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しおりを挟む私が高校を卒業して、単身で渡米するときに、よく言われた言葉。
「向こうは治安が悪いから~」
「飛行機が落ちたら~」「英語喋れるの?」等と
みな口をそろえたように云ってくる。
当時18歳。生粋の日本人、英語力はお察しの通りで、
もちろん海外には友達どころか知り合いもいない。
でも、私はいろんな国にいきたかったし、
人生のあらゆる側面を楽しもうと決めていた。
船は、おまえの手で漕いでいけ、と中島みゆきもいっていたし。
不安や恐怖心はあれど、それを圧倒的に上回っていたのは
わくわく感だった。このドキドキは止められそうもない。
ロミオとジュリエットが恋に気狂ったように、
私は外に出ること、旅への想いに燃えていた。
気分は完全にマサラタウンを出て旅に出るサトシ、
魔女の宅急便のキキだ。それに今いる場所にはずっと
とどまるべきではないことも知っていた。
向こうに着いてからは、語学学校へ通ったけれど
まず英語がわからない。聞き取れないのだ。
なぜそんな早く喋る?しかも滑舌がなめらか過ぎる。
日本ではシャキシャキしゃべろと言われてきたのだ。
一語、一語、発音をしなさいと。
「いらっしゃいませ」を「しゃぁあらっせ~!!」と云うのは
ラーメン屋か八百屋くらいだ。
でも英語では、もっとなめらかに発音せよと言われる。
単語と単語を繋げろ、パテのように、なめらかに。
チョコレートは、チョ・コ・レ・イ・トではない。
「チョコ」・「レート」の二拍子だ。
そしてそれを溶かすように「チョコレート」ひとつの塊にするんや
と。ドラゴンのタトゥーの入った金髪美女の先生に言われた。
これではまるで音の使い方が違うじゃないかと
私のなかで固定概念がパリッと割れる音がしたのだけど、
そんなことは序の口だった。
この後も何度も何度も固定概念を破壊されていくこととなる。
そうして割れて、粉々になった固定概念は、もはや
固定などできないほどにかたさを失い、
この南国の暖かい風によって、
どこか遠くの地へと吹き飛ばされていった。
向こうにいるときに、高校時代にそこまで仲良くもない
少し喋ったことがある程度の子になぜかSNSをフォローされており、
(私はフォローを返してなかったのだが)
アクティビティや友達と行ったレストランでの写真をあげると
なぜか「もう英語ペラペラ?」
ことあるごとに、「英語は喋れるの?」
とコメントをつけてくる奴がいた。
どうしてこんなことを聞いてくるのだろう?と
そんなに毎回、気になるのものなのか、
話しかける話題がほかに思いつかないのか、なんなのか
当時は純粋に疑問に思っただけだったが、
今思うと、あれはある種のいやがらせだったのだろう。
冒頭で書いたような、他人の足を引っ張る発言をする人は
どんなメンタリティで、そのような活動をしてらっしゃるのだろうか。
いざ、未知の開拓。
なんていうまでもなく、あれは、未来への嫉妬だ。
自分がおそろしくて踏み込めなかった経験や出来事に飛び込んで、
自分では到達し得なであろう経験、成果、幸福を、他人が、
手にし得ることへの嫉妬である。
挑戦し続ける人間のみが、到達する場所があることへの嫉妬だ。
嫉妬をして、相手を下げた方が、自分が上がっていくよりも
楽だからだ。ただ、楽ではあるのだけど、それはどちみち
自分を救うことができない道でもある最も苦しい道でもある。
苦しみは、自ら迎えに行った方が安い。
あの英語の授業を思い出してごらん。
あんなに前のめりになって、耳の穴をかっぽじって先生の話を
聞いても、なんのこっちゃわからなかったあの魔の時を。
それでもかじりついて行ったではないか。
学力向上曲線は、時間に比例した形をしていない。
どんなに時間をかけて、必死にやっても微動だにしない時期がある。
今はそのことも知ってるけど、当時は知らなかったので、本気で
自分の無能ぶりに落胆したりもしたが、
落ち込み過ぎて、かえって無敵マインドになる。
ああ、こんなにやっても成長がない、
だが、それがどうした!!というマインド。
私は英語をペラペラと喋る道ゆく現地の外国人に対して
「英語が喋れるくらいで偉いと思うなよ」と思っていたし、
おまえも日本語が喋れないんだから、おあいこだろと
思ってはいたけれど、
実力を伴わない勝気な態度は、空しい。
そこから、右往左往しつつも、やがては右肩上がりになっていったが
これはたった一部のことで、そのほかにも人間関係、
友達と遊んだり、出掛けた先でまたトラブルやミラクルが起きたり、
その裏で内心どんな波乱があったとか、
なにに絶望したとか、なににときめいたとか
ジェットコースターのような毎日だったこと。
なにも知らない人が、嫉妬してなにかを言ってきても
その人たちがそんなことに人生を使っているうちに、
自分はいろんなことを経験して、学んで、考えて、
どんどん変化して成長していけばいい。
時間の使い方で、数年後の未来、数十年後の未来、
人生そのものが決まっていく。
自分の手で作り上げているという感覚。
聖書では神様は人間をこねこねして作ったとあるらしいが、
まさに、自分を作っていく作業はそのように地道な作業なのだ。
だから、私は自分の手で船を漕いでいきますよ、
中島みゆきもそういってたし。
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