青春クロスロード ~若者たちの交差点~

Ryosuke

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第7章

掛け違えたボタンたち① ~開始、練習試合!~

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 四葉とレベッカ二人との和解に成功した二郎は、自分でも思っていた以上に体が軽くなった感覚を持って10月5日、日曜日の朝を迎えていた。

「まだ着かねーのか、尊?」

「もうすぐ着くはずだが、この通り沿いにあるんだよな、大和?」

「あぁ向こうに高い木が見えるだろう。あの並木道の奥にあるはずだ」

 二郎達バスケ部員達は練習試合のため早朝から吉祥寺駅に集合し、今は駅前のサンロードを越えて五日市街道を西に向かって歩いていた。そんな事を話している内に大和が話したとおり10メートル以上ありそうな背の高い木々がズラッと並ぶ並木道の手前で少し開けた場所に到着した。

 そこには「桃李学園」と書かれた看板があり、その奥を見ると映画の舞台のような壮観な景色が広がっていた。

「おぉすごいっすね、これは」

「なんかドラマとかで使われてそうな良い雰囲気な場所ですね」

「確かにウチのような都立の高校とは金のかけ方が違うわ」

 そんなことを一年達が話していると大和が説明するように言った。

「これが桃李学園自慢の欅並木って奴らしいぜ。今見えている先の校舎が大学で、高校はもっと奥の建物らしいからここからもう少し歩くと思うぞ」

「なるほどな。さすが私立は違うな。そういえばここって中高大一貫校だっけ?」

「いや、正しくは小中高大の一貫校だったはずだ。まぁ小学校から通っている生徒なんて生粋のお嬢様とか金持ちのボンボンが多いだろうし、こんな機会が無きゃまず関わりの無い連中と今日は会えるんじゃないか」

 一の問いに大和は自分たちとは住む世界が違う連中だと少し冗談交じりで話していると、二郎が話しに割って入った。

「そういえば女バスの連中はどうしたんだ。あいつも今日ここで練習試合なんだろう?」

「あぁ女子達は俺らより先に行っているぞ」

「駅で成田先輩とか神部先輩に会いましたよ、俺」

「二郎先輩が到着する15分位前に駅を出発していましたから、もう高校に着いていると思いますよ」

 二郎の問いに一と一年の岩田と中林が答えると、尊がさらに一言言った。

「まったく、お前がギリギリに来るもんだから、女子達は我慢できずに先に行っちまったんだよ、あほ!」

 尊の叱責に二郎は目を細めて答えた。

「はいはい、そのことはさっき散々謝っただろう。あまりしつこいと女にモテないぞ」

「うるさい、バカタレ!アホなこと言ってないで早く俺たちも行くぞ。八時半集合だからあと5分くらいしかないし、ここからアップも兼ねて走るぞ。大和、お前が先導してくれるか」

「あいよ。ほんじゃ一汗かくとするか」

 尊の言葉でその他の部員達もやれやれと思いながらも、さすがに遅刻するのはバツが悪いと考えたのか、走りやすいように荷物を持ち直すと、大和を先頭に欅並木を越えて大学の校門手前を左側に抜ける横道をせっせと小走りで走り出した。



 数分後、額にうっすらと汗を滲ませながら大和と尊を先頭にして男子バスケ部員達は桃李高校の体育館に到着していた。そこではすでに桃李高校のバスケ部員達がアップを始めており、女子部員達のいるコートではすでに忍達がコートに入って準備を開始していた。

 それを確認すると尊達は大きく息を吸って気合いを入れて挨拶を行った。

「「「おはようござます!」」」

 その声に動きを止めた桃李高校男子バスケ部の部員達が入り口付近に集まり、一人の部員が一歩前に出て尊に声を掛けた。

「おはようござます!遠路わざわざ来てもらってありがとうございます。僕が部長の千石です。今日はよろしくお願いします。」

 そう言って爽やかな笑みを浮かべながら軽く会釈したのは身長が180センチ手前くらいで育ちの良さそうな善人オーラを纏った千石明人だった。明人の言葉に続くように後ろにいた部員達も同じく挨拶すると、それに尊が応えた。

「どうも自分が部長の中田です。こちらこそ桃李さんと練習試合できるなんてありがたいですし、今日は胸を借りるつもりでやるのでお手柔らかにお願いします」

 互いに挨拶を終えると桃李の部員達はアップに戻り明人ともう一人の部員の二人だけ残って尊に声を掛けた。

「それじゃとりあいず着替えをしてもらってから、今日の流れの確認をするので部長さんは後でまた時間もらえますか」

「了解した」

 尊がそう答えると、もう一人いた部員に連れられて更衣室に行くのであった。



「あいつ千石って言ったか。結構出来るって聞いたが」

 更衣室で着替えをしながら尊が大和に話し掛けた。

「あぁあいつが入学するまでは桃李も正直大したチームじゃなかったらしいけど、去年あいつが入学してから一気に強くなったらしい。今年の夏もそれで都大会16強までのし上がったらしいぞ」

「マジか。まるで忍が入った女バスみたいだな。まぁとにかく俺らにとっては良い経験になりそうだし、今日は意地でも一勝くらいはしたいもんだな」

 そんな話しをしていると二郎が独り言のように言った。

「でもあのイケメン野郎、なんか嫌な感じしたな。どうもあぁ言うタイプのいかにも善人って奴は鼻につくんだよな。好青年代表の一さんはどう思った?」

「俺か?まぁ見た感じ良い奴ぽかったし、別に嫌な感じはしなかったけどな。二郎、お前は昔から陽キャラに対して卑屈に見るからな、あまり人様を悪く言うものじゃないぞ。それよりもプレイヤーとしては結構出来るって言うのは本当だろうな。見た目以上にあいつ体はがっちりしていたし、相当厄介な相手にはなるんじゃないか」

「確かにあいつをどう止めるかが今日の鍵になるかもな。きっちりマンマークを付けた方がよさそうかもな」

「確かにそうだな、それとポイントガードのあいつだが・・・・・」

 一が二郎の話を軽く流して、尊や大和と試合の戦術について話し始めると、思わぬ相手が二郎に声を掛けられた。

「二郎先輩の予感はあながち間違ってないかも知れませんよ」

 その声にビックとしながら二郎が振り向くとそこには一年の後輩である長身の岩田が立っていた。

「お、岩田か!急に出てくると驚くだろう。お前はタダでさえデカいんだからもうちっと小さくなって声を掛けてくれよ」

 二郎がむちゃくちゃな事を言って答えるとそれを無視して岩田が話しの続きを始めた。

「実は俺、千石さんと同じ中学出身であの人はバスケ部の先輩だったんですよ」

「おぉマジか、顔見知りだったのか」

「はい、それでまぁ当然ねーちゃんとも同級生で、千石さんのことはよく話しを聞いたんですけどね。まぁ結構色々とあったみたいですよ」

「なんだ?色々って」

「それは・・・」

 岩田が何かを話し始めようとしたとき尊から声がかかった。

「よし、準備できたか!あまりちんたらしてられないしお前らも急げよ」

 その声に岩田はまた時間があるときに話しますと言ってそこで会話は途切れるのであった。

 それから体育館に戻り、アップと基礎練習を終えるといよいよ9時30分から男女ともに第一試合を始めるのであった。






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