おうちに帰してください!~私は異世界からの帰宅を目指す~

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第1章 転移~小鬼族対戦編

第1話 助けたジジイに嵌められた。

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 あー、部活疲れたー。
 先輩達ったら大会が近いからって無茶するなぁ。
 後輩が産まれたての子鹿みたいになってたじゃんか。
 一年前の私もあんな感じだったのかなぁ。
 思い出して思わず笑みが溢れる。
 まぁ、通過儀礼だと思って、がんばってもらおう。

「ん? なんだろあれ?」

 少し先の公園に、黒っぽいボロ布? が落ちてる。
 普段なら気にせず通り過ぎて、家に帰ってるところだけど。
 なんか気になるのは、動いてない? アレ。

 近付くにつれ、徐々に物体の正体が解ってくる。
 うん、やっぱ動いてるよ?
 手の届く距離まで近付いてやっと、正体がわかった。

 お爺さんだ。
 ボロ布を纏ったお爺さんが倒れてる。
 ホームレス?

「ねぇ、お爺さん? もしもーし、大丈夫? 救急車呼ぶ?」

 とりあえず、見つけてしまった以上は、見捨てて帰るのは心が痛む。
 ニュースで、ホームレスが一人、死体で見つかった。
 なんて見た日にはトラウマものだ。

 私はお爺さんの身体を足でつついてみる。
 え? だって、ホームレスだったら、手で触るのは流石にためらわれるじゃない?
 私は、慈悲に溢れる天使じゃないからね。

「う……」

 あ、生きてるっぽい。
 救急車いるかな? 大丈夫かな?
 天使じゃないけど、流石に目の前で消えそうなら命は救うよ?
 主に私の精神衛生上の都合で。

「め、めし……」

 めし? 救世主メシアってか?
 まだ救ってないよ?

「何か、た、食べ物を」

 あ、飯か。
 んーっと、何かあったかなぁ。
 鞄を漁ってると、昼の残りのパンが出てきた。
 駅前で購入したカツサンドだ。
 あのパン屋のカツサンドは美味しくて、登校時に買わないと昼には売り切れてしまう。

 出した瞬間にかっさらわれた。
 あ! せめてこっちの玉子サンドにしてほしい!
 そう思ったら、玉子サンドも持ってかれた。

 そのままお爺さんは無言でガツガツとパンを食べ尽くした。

「お嬢ちゃん、助かったよ。二日程何も食べてなくての。死ぬところじゃった」

 そいつはよかった。
 じゃあ私はこれで、立ち去るとしよう。
 今日の晩御飯は、すき焼きらしいからね。
 その為に、部活後の空腹にもかかわらず、残っていたパンにも手をつけていなかったのだ。
 いや、すき焼きが楽しみで忘れてたんだけど。

「お嬢ちゃん、ちょっと待ってくれんか」

 立ち去ろうとしたところを、お爺さんに呼び止められた。
 早く帰ってすき焼きを食べたいんだけど。

「何ですか?」

「お嬢ちゃんの名前を教えてくれないかい?」

 思わず眉間に皺が寄る。
 なぜならば、私は自分の名前があまり好きではないのだ。
 活発な性格や髪を短くしている事も手伝って、子供の頃から男の子みたいだと言われてきたからだ。

「名乗るほどの者ではないので。大丈夫なら、急いでますから、これで失礼しますね」

 振り返り、改めて立ち去ろうとしたところで、歩みを止めてしまった。
 何故なら、不可解な言葉が聞こえてしまったからだ。

「ふむ、伊達だて 駿しゅんちゃんか。良い名前じゃな」

 え? 何で、このお爺さん。
 今、私の名前が解った?

「そんな警戒をせんでおくれ。ジジイの簡単な手品みたいなもんじゃ」

 訝しげな顔をして、警戒している私にお爺さんはヒョッヒョッと笑いながら、そう続ける。

「いやいや、お爺さん。見ず知らずのお爺さんに自分の名前を当てられて、警戒しない人間がいるわけないじゃない。平和ボケしてる日本でも、流石にそんなのはいないでしょうよ」

 尚も警戒しながら、私はお爺さんにそう告げる。
 逃げ道は後ろにある公園の入り口。
 大声を出した方が良いだろうか。
 いや、これで警察沙汰にでもなったら、すき焼きが。
 私のすき焼きが食べられない。

 幸い私は陸上部、脚には自信がある。
 それもこんなお爺さんからなら、簡単に逃げられるはずだ。
 逃走を選択し、ジリジリと下がる。
 一気に駆け出したいが、お爺さんに名前が解った理由も気になる。

「ヒョッヒョッ。全くその通りじゃな。うむうむ、警戒心が高い事も気に入った。お嬢ちゃん、いや、シュンちゃんと呼ぼうかの。シュンちゃんに少し頼みがあるんじゃ」

「命を救われて、その上頼みとは、お爺さんは随分厚かましいんですね」

「こりゃ手厳しいのう」

 ヒョッヒョッとお爺さんは笑いながら続ける。

「儂は少々、業突く張りでの。頼みとは言ったが、生憎と強制なのじゃ」

 お爺さんが腕を上げようと動いた。
 反射的に身を翻して、猛ダッシュしようとした。

 そう、しようとしたのだ。
 つまりは出来なかった。

 後ろには何も無かったからだ。
 意味が解らない。
 文字通り何も無い。
 公園の入り口も、住宅街も、木も人も音も空も。

 道も。

 踏み出した足が地面を踏み込めず、そのまま私は下に何も無い闇に落ちてしまった。

 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいすき焼きがやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいすき焼きすき焼きすき焼きすき焼きすき焼き

 思考が完全にテンパってる中、お爺さんの声が聞こえてくる。

「この状況ですき焼きの事を考えられるなんて、凄いのう。度胸があるところも良いところじゃ」

 このジジイふざけやがって!

「すまんのう。ジジイの頼み、聞いておくれ。なに、そんなに難しいことではない。今から行く所で、シュンちゃんの思う様に過ごして、進んでくれればそれで良いのじゃ、ちゃんとプレゼントはしておいたから、存分に役立てておくれ」

 待て待て、ツッコミ処満載だけど、ひとまず言わせてほしい。
 おうちに帰して! すき焼きが私を待ってるのよ!

「あ、そうじゃ、言い忘れておった。」

 何!? 帰してくれるの!?

「さっきは少々と言うたが、業突く張りの時点で少々とかでは無かったのう」

 ど、ど、ど、どうでもいいわあああああああああああ!!

 ヒョッヒョッヒョッヒョッとジジイの笑い声が聞こえる中、私の意識は遠退いていった。

 お願いだからぁ!

 おうちに帰してください!!
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