青春クロスロード ~若者たちの交差点~

Ryosuke

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第5章

ダブルデート・スクランブル① ~交錯する思惑~ 

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 ダブルデート当日、朝の8時57分。二郎は立川駅に到着し改札を出ると真っ直ぐに立川映画館へ向かった。その表情は絶対に負けられない戦いに挑む戦士のような顔つきと共にどこか疲弊した表情が見え隠れするそんな面持ちだった。

 二郎はこの日、忍、一、すみれ達との映画デートに加えて、四葉、レベッカとの食事会と映画鑑賞会とをダブルブッキングさせており、どうにかこの状況をくぐり抜けることを考え抜き細かな行動スケジュールを組み立て、早朝ギリギリの時間に完璧な行動計画を組み上げることに成功していた。あとは実際に現場を確認し間違いの無いようイメージトレーニングとリハーサルを行うことを心に決めて待ち合わせの時間よりも早くに映画館に到着したのであった。

(よし、一達との待ち合わせが9時半だから、遅くとも9時20分までには現場の確認を済ませておかないとな。とにかく先にチケットを買っておくか)

 二郎は四葉達と見る『パイレーツ・オブ・カリビアン』のチケットに関してはレベッカパパのおごりと言うこともあり後ほど受け取ることになっていたため、もう一つ見る予定の『踊る大捜査線』のチケットを忍の分を含めて2枚購入した。

 その後、予定の上映時間にはまだ早い時間ではあったが、二郎は適当な理由をつけてなんとか上映室に続く通路へ入れてもらうと早速現場の確認に取りかかった。

 まず初めに『踊る大捜査線』と『パイレーツ・オブ・カリビアン』の上映室との位置関係や座席を確認し、実際に何度か往復しながら行動スケジュール表と腕時計、それにそれぞれの上映室の入り口に目配せしながらイメージトレーニングを一人繰り返していた。

 ちなみにこの日の簡単なタイムテーブルは以下の様だった。

《忍、一、すみれ用スケジュール》

・9時30分 待ち合わせ

・10時 『踊る大捜査線 THE MOVIE2』上映開始

・12時30分 上映終了 体調不良のため二郎は先に退散


《四葉、レベッカ用スケジュール》

・10時 待ち合わせ

・10時30分 『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』 上映開始

・13時 上映終了 その後お好み焼き屋で昼食

 以上のように、奇跡的に時間が30分ほどずれての上映だったため、その差を上手く利用すれば二つのスケジュールを同時にこなせると考えた二郎は、今回は忍たちとの映画後の予定だけは理由をつけて回避する事で、映画の上映時間中だけを何とか乗り越えればこの緊急事態を解決できると意気込んでこの日を迎えていた。

(イメージは完璧だ。あとはスケジュール通り時間を消化していけば大丈夫なはずだ。そろそろ皆もやって来る時間か。よし、いざ決戦の地へ!!)

 気合いを入れた二郎が映画館の入り口まで戻るとそこにはすでに一、忍、すみれが集まっており談笑をしていた。

「二郎ったら遅いわね。こんな日までギリギリに来なくたっていいのに、もう」

 時計を何度も確認しながら焦れたように忍が言っていると一がそれに答えた。

「まぁそう言うなよ、忍。まだ10分前だし、映画の上映自体は10時開始なのだから、まだまだ全然焦る時間じゃないよ。それにそんなに不安そうな顔していると折角可愛い服を着ているのがもったいないぜ。ほらほら、もっと笑顔で二郎を迎えてやらないとダメだぞ。なぁ、すーみん」

「そうよ、忍。スマイル、スマイル。緊張する気持ちは分かるけど、今からそんな調子じゃ今日一日もたないよ。ほら今日は二郎君をキュンとさせるんでしょ」

 一が緊張をほぐそうと、そしてすみれがにやにやしながらそれぞれが言葉を掛けると忍はいつもとは違って恥ずかしそうに返事した。

「別に、緊張なんてしないし、そんな笑顔なんてあたしには似合わないから、変なこと言わないでよ、一のバカ!すみれもからかわないでよ、もう」

そう言いながらも服装を褒められたからなのか、確信を突かれたからなのか照れくさそうにもじもじしする忍を二人は温かい目で見守っていた。

 そんな忍のスタイルは以前遊園地で二郎に褒められたスカートスタイルで落ち着きのあるチェック柄に足首が見える程度の長さのモノをチョイスし、それに合わせてシックな黒のブーツにブルーグレーのブラウスを合わせ、いつでも羽織れる黒のカーディガンを肩から回して手前で結んでいた。さらには元から小さな顔をさらに小顔に見せるグレーのキャスケットを被っておりそれがショートヘヤのスタイルにピッタリと合っていた。その姿はまさに某人気ファッション雑誌のモデルのような雰囲気を醸し出した完璧なスタイルだった。そんな長身小顔で清楚でカッコイイスタイルを決めた忍だったが、やはりそれでも素は年相応の女子高生であり想い人の名前を出されると、急にその雰囲気が崩れて乙女チックな一面を見せるのであった。

 そんな忍のギャップに一人萌え苦しむすみれが興奮しながら今日のデートの行く先を考えていた。

(はぁはぁ、忍、可愛いよ、忍。黙っていれば本当に近づきがたいオーラを放った綺麗なお姉様って感じだけど、一度それが崩れると急に可愛くなって超萌えるわ。私を殺す気なのかしら。二郎君でもこの忍の可愛いギャップを見ればきっと落ちるわ。ぐへへへ、見てなさいよ。今日こそあの朴念仁の心をがっちり掴むのよ、忍!!)

 そんなすみれがはぁはぁしている横で、それを見守りながら一が二郎の姿を探そうと辺りを見回していた。

(またなんか妄想世界に飛んで行ってるな、すーみん。まぁ楽しそうにしているからいいか。それにしも二郎の奴、せっかく誘ったのにどうして一緒の時間に来なかったんだろうな?なんか他に用事でもあったんかな)

 そんな三者三様に二郎の到着を待っていると、意外な方向から声がかかった。

「お~い、三人とも集まっているか。悪いね、待たせちゃって」

 その掛け声に一が反応して言った。

「おう、二郎。お前どうして中から出てきたんだ?先に着いていたのか?」

 一の言うとおり二郎が映画館の中から現れたことに驚く様子の3人に二郎は想定通りの説明をした。

「驚かしてごめんな。少し前着いていたんだけど、ちょっとトイレに行きたくなって先に入っていたんだわ。でも、待ち合わせの時間には間に合っただろう」

 そんな二郎にすみれが少し呆れるように言った。

「もう、二郎君は本当に普通には登場しないわね。遊園地の時は遅刻して、夏祭りの時も言っていた時間よりも早く現れるし、今日に限っては予想だにしない方向からやってくるし、本当に変な人だね、君は」

「会って早々に随分な物言いだな、すみれ。まぁ俺はこういう人間なんだ。なぁ一よ」

「まぁな。それより全員揃ったんだし、早速チケット買いに行くか」

 一の掛け声に二郎が返事をした。

「俺はもう買ってあるから、一とすみれだけ買ってこいよ」

「そうか、わかった。そんじゃ俺は二人分のチケットを買ってくるから、ちょっと待っていてくれ」

「あいよ。ほら、忍、これチケットだ。感謝しろよ。俺が奢るなんて滅多に無いんだからな」


 そう言って一が3人から離れ、二郎が忍にチケットを手渡すと、すかさずすみれが忍に寄りすがり二郎の方へ押し出しながら言った。

「お、準備が良いじゃん二郎君、やる~♪それでどう?今日の忍はイケてるでしょ?ほら、なんか言うことあるじゃない。あれなんだっけ、ジローズチェックだっけ。今日の忍は何点かな♪」

 そんなすみれの強行に少し戸惑いながらも忍は照れくさそうに全身を見せるようにしてチケットを受け取り二郎の反応を待った。

「ちょっとすみれってば、もう・・・・チケット、ありがとう。・・・・それでどうなのよ。今日のあたしの服装は?」

 忍は以前遊園地で二郎が他者のファッションチェックをするのが好きなことを知り、今回の服装も自然とその時の二郎の言葉を思い出しながらあれこれ悩んだ末に選んだ勝負服だった。そのため、忍としてもここで二郎の評価を聞かないわけにはいかなかった。

「あぁ、なんだいきなり。随分威勢が良いな、今日の女子どもは。正直そんなせがまれてチェックするモノじゃないんだが・・・・・う~ん。そうだな。甘口採点で90点ってところだな。まぁもともと素材がいいから何着ても似合うと思うけど、今日の服装は秋らしく落ち着きがあって、悪くないんじゃないか。それとその帽子も遊び心があって俺は好きだな。まぁちょっと女子高校生離れして大人び過ぎている分だけ10点マイナスしたけど、悪いわけじゃなくて寧ろ褒めているわけで、少し隣を歩く平凡な俺が心苦しいくらいだから、その辺はまぁ気にせず大丈夫だと思うぞ」

 二郎の回りくどい言葉に不満げにすみれがツッコミを入れた。

「もう、二郎君ってば、あれこれ言うのも良いけど、もっとシンプルに褒めてあげてよ。ほら、言え、あの言葉を、早く言いなさい」

「あーもう、何だかテンションが面倒くさいな。一体何だってんだよ。もーだから、つまり、よく似合っていて、・・・綺麗だと思うぞ」

「ふふふ、だって、忍。二郎君が綺麗だってさ。確かに今日の忍のスタイルは可愛いより綺麗の方がしっくりくるかもね。二郎君、なんだかんだ言って忍の事ちゃんと見ているね。このこの、でも、本当の忍は綺麗だけじゃなくて超可愛いところもあるんだからそこもちゃんと見てあげてよ」

 すみれは忍に二郎の言葉を繰り返すように言うと、その後は二郎に詰め寄って小声で忍を売り込むように褒めちぎった。

 そんな二人のやり取りを受けて忍が顔を真っ赤にしながら言った。

「べべべ、別に二郎に褒められたからって嬉しくないし、それに素材が良いから何着ても似合うってファッションチェックの意味ないじゃない。それに綺麗と可愛いとかどうせ誰にでも言っているんでしょ。あまり適当な事言わないでよ、バカ二郎!」

 照れ隠しにもならない言葉を言うも、二郎に素直に服装を褒められ、さらにはさりげなく忍自身の容姿まで褒められて完全に舞い上がっている忍を見ながら、二郎とすみれはそれぞれの思惑を抱いていた。

(今日の二郎君は冴えているわ。滑り出しは最高だし、忍の反応も完全に乙女チックモード寸前まで来ているし、二人がラブラブになるまでは時間の問題ね。あとはゆっくり二人の時間を満喫させて今日一日で愛を深めてもらいましょうか。ふふふ、任せて、忍。アシストは一君と二人でキッチリやるからね)

(忍の奴、よく分からんが機嫌は良いみたいだな。これくらいリップサービスしてやれば、なんとか怒らせずに今日は行けるだろう。まぁだが、確かに今日の忍は悪くないな。表参道辺りを歩いている読者モデルの卵みたいでなかなか様になっているな。まぁあまり褒めると調子に乗るからこの辺にしておこう。それよりも早いところ、上映室に3人を行かせないと四葉さんたちとの待ち合わせに遅れちまうわ。少し急がないとな)

 そんなことを考えていると一がチケット持って戻ってきた。

「待たせたね。そんじゃ中に入ろう。あと20分ちょっとで始まるから、急いで飲み物とポップコーンでも買って席に着こうか」

「は~い」

 すみれが一の掛け声に可愛く返事をしながら駆け寄っていくと二郎と忍も並んで二人の後をついて行くように館内に入って行くのであった。
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