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第7章
掛け違えたボタンたち⑫ ~会心、咲のサプライズ~
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男女ともに試合を4戦終えてクールダウンを行っていると、女子バスケ部のコートの方で人だかりが出来ており、女子達の明るい声が飛び交っていた。そして、その中心にいた桃李高校の制服を着た生徒3人が今度は男子達が試合を行っていたコートに入ってきて桃李の選手達に何かを配り始めていた。
その反対側でストレッチを行っていた一とその手伝いをしていたすみれが騒がしくなった方を見て話をしていた。
「ヨイショッと、一君痛くない?もう少し押しても大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。ゆっくり息を吐くからそれに合わせて背中を押してくれ。ん?なんだあれ。随分あちらさんが騒がしいみたいだな」
「あ~本当だね。あれ、もしかしてあの子達って試合中によく分からないけどウチらのチームを応援していた子達じゃないかな。何かを配っているみたいだよ」
一の背中を押しながら反対側のコートの人だかりを確認したすみれは試合中に何故か桃李の生徒なのに琴吹の選手に声援を送る女子が数人いたことを思い出して言った。
「そうだったのか?全然気付かなかったな。お、あれはなかなかの上玉だ。見たところ運動部と言うよりは文化系女子って感じだね。桃李の女子も可愛い子が多いみたいだな」
一が持ち前のプレイボーイ気質で咲達を褒めるとすみれがその発言に鋭く反応し一の背中をこれでもかと押し込んだ。
「ん?一君、今何か言ったかな?可愛い子が何だって?」
「え、いや、今のは社交辞令というか、う、痛てて、ぐるしいって、すみれさん。ごめんなさい。許してくさい」
「この浮気者!可愛い彼女の目の前で他の女子を見てデレデレしないでよ、一君のバカ!!」
周囲が見ればバカップルがイチャついているようにしか見えない2人がそんなやり取りをしていると、その話題に上がった3人がそろりと琴吹の選手達が集まる方にやってくるのであった。
「あれ、おい、すーみん。なんかこっちにやってくるみたいだぞ、あの子達」
「あら本当だ。一体何の用かしらね」
そう言っている間に尊や大和らも近寄ってきた3人に気がつき何やら話しをすると尊がストレッチをしていた部員に呼びかけた。
「おーい、皆ちょっと集合してくれ」
その掛け声でぞろりと集まる部員達の傍ら、スタミナ切れで床に転がっていた二郎はそれに一歩遅れてその場で体を起こした状態で尊の言葉を聞いた。
「実は桃李の料理部の皆さんが差し入れでシュークリームを持ってきてくれたようで、俺らもお裾分けを頂けるようだ。わざわざ僕らにも気を遣って頂きありがとうございます。ほら、お前らもちゃんと感謝を伝えろよ」
尊が事情を部員達に説明しながら咲達3人にお礼を言うとそれに習い他の部員達も揃ってお礼を言った。
「ありがとうございます」
「ちゃーす!」
「手作りなんてマジで嬉しいです。ありっす」
その感謝の言葉を受けながら3人はまず初めにテンションを上げて喜ぶ一年達にシュークリームを配ると、その後、陽菜が尊と一、すみれに、桃子が大和に、そして咲が二郎に声を掛けた。
「どうぞ、さっき3人で作ったシュークリームです。中のフルーツがそれぞれ違うので好きなものを取って下さいね」
そう言って陽菜が目の前にいる尊、一、すみれに声を掛けると3人は少し遠慮しながらもシュークリームを手に取るとニヤニヤしている陽菜に一が声を掛けた。
「どうもありがとございます。凄く美味しそうですね。あの~ところでどうして俺らにこれを?」
「はい、どうしてって何が?」
一の問に今一理解出来ないと言った様子の陽菜が質問を返すとすみれがそれに答えた。
「だから、どうしてわざわざ私達にも差し入れなんてくれたのかと思って。凄く嬉しいんですけど、正直ちょっと理由が分からないというか、なんというか、ねぇ?」
言いたいことは分かるでしょ、と言った表情で問いかけるすみれに陽菜は合点がいったように、そしてハッキリと答えた。
「あぁ、まぁそうですよね。理由も分からずに何かをもらうのはちょっと不安ですよね。えーっと、つまり、うちの子の1人が皆さんのお仲間の友達で、その人に差し入れをしたいがために男女バスケ部全員に差し入れするって事になったんですよ」
「うん?」
「はい?」
「つまりどういうこと?」
陽菜の説明を聞き、尊と一は首を傾げ、すみれが食い付くように陽菜に再度説明を求めた。
「いや、だから意中の彼に差し入れするために1人の女子が心を込めてお菓子を作ったので、皆さんは気にせず食べて大丈夫ですって事です」
「何ですって?意中の彼って、一体誰のことを言っているんです?」
状況が理解出来なくなっていた尊と一を代弁するようにすみれがさらに食い付くと陽菜がアレだと言って指さした。
それを見た尊が驚きの声を上げて陽菜に言った。
「アレって大和の事か?一体どう言うことだ?」
その視線の先には桃子が大和にシュークリームを渡しながら、試合中の大和のプレイを手放しで褒め称えて、大和も突然の桃子の賞賛に顔を赤くしながら丁寧に受け答えをしている様子があった。
「つまり、あのいかにも育ちのよさそうなお嬢様って感じの子が大和の事が好きでわざわざ俺ら含めこんな大勢にシュークリームを作ったって事なのかい?」
一の問いに陽菜が慌てて否定して、大和達のさらに奥で床に座る二郎とそれに寄り添う咲を指さして言った。
「いえいえ、違いますよ。アレはいわゆる突発的な一目惚れみたいな物だと思います。本命はあっちの2人ですよ。おぉ、なんか良い雰囲気ですね」
陽菜の指さす方向を見た3人は揃ってあんぐりと口を開けて絶叫した。
「・・・・はぁ~~~~!!!」
そんな懇切丁寧な状況説明を陽菜が尊、一、すみれにしていることなどつゆも知らない咲は電車の中で会った時以来の二郎との再開にドギマギしながら話し掛けた。
「あの、これ良かったら召し上がって下さい。部活の皆と今さっき作ったんです」
咲の存在に未だ気付かない二郎は鼻孔をくすぐるシュー生地の芳ばしい香りとフレッシュなフルーツの甘酸っぱい香りに誘われて試合で気力を出し尽くした体にむち打って、目の前の少女が手に持つ紙箱を見ながら言った。
「いや~、良い香りですね。自分この焼き菓子の匂いが好きなんですよ。何だかよく分かりませんが、ありがたくいただきます。・・・・うん、うまい!」
二郎の飾り気も無いが、お世辞でも無い正直な感想に思わず胸を熱くする咲がソワソワしながら言った。
「え、その本当に美味しいですか?クリームが甘過ぎちゃったかなって心配だったんですけど、大丈夫ですか?」
「いやちょうど良いと思いますよ。クリームの甘さとこのイチゴとかキウイの酸味が上手い具合にマッチして凄く食べやすいし、正直部活で疲れていて糖分が欲しかったのでとても美味しいです」
二郎もわざわざ他校の自分たちに差し入れを持ってきてくれた目の前の桃李高校の制服を着る少女に対して最大限の敬意を表すと共に、実際に非常に美味しかったシュークリームを絶賛すると咲は小さく拳を握り、さっと振り向き陽菜と桃子に目線を向けてサプライズが上手く行った事を知らせるのであった。
そんな一瞬のやり取りの間で二郎は先週電車の中で偶然もらった洋なしタルトの味を思い出し、ふとつぶやくと最後に改めて目の前の少女に視線を向けて感謝を伝えた。
「いや~この前食べたあのタルトも美味しかったけど、今日のこれも負けず劣らず美味しいわ。えーっと、どうもご馳走様でした。本当に美味しかったです・・・・ん?・・・あれ?」
二郎の言葉に反応して再び目線を戻した咲は自分を真っ直ぐに見つめて感謝を伝える二郎とバッチと目線が合った。
「あ・・・あの・・・・久しぶり、山田君」
「?!・・・・・・」
「・・・・・・あの、私の事覚えている?この前電車で話をした七海です」
「あ!そうだよな。七海さんだよね。え?どうしてここに、と言うかなんで君が・・・え・・・あ、そうか。桃李高校かぁ。そうだよな。君、桃李高校に通っているって言っていたよな」
ようやく今の状況に理解が追いついた二郎に咲は嬉しそうに言った。
「ふふふ、そうだよ。ここが私の通っている高校なんだよ。もしかして今まで気付かなかったの?ひどいな、山田君。私は琴吹高校のバスケ部が体育館で試合をしているって聞いてすぐに君が来ているって気付いたのに」
「そっか。ごめん。まさかまたこんな形で君と再会するなんて思ってもみなかったから、正直今の今まで全然気付かなかったよ。本当にごめんよ」
突然の再会に驚きながらも、咲の存在を完全に忘れていた二郎が少し気まずそうにしていると、その空気を読んだ咲が慌ててフォローを入れた。
「いやでも、いいの。急の事だったし私の顔を見て思いだいしてくれたからそれで十分嬉しかったし、その、この前あげたタルトも美味しかったって褒めてくれたし、だから私の事を覚えていなかった事くらい全然大丈夫だから気にしないでね」
「いや、でも・・・そうかい、君がそう言ってくれるならそれで良いけど・・・でも、本当に今日のシュークリームもこの前のタルトも美味しかったから。これは嘘じゃ無いから。だからありがとう」
「そっか、良かった。そう言ってくれて私も嬉しいです」
そんな会話のあとで陽菜から声が掛かった。
「お~い、サキッチョ!良い雰囲気のところ申し訳ないけど、邪魔にもなるしそろそろ退散するよ」
その言葉に咲は名残惜しそうに、そして、何か伝え忘れたことを思い出して一言言ってその場を後にした。
「あの山田君。部活が終わって帰る前に少しだけ時間をもらっても良いですか?渡したい物があるんです。体育館の前で待っているので帰る準備が出来たらそこに来て下さい。私待っていますから。ではまた後で」
「え、あ、ちょっと、待って・・・。何だ、一体?」
二郎は突然の約束の申し出に答える間もなく去った咲の背中を戸惑いの表情を持って見送るのであった。
その反対側でストレッチを行っていた一とその手伝いをしていたすみれが騒がしくなった方を見て話をしていた。
「ヨイショッと、一君痛くない?もう少し押しても大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。ゆっくり息を吐くからそれに合わせて背中を押してくれ。ん?なんだあれ。随分あちらさんが騒がしいみたいだな」
「あ~本当だね。あれ、もしかしてあの子達って試合中によく分からないけどウチらのチームを応援していた子達じゃないかな。何かを配っているみたいだよ」
一の背中を押しながら反対側のコートの人だかりを確認したすみれは試合中に何故か桃李の生徒なのに琴吹の選手に声援を送る女子が数人いたことを思い出して言った。
「そうだったのか?全然気付かなかったな。お、あれはなかなかの上玉だ。見たところ運動部と言うよりは文化系女子って感じだね。桃李の女子も可愛い子が多いみたいだな」
一が持ち前のプレイボーイ気質で咲達を褒めるとすみれがその発言に鋭く反応し一の背中をこれでもかと押し込んだ。
「ん?一君、今何か言ったかな?可愛い子が何だって?」
「え、いや、今のは社交辞令というか、う、痛てて、ぐるしいって、すみれさん。ごめんなさい。許してくさい」
「この浮気者!可愛い彼女の目の前で他の女子を見てデレデレしないでよ、一君のバカ!!」
周囲が見ればバカップルがイチャついているようにしか見えない2人がそんなやり取りをしていると、その話題に上がった3人がそろりと琴吹の選手達が集まる方にやってくるのであった。
「あれ、おい、すーみん。なんかこっちにやってくるみたいだぞ、あの子達」
「あら本当だ。一体何の用かしらね」
そう言っている間に尊や大和らも近寄ってきた3人に気がつき何やら話しをすると尊がストレッチをしていた部員に呼びかけた。
「おーい、皆ちょっと集合してくれ」
その掛け声でぞろりと集まる部員達の傍ら、スタミナ切れで床に転がっていた二郎はそれに一歩遅れてその場で体を起こした状態で尊の言葉を聞いた。
「実は桃李の料理部の皆さんが差し入れでシュークリームを持ってきてくれたようで、俺らもお裾分けを頂けるようだ。わざわざ僕らにも気を遣って頂きありがとうございます。ほら、お前らもちゃんと感謝を伝えろよ」
尊が事情を部員達に説明しながら咲達3人にお礼を言うとそれに習い他の部員達も揃ってお礼を言った。
「ありがとうございます」
「ちゃーす!」
「手作りなんてマジで嬉しいです。ありっす」
その感謝の言葉を受けながら3人はまず初めにテンションを上げて喜ぶ一年達にシュークリームを配ると、その後、陽菜が尊と一、すみれに、桃子が大和に、そして咲が二郎に声を掛けた。
「どうぞ、さっき3人で作ったシュークリームです。中のフルーツがそれぞれ違うので好きなものを取って下さいね」
そう言って陽菜が目の前にいる尊、一、すみれに声を掛けると3人は少し遠慮しながらもシュークリームを手に取るとニヤニヤしている陽菜に一が声を掛けた。
「どうもありがとございます。凄く美味しそうですね。あの~ところでどうして俺らにこれを?」
「はい、どうしてって何が?」
一の問に今一理解出来ないと言った様子の陽菜が質問を返すとすみれがそれに答えた。
「だから、どうしてわざわざ私達にも差し入れなんてくれたのかと思って。凄く嬉しいんですけど、正直ちょっと理由が分からないというか、なんというか、ねぇ?」
言いたいことは分かるでしょ、と言った表情で問いかけるすみれに陽菜は合点がいったように、そしてハッキリと答えた。
「あぁ、まぁそうですよね。理由も分からずに何かをもらうのはちょっと不安ですよね。えーっと、つまり、うちの子の1人が皆さんのお仲間の友達で、その人に差し入れをしたいがために男女バスケ部全員に差し入れするって事になったんですよ」
「うん?」
「はい?」
「つまりどういうこと?」
陽菜の説明を聞き、尊と一は首を傾げ、すみれが食い付くように陽菜に再度説明を求めた。
「いや、だから意中の彼に差し入れするために1人の女子が心を込めてお菓子を作ったので、皆さんは気にせず食べて大丈夫ですって事です」
「何ですって?意中の彼って、一体誰のことを言っているんです?」
状況が理解出来なくなっていた尊と一を代弁するようにすみれがさらに食い付くと陽菜がアレだと言って指さした。
それを見た尊が驚きの声を上げて陽菜に言った。
「アレって大和の事か?一体どう言うことだ?」
その視線の先には桃子が大和にシュークリームを渡しながら、試合中の大和のプレイを手放しで褒め称えて、大和も突然の桃子の賞賛に顔を赤くしながら丁寧に受け答えをしている様子があった。
「つまり、あのいかにも育ちのよさそうなお嬢様って感じの子が大和の事が好きでわざわざ俺ら含めこんな大勢にシュークリームを作ったって事なのかい?」
一の問いに陽菜が慌てて否定して、大和達のさらに奥で床に座る二郎とそれに寄り添う咲を指さして言った。
「いえいえ、違いますよ。アレはいわゆる突発的な一目惚れみたいな物だと思います。本命はあっちの2人ですよ。おぉ、なんか良い雰囲気ですね」
陽菜の指さす方向を見た3人は揃ってあんぐりと口を開けて絶叫した。
「・・・・はぁ~~~~!!!」
そんな懇切丁寧な状況説明を陽菜が尊、一、すみれにしていることなどつゆも知らない咲は電車の中で会った時以来の二郎との再開にドギマギしながら話し掛けた。
「あの、これ良かったら召し上がって下さい。部活の皆と今さっき作ったんです」
咲の存在に未だ気付かない二郎は鼻孔をくすぐるシュー生地の芳ばしい香りとフレッシュなフルーツの甘酸っぱい香りに誘われて試合で気力を出し尽くした体にむち打って、目の前の少女が手に持つ紙箱を見ながら言った。
「いや~、良い香りですね。自分この焼き菓子の匂いが好きなんですよ。何だかよく分かりませんが、ありがたくいただきます。・・・・うん、うまい!」
二郎の飾り気も無いが、お世辞でも無い正直な感想に思わず胸を熱くする咲がソワソワしながら言った。
「え、その本当に美味しいですか?クリームが甘過ぎちゃったかなって心配だったんですけど、大丈夫ですか?」
「いやちょうど良いと思いますよ。クリームの甘さとこのイチゴとかキウイの酸味が上手い具合にマッチして凄く食べやすいし、正直部活で疲れていて糖分が欲しかったのでとても美味しいです」
二郎もわざわざ他校の自分たちに差し入れを持ってきてくれた目の前の桃李高校の制服を着る少女に対して最大限の敬意を表すと共に、実際に非常に美味しかったシュークリームを絶賛すると咲は小さく拳を握り、さっと振り向き陽菜と桃子に目線を向けてサプライズが上手く行った事を知らせるのであった。
そんな一瞬のやり取りの間で二郎は先週電車の中で偶然もらった洋なしタルトの味を思い出し、ふとつぶやくと最後に改めて目の前の少女に視線を向けて感謝を伝えた。
「いや~この前食べたあのタルトも美味しかったけど、今日のこれも負けず劣らず美味しいわ。えーっと、どうもご馳走様でした。本当に美味しかったです・・・・ん?・・・あれ?」
二郎の言葉に反応して再び目線を戻した咲は自分を真っ直ぐに見つめて感謝を伝える二郎とバッチと目線が合った。
「あ・・・あの・・・・久しぶり、山田君」
「?!・・・・・・」
「・・・・・・あの、私の事覚えている?この前電車で話をした七海です」
「あ!そうだよな。七海さんだよね。え?どうしてここに、と言うかなんで君が・・・え・・・あ、そうか。桃李高校かぁ。そうだよな。君、桃李高校に通っているって言っていたよな」
ようやく今の状況に理解が追いついた二郎に咲は嬉しそうに言った。
「ふふふ、そうだよ。ここが私の通っている高校なんだよ。もしかして今まで気付かなかったの?ひどいな、山田君。私は琴吹高校のバスケ部が体育館で試合をしているって聞いてすぐに君が来ているって気付いたのに」
「そっか。ごめん。まさかまたこんな形で君と再会するなんて思ってもみなかったから、正直今の今まで全然気付かなかったよ。本当にごめんよ」
突然の再会に驚きながらも、咲の存在を完全に忘れていた二郎が少し気まずそうにしていると、その空気を読んだ咲が慌ててフォローを入れた。
「いやでも、いいの。急の事だったし私の顔を見て思いだいしてくれたからそれで十分嬉しかったし、その、この前あげたタルトも美味しかったって褒めてくれたし、だから私の事を覚えていなかった事くらい全然大丈夫だから気にしないでね」
「いや、でも・・・そうかい、君がそう言ってくれるならそれで良いけど・・・でも、本当に今日のシュークリームもこの前のタルトも美味しかったから。これは嘘じゃ無いから。だからありがとう」
「そっか、良かった。そう言ってくれて私も嬉しいです」
そんな会話のあとで陽菜から声が掛かった。
「お~い、サキッチョ!良い雰囲気のところ申し訳ないけど、邪魔にもなるしそろそろ退散するよ」
その言葉に咲は名残惜しそうに、そして、何か伝え忘れたことを思い出して一言言ってその場を後にした。
「あの山田君。部活が終わって帰る前に少しだけ時間をもらっても良いですか?渡したい物があるんです。体育館の前で待っているので帰る準備が出来たらそこに来て下さい。私待っていますから。ではまた後で」
「え、あ、ちょっと、待って・・・。何だ、一体?」
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