おうちに帰してください!~私は異世界からの帰宅を目指す~

ReCall

文字の大きさ
13 / 32
第1章 転移~小鬼族対戦編

番外編 スリングさんととある一日。フロッグラビットを添えて

しおりを挟む
「今日の仕入れは、まぁまぁだな」

 上機嫌で歩いてると、前から見知った顔が歩いてくる。
 まだまだ若いのに、この村で一番腕のたつ戦士だ。

「よぉ、シル。ん? 何だ? その子は……人族か? 黒髪なんて珍しいのを連れてるな。服装も見たことないもんだし、捕虜か?」

 初めて見る顔だ。
 人族だとしても、若すぎる。
 流石にこれがどっかの敵の兵士って事はねぇだろう。
 噂じゃ子供の兵士を暗殺者の様に育ててる国もあるとは聞くが。

 話を聞いてみると、森で小鬼族に襲われていたらしい。
 そりゃ災難だな。
 平時ならまだしも、今の大森林に子供がいるのは危ねぇ。
 シルの話だと、今のところ大規模戦闘が即始まるって事はないようだ。

 安心したところで、珍しくシルが何も手にしていない事に気付いた。
 普段なら狩りの獲物を持って帰ってくるはずだ。
 コイツは見廻り中でもしっかり狩りもこなすから、流石だ。

 どうやら、このお嬢ちゃんに血生臭い思いをさせない様に、置いてきたらしい。
 優しいこった。
 仕方ねぇ、ここはおじさんが骨を折ってやるか。
 シルに獲物の回収の手配は俺の方でやる事を伝えると、蛙兎フロッグラビットの旨い所を分けてくれるらしい。
 マジか! あれはすげぇ酒に合うんだよなぁ。
 情けは人の為ならずってな。

 シルと別れてウキウキしながら、酒屋で酒を買って行く。
 まだ仕事も残ってるし、飲めないが、これは今日一日頑張ってから、最高の肴と一緒に楽しむもんだ!
 さぁ! 今日も頑張るぜ!

 昼の客足もピークを過ぎて、暇になってきたところに、シルとお嬢ちゃんが通りがかる。
 声をかけてやると、お嬢ちゃんの滞在は許可が出たらしい。
 良かったな、お嬢ちゃん。

 機嫌が良かった事も手伝って、今日仕入れたばかりの果実をお嬢ちゃんにくれてやる。
 囓った後にお嬢ちゃんは幸せそうな顔でほっぺたを膨らませて食べている。
 黄色栗鼠イエロースクワラルみたいだな。

 夕方の客足が伸びてきたところで、シルとお嬢ちゃんは帰っていった。
 シルに聞いたら、例のブツは後で届けてくれるらしい。
 楽しみだ。

 夕方の客も終了し、店を閉めようとしていると、シルが例のブツを持ってきてくれた。
 ヒョー! やったぜ!

 急いで店仕舞いを終わらせて帰宅する。

 嫁さんの飯を食い、行水が終わり。
 さぁ! ここからが俺のお楽しみと癒しの時間だ!
 例のブツを調理しようとして、置いていた場所に無い事に気付く。

 あれ? どこいった?
 よく見ると酒もない。あれ?
 暫くの間探してみるも見つからない。
 おかしい。どこいった?

 しかし、一度楽しみにしていた以上このまま寝る事は出来ない為、代わりになりそうなものを探しに調理場に向かう。
 満足できるかはわからないが、このままでは寝られない。

 調理場に近付いて、芳ばしい香りに気付く。
 なんか、すげぇ旨そうな匂いがしてるんだが。
 調理場に入ってみて理解した。例のブツと酒の在処だ。

「一人で美味しいものを食べようなんてズルいのよ。何年一緒に居ると思ってるのよ。アンタが隠れてこういうことしようとしてる事くらい、すーぐわかるんだからねぇ」

 其処には、ケラケラと笑いながら、蛙兎の舌を香ばしく焼き、酒を片手にフニャフニャになってる嫁さんが居た。
 コイツめ……

 仕方ない。
 今日のところは俺の負けだな。

 その日、久しぶりに嫁と若い頃の話と、旨いモノを酒の肴にしながら、夜遅くまで呑み明かした。

 こうして、雑貨屋スリングの日常は彩られている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

処理中です...