余計な邪推で不快にさせていたと思い素直に謝った。
「え、私達がお似合い?べ、別にそんなことないし、ただの友人だからそんなこと考えたことないし、だから、神部さんが謝る事なんて無いから気にしないで良いから」
先程までとは明らかに異なるあたふためく巴の態度に何かを感じ取った歩がじと目で答えた。
「へー、そっか。それならいいんだけどさ。まぁ頑張っていこう!」
(なるほど、これはまんざらでもないって事だね、宮森さん。あたしにはどうすることもできないけど、一ノ瀬君の事を相当気にしているみたいだし、同じ苦しい片思いをするモノ同士仲良くしようね)
歩は以前以上に巴に親近感を感じて、全力のサムズアップポーズを取って互いの健闘を誓うのであった。
一方そんなビッグカップル誕生で浮き足立つクラスの中にあっておそらく全く異なる思考に立つ女子がいた。それは首謀者の一人であり、一年次から続いたすみれとの因縁を断ち切り和解に至っていた鈴木亜美菜だった。
亜美菜は騒動解決当初は自分の行いが校内に広まることを恐れて内心ビクビクしながら学校生活を送るモノと考えていた。しかし、すみれの提案もあって二人は晴れて友人として新たな関係を築くことになった。それでもやはり自分の行いを知るものはそれなりの態度を取ると思っていたがそうはならなかった。週が明けて初日事の詳細を聞いたであろう歩と巴は初めこそ好奇の視線を亜美菜に送ることもあったが、それも一瞬でありそれ以降は普段と変わらない様子で数日が経過していた。
亜美菜はこの状況もすみれや一が関係者に自分の事を許すように言い含めてくれたのではないかと思っており、改めて自分の行いを猛省しつつ、さんざん酷い態度を取ってきた自分を許してくれたすみれに恩を感じるようになっていた。
そんな亜美菜はこの残された高校生活を今幸せの絶頂にいるすみれを守るために自分に出来ることは何でもしようと心に誓うのであった。それは自分に出来る唯一の贖罪であり、また友人となったすみれへの感謝と友情の証になると考えるのであった。
そしてこの亜美菜の今後の行動がまたしても一悶着を起こす事になることをこの時は誰も知らないのであった。
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